日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第56回日本小腸学会学術集会
セッションID: O1-2
会議情報

一般演題1
フルオロピリミジン系抗癌剤による小腸粘膜傷害の検討
*太田 和寛菅原 徳瑛平田 有基原田 智小嶋 融一柿本 一城竹内 利寿後藤 昌弘樋口 和秀
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景】フルオロピリミジン系抗癌剤である5-FUは各種悪性腫瘍患者に対して持続的に経静脈投与が行われるが、時に重篤な下痢を引き起こして化学療法継続が困難となる。S-1やカペシタビンは経口フルオロピリミジン系抗癌剤であり、過去の臨床試験報告では、経口フルオロピリミジン系抗癌剤の方が、下痢の頻度が多いと報告されている。ラットでの基礎研究では、5-FUを腹腔内投与すると小腸内細菌叢は変化し、小腸粘膜傷害が生じるとの報告がある。今回、悪性腫瘍に対してフルオロピリミジン系抗癌剤を含んだ化学療法レジメンを実施している患者に対して小腸カプセル内視鏡検査を行い、そのリスク因子を横断的に検討した。

【方法】フルオロピリミジン系抗癌剤をレジメンに含む化学療法を実施されている入院患者に対して小腸カプセル内視鏡検査を行い、小腸粘膜傷害の有無と程度で患者背景の中のリスク因子が何であるかを検討した。

【結果】18名の患者に同意を得、カプセル内視鏡で全小腸を観察しえた16名で検討を行った。小腸粘膜傷害の有無で、性別、年齢、分子標的薬有無、化学療法開始後日数、化学療法休薬後日数には有意な差は無かったが、5-FU経静脈投与より経口内服薬(S-1あるいはカペシタビン) の方が小腸粘膜傷害を有している患者が多い傾向にあった(経静脈:33%, 経口:100%, p=0.0769, Fisherの正確検定)。また、下痢の頻度が多いほど、小腸粘膜傷害を有する可能性が有意に高かった (CTCAE Grade0:16.7%, Grade1:57.1%, Grade2:100%, p=0.016)。次に、投与方法別に小腸粘膜傷害の程度を比較したところ、経口投与の方が有意に小腸粘膜傷害の個数が多いことが明らかとなった(経静脈: 中央値0個, 経口: 中央値6.5個, p=0.0162)。[結論] フルオロピリミジン系抗癌剤をレジメンに含む化学療法中の患者では、下痢頻度と小腸粘膜傷害有無に相関傾向があり、小腸粘膜傷害の程度は経口投与の方が重篤となる。

著者関連情報
© 2018 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top