症例は70才代女性、主訴は難治性下痢。20XX-1年12月頃より1日6行の水様性下痢が出現した。20XX年4月に前医にて下部消化管内視鏡検査を行い、潰瘍性大腸炎が疑われ、メサラジンを開始されたが、その後も症状持続するため、5月に当科入院となった。当科で行った下部消化管内視鏡検査では、回腸末端に輪状潰瘍、地図状潰瘍、多発びらんおよび全大腸に多発びらんを伴う顆粒状粘膜を認め、回腸末端の潰瘍辺縁、正常と思われる介在粘膜および大腸からの生検にて、25個/HPF以上の好酸球浸潤を認めた。肉芽種や陰窩膿瘍などを認めなかった。小腸病変のさらなる検索のため、小腸カプセル内視鏡検査(SBCE)を行ったところ全小腸に多発びらんと回腸に輪状、帯状潰瘍を認めた。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸第2部に多発びらんを認めたが、食道・胃病変はなかった。腹部CTでは、直腸と上行結腸の浮腫性変化と少量の腹水を認めた。以上の所見より、小腸・大腸に主病変を有する好酸球性胃腸炎と診断した。プレドニゾロン30mg/日を開始したところ、症状は徐々に改善したため、漸減した。治療開始から約2ヵ月後のSBCEでは、回腸の一部に活動性潰瘍が残存していたが、治療前と比較して改善傾向であった。
今回、潰瘍性病変を主体とした好酸球性胃腸炎の一例を経験し、小腸病変の経過をSBCEで観察し得たので、若干の文献的考察を加えて報告する。