日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第58回日本小腸学会学術集会
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シンポジウム1 基礎から臨床へ:栄養、腸内細菌
  • 半田 修, 塩谷 昭子, 福嶋 真弥, 半田 有紀子, 大澤 元保, 村尾 高久, 松本 啓志, 梅垣 英次, 井上 亮, 内藤 裕二
    セッションID: S1-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景】これまでにクローン病(CD)と腸内細菌叢との関連が報告されているが、腸内細菌叢の変化に及ぼす因子の検討は少ない。今回我々は、CD患者の腸管粘液内細菌叢と患者背景因子(罹患範囲、手術歴、腸管狭窄、生物学的製剤使用歴、アレルギーなど)について横断的に検討した。

    【目的】CD患者の腸内細菌叢を変化させる因子について検討する。

    【患者・方法】対象は、2018年5月から2020年4月までに当院を受診しブラシによる腸管粘液採取および腸内細菌叢解析に同意したCD患者および便潜血陽性で大腸内視鏡検査を施行した健常対照者。内視鏡下にブラシで採取した腸管粘液はDNAを抽出後、16srRNA遺伝子のV3-4領域を増幅してIlumina社製Miseqによりシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。本検討は当院倫理委員会の承認を得て行った(IRB: 3087, 3087-1, 3087-2)

    【結果】対象は、細菌叢解析が可能であったCD患者20例(男性14名;平均年齢45歳)健常対照者13例(男性5名;平均年齢56歳)。CD患者の臨床背景は、小腸型6例、小腸大腸型9例、大腸型4例、手術歴有5例、腸管狭窄有9例、生物学的製剤による治療歴有10例であった。CDAIは平均106.6+76.1。CD群は対照群と比較してα多様性は有意に低値であった。CDAIはα多様性と負の相関を認め、CDAI150以上の群では未満の群と比較してRuminococcus属(p<0.001)が有意に少なかった。

    狭窄あり群では、狭窄なし群と比較してEubacterium属が多かった(0.003)。生物学的製剤治療群ではOscillospira属(0.004)、Dialister属(0.004)、Neisseria属(<0.001)が多く、Bacteroides属(0.005)、Phascolarctobacterium属(<0.001)、Eubacterium属(<0.001)が少なかった。

    【結語】生物学的製剤がCD患者の腸内細菌叢に影響を及ぼすことが示唆された。

  • 永山 学, 矢野 智則, 関谷 万理子, 坂本 博次, 三浦 光一, 砂田 圭二郎, 河口 貴昭, 森田 覚, 本田 賢也, 山本 博徳
    セッションID: S1-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景】クローン病の病態には腸内細菌が関連すると考えられているが、小腸細菌叢を解析したものは少ない。我々はダブルバルーン内視鏡(DBE)を用いて小腸細菌叢解析を行うことによりクローン病の病態に関わる細菌の同定を試みた。

    【方法】クローン病症例および対照群からDBEを用いて深部小腸よりサンプルを採取した。Illumina MiSeqを用いて菌叢解析を行い、統計学的解析を行った。さらにクローン病の小腸粘膜サンプルから網羅的に単離した細菌のうち、クローン病関連菌を無菌マウスに投与し、腸管免疫細胞および腸炎誘導能の解析を行った。

    【結果】クローン病の小腸粘膜ではE. coliやR. gnavusを含む18菌種が多かった。網羅的単離で得られたクローン病由来細菌ライブラリーのうち、上記解析に合致するクローン病関連9菌株を無菌マウスに投与したところIFNg産生性CD4陽性T細胞(TH1細胞)が強く誘導され、その中でもクローン病由来E. coli 35A1株がTH1細胞誘導の中心的な役割を果たしていた。E. coli 35A1のTH1細胞誘導ならびに腸炎誘導能は他の大腸菌株(LF82、MG1655)より有意に強くみられた。

    【結語】クローン病由来E. coliは菌株依存的にTH1細胞誘導能や腸炎誘導能を示したことから、菌株特異的なメカニズムを有することでクローン病の病態に関与していることが示唆された。

  • 尾﨑 隼人, 城代 康貴, 村島 健太郎, 寺田 剛, 吉田 大, 前田 晃平, 大森 崇史, 堀口 徳之, 小村 成臣, 鎌野 俊彰, 舩 ...
    セッションID: S1-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】再発性C.difficile感染症に対する糞便微生物叢移植(FMT)の有効性は確立されているが、クローン病については議論の余地がある。潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)に対するFMTの有効性と糞便微生物叢、短鎖脂肪酸(SCFA)、胆汁酸(BA)の変化を解析した。

    【方法】対象は2016年1月~2017年12月にFMTを施行した潰瘍性大腸炎20例およびクローン病患者4例。FMTの有効性は、UCに対してMayoスコア、クローン病に対してクローン病活動指数(CDAI)スコアで評価した。便中腸内細菌叢の解析は16SリボソームRNA遺伝子の配列を決定し、代謝産物は便中のSCFA、BA濃度を測定した。

    【結果】Clinical responseは、UC、CDでそれぞれ5/20(25%)、3/4(75%)、で、Clinical remissionは、UCが4/20(20%)、CDが1/4(25%)であった。LEfSeによる腸内細菌叢の解析では、UCの有効例でClostridium cluster XIVaがFMT前にはドナーと比較して少ないが、FMTによって増加することが示された。ドナーにおけるFusicatenibacter saccharivoransの豊富さは、FMT後8週目におけるClinical remissionと有意に相関していた(P = 0.0064)。CDではFMT前にBlautia、Dorea、Eubacteriumが少なかったが、FMT後にCollinsella、Dorea、Eubacteriumが増加し、SCFA代謝のfunctional profilingと便中酪酸濃度の上昇を認めた。胆汁酸濃度に関してはFMT前後、ドナーとの間に有意差は認めなかった。

    【結論】FMTは炎症性腸疾患に対して有効性を示した。FMTは腸内細菌叢の構成とSCFA産生を改善することによって有効性を示すことが示唆される。

  • 川崎 裕香, 柿本 一城, 木下 直彦, 田中 泰吉, 峠 英樹, 小柴 良司, 中 悠, 平田 有基, 太田 和寛, 寺澤 哲志, 宮嵜 ...
    セッションID: S1-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景と目的】化学療法は癌治療において必要不可欠な治療法であるが、しばしば下痢症などの有害事象が問題となる。近年、マウス実験モデルにおいて化学療法に伴う消化管障害とdysbiosisが関連していることが報告されたが、ヒトでの報告はない。そこで今回、化学療法に伴う消化管の有害事象と腸内細菌叢の関連を検討した。

    【方法】2018年12月~2020年3月までに当院で大腸癌に対する1st lineの化学療法としてfluoropyrimidinesを投与した症例を対象とした。治療開始前と1サイクル終了後に採便し、糞便中の菌叢を次世代シークエンサーを用いて解析した。化学療法に伴う消化管の有害事象と、腸内細菌叢の関連について検討した。

    【結果】症例は23例であり、fluoropyrimidines経口投与群が19例、経静脈投与群が4例であった。消化管の有害事象が発生したのは下痢4例、他の消化管症状3例(悪心、食欲不振など)であった。(治療前後の菌叢変化)経口投与群において、下痢群では治療後にα多様性(observed OTUs, chao1, ACE)が減少したが、非下痢群では変化を認めなかった。また下痢群では有意にBifidobacterium属が減少したが、非下痢群ではBifidobacterium属、Fusicatenibacter属、Dorea属が増加した。(治療前の下痢群/非下痢群の菌叢比較)下痢群では有意にRuminococcus属が少なく、Phascolarctobacterium属が多かった。

    【結語】マウス実験モデルにおいてBifidobacterium属がfluoropyrimidinesの消化管傷害を改善することが報告されているが、今回の結果も化学療法に伴う下痢症におけるBifidobacterium属の重要性が示唆された。

  • 塙 芳典, 東山 正明, 種本 理那, 伊東 傑, 西井 慎, 溝口 明範, 因幡 健一, 杉原 奈央, 和田 晃典, 堀内 和樹, 成松 ...
    セッションID: S1-5
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景・目的】炎症性腸疾患患者(IBD)の急増の一因として食事などの環境因子が想定されている。様々な加工食品に用いられている人工甘味料は安全性が充分に検討されているものの、近年腸内細菌への影響が報告された(Nature 2014)。そこで人工甘味料の中でも特に消費量の多いアセスルファムカリウム(acesulfame potassium; ACK)が腸管免疫に及ぼす影響を検討した。

    【方法】生後7週C57BL/6Jマウスに水とACK(150mg/kg w/v)を8週間自由飲水させた。その後、マウスを安楽死させ、小腸を採取、組織学的スコア、各種炎症性サイトカイン、接着分子の発現を評価した。FITCデキストランを用い、小腸の透過性亢進の有無を評価した。回盲便を用いてACKによる腸内細菌叢の変化を次世代シーケンサーで解析した。生体顕微鏡下でリンパ球のマイグレーションを観察した。

    【結果】ACK投与群でコントロール群と比べ、HE染色を用いた組織学的スコアは有意に上昇した。またTNFα、IFNγ、IL1β、MAdCAM-1のmRNAの発現は有意に上昇し、GLP-1R、GLP-2Rの発現は有意に低下していた。ACK群で免疫組織学的にMAdCAM-1の有意な発現の増加を認めた。ACK投与により小腸粘膜の透過性は亢進していた。腸内細菌はACKの自由飲水群でdysbiosisを認めた。生体顕微鏡観察ではリンパ球のマイグレーションがACK群で有意に増加し、抗β7抗体投与で有意に低下した。

    【結論】人工甘味料の長期投与がdysbiosisを誘導し、接着分子発現の亢進など腸管免疫に影響を及ぼしており、人工甘味料がIBD発症の環境因子の一つである可能性が示唆された。

シンポジウム2 小腸腫瘍の診断と治療
  • 小山 恵司, 大森 崇史, 寺田 剛, 吉田 大, 尾﨑 隼人, 堀口 徳之, 城代 康貴, 前田 晃平, 小村 成臣, 鎌野 俊彰, 舩坂 ...
    セッションID: S2-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】当院で診断した小腸腫瘍の臨床的特徴を検討。

    【方法】2013年5月-2020年4月に診断した52例を遡及的に検討した。

    【結果】悪性(M):良性(B)=41:11{年齢65 16-85歳[M65 35-85、B64 16-79、P=0.088]、男:女=30:22[M24:17、B6:5、P=1.00]、Hb11.0 5.3-17.6g/dL[M11.3 5.3-17.6、B9.4 5.6-16.0、P=0.226]、発症-診断76 3-3556日[M112 4-3556、B36 3-837、P=0.550]}であった。また、M;悪性リンパ腫(ML):神経内分泌腫瘍(NET):腺癌:GIST:転移性腫瘍(meta)=例数;17:3:6:4:11、年齢;65 41-85:65 55-76:63 35-81:64 63-69:68 52-84、男:女;9:8:2:1:5:1:0:4:8:3、発症-診断;169 4-1198:65 31-150:157 36-885:207 9-3556:75.0 9-323、B;脂肪腫:リンパ管腫: Peutz-Jeghers synd.:ガーゼオーマ:迷入膵:ポリープ=例数;2:2:3:1:1:2、年齢;78.5(78-79):66(63-69):30(16-72):78:36:54.5(45-64)、男:女;1:1:2:0:1:2:0:1:1:0:1:1、発症-診断;178 23-333:9.5 3-16:68 58-78:20:837:33 17-49であった。Mは化学療法:内視鏡治療:外科手術:F/U:BSC=23:4:16:3:6と化学療法、外科手術が多く、Bは内視鏡治療:外科手術:F/U=9:1:1と内視鏡治療が多かった。カプセル内視鏡は52件中16件で施行され、13件で所見を認め有所見率は81.3%であった。またダブルバルーン小腸内視鏡は52件中51件で所見を認め、有所見率は98.1%であった。内視鏡生検/組織診で診断困難例は5例(腺癌2例、ML2例、NET1例)あった。

    【結語】小腸腫瘍はM、Bにて年齢、性別、発症-診断日数に有意差はなかった。

  • 鳥山 和浩, 中村 正直, 山村 健史, 前田 啓子, 澤田 つな騎, 水谷 泰之, 石川 恵里, 梶川 豪, 村手 健太郎, 喜田 裕一, ...
    セッションID: S2-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景】Peutz-Jeghers症候群(PJS)は食道を除く全消化管において上皮の過形成と粘膜筋板のポリープ内への樹枝状増生を特徴とする過誤腫性ポリポーシスと皮膚、粘膜の色素斑を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。一方、家族歴や皮膚、粘膜の色素沈着を伴わない単発性のPeutz-Jeghers型ポリープ(PJP)を認めることがあるが、その臨床的特徴に関する報告は少ないのが現状である。

    【目的】単発性小腸PJPにおける臨床的特徴を明らかにする。

    【対象】2007年4月から2020年5月までに当院で内視鏡治療を施行し、病理組織学的にPJPと診断された単発性小腸PJP16症例。

    【結果】レトロスペクティブにカルテ、内視鏡画像をレビューした。性別は男性10例、女性6例、診断時年齢中央値(範囲)は61(18-82)歳。診断契機は貧血7例、黒色便5例、腹痛1例、イレウス症状1例、他疾患精査時の偶発的発見が2例。原発部位は空腸14例、回腸2例で、腫瘍径中央値(範囲)は25(4-35)mm。切除したPJP全病変で病変内に悪性腫瘍の併存は認めなかった。癌の既往歴を有したのは6例(前立腺癌2例、舌癌1例、大腸癌1例、胃癌1例、子宮体癌1例)。観察期間中央値(範囲)は4.6(0.1-53.7)ヶ月で再発並びに関連死は認めなかった。

    【考察】単発性小腸PJPにおいては診断時の年齢が高く、発見契機としては出血関連症状が多く、病変部位は空腸に多い特徴があった。

    【結語】当院で経験した単発性小腸PJPの臨床的特徴を検討した。今後更なる症例の蓄積が必要である。

  • 隅岡 昭彦, 岡 志郎, 田中 信治, 飯尾 澄夫, 壷井 章克, 瀧川 英彦, 保田 智之, 弓削 亮, 卜部 祐司, 北台 靖彦, 茶山 ...
    セッションID: S2-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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     小腸原発の濾胞性リンパ腫(FL)は十二指腸下行部の白色顆粒状隆起として診断されることが多く、病変が十二指腸に存在せずに深部小腸に限局したFLは比較的まれである。今回、我々は2015年1月から2019年12月までに当科で経験した深部小腸に限局したFL9例の臨床病理学的特徴について検討した。平均年齢65歳、男性6例(67%)であった。診断契機は、腹痛4例(44%)、貧血3例(33%)、リンパ節腫脹2例(22%)であった。内視鏡所見は、白色顆粒状隆起6例(67%)、潰瘍3例(33%)であった。病理組織学的所見は、WHO分類grade1 5例(56%)、grade2 4例(44%)であった。PET-CTでは小腸病変に一致した異常集積を5例(56%)、骨髄浸潤を1例に認めた。臨床病期はLugano国際会議分類StageⅠ5例(56%)、StageⅣ4例(44%)であった。治療はwatch and wait 6例(67%)、手術及び術後化学療法2例(22%)、化学療法1例(11%)であった。watch and wait例はNC 5例(56%)、PD 1例(11%)であった(PD例では化学療法後CR)。治療施行例は全てCRで、現在のところ再発を認めていない。観察期間中央値は560日(476-1736日)で、観察期間中に原病死例は認めていない。発表では文献的考察も加えて報告する。

  • 松岡 弘樹, 石橋 英樹, 阿部 光市, 今給 黎宗, 松岡 賢, 向坂 秀人, 久能 宣昭, 船越 禎広, 原田 直彦, 二村 聡, 竹下 ...
    セッションID: S2-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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     Monomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma(MEITL)は、腸管穿孔などの急性腹症で発症する予後不良の比較的稀なT細胞リンパ腫である。本邦や東アジアに多く、coeliac病の先行が少ない、CD8陽性、CD56陽・陰性、CD30陰性の小~中型リンパ球からなるびまん性リンパ腫である。病理組織学的には、腫瘍性IELs(intraepithelial lymphocytes)とenteropathy-like lesionが特徴的所見である。今回、我々は、全消化管を検索し得た4例の臨床病理学的特徴について詳細に検討した。症例は男女各々2例(平均59歳)、症状は、慢性下痢(2例)、体重減少(2例)で、血液検査では、全例に低アルブミン血症、可溶性インターロイキン2受容体上昇を認めた。内視鏡検査では、全例に、十二指腸・小腸の絨毛の萎縮を認め、十二指腸から大腸にかけて浮腫状粘膜を認めた。さらに、症例1は胃陥凹性病変、症例2は空腸に潰瘍形成を伴う腫瘤性病変、症例3は直腸縦走潰瘍、症例4は十二指腸第2部にピンホール様の狭窄と粘膜下腫瘤様隆起を伴っていた。病理組織学的には、腫瘤や潰瘍形成部に腫瘍性IELsを認め、十二指腸・小腸の浮腫状粘膜にenteropathy-like lesion、大腸の浮腫状粘膜にlymphocytic colitisに類似した組織像を認めた。以上より、MEITLは全消化管に病巣を形成することが示唆された。MEITL疑診例では、全消化管を検索する必要があり、特に、十二指腸・小腸の絨毛萎縮を伴う浮腫状粘膜、大腸の浮腫状粘膜に着目し、当該部からの生検組織におけるenteropathy-like lesionやlymphocytic colitis類似像の有無を確認することが、肝要である。

  • 壷井 章克, 卜部 祐司, 岡 志郎, 隅岡 昭彦, 飯尾 澄夫, 桑井 寿雄, 田中 信治, 茶山 一彰
    セッションID: S2-5
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】原発性小腸癌の臨床病理学的および分子生物学的特徴と予後について検討する。

    【方法】2005年5月~2018年7月に広島大学病院と呉医療センターで外科切除された原発性小腸癌24例29病変を対象に、臨床病理学的所見、ミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)、90癌関連遺伝子のゲノム変異を解析し、予後(全生存期間: OS、疾患特異的生存期間: DSS、無再発生存期間: RFS)との関連を検討した。

    【結果とまとめ】男性16例、平均年齢61.7歳であった。有症状率は92%(22/24)で、腸閉塞症状の割合が38%(9/24)と最も多かった。空腸癌が83%(24/29)を占め、大腸癌取り扱い規約に準じた病理学的病期の割合はStageI・II 34%(10/29)、Stage III・IV 66%(19/29)であった。dMMRは45%(13/29)に認めた。癌ゲノム変異はTP53(48% [13/27])、KRAS(44%[12/27])に認めた。臨床病理学的所見と予後に関連を認めなかったが、tumor mutation burden(TMB)≥10 mut/Mb(n=17)例は<10 mut/ Mb(n=6)例よりOS・DSSが有意に良好で、R0切除16例において、SMAD4変異(+)例は変異(-)例に比べてRFSが有意に不良であった。

  • 星本 相理, 辰口 篤志, 西本 崇良, 橋野 史彦, 大森 順, 秋元 直彦, 佐藤 航, 田中 周, 藤森 俊二, 岩切 勝彦
    セッションID: S2-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景】小腸は、十二指腸、空腸、回腸から成る。これらに発生する癌は、小腸癌として取り扱われるが、部位別の免疫学的表現型の相違については十分に解明されていない。

    【対象と方法】小腸腺癌47例から得られた組織検体を用いて、CK7、CK20、MUC2、MUC5AC、MUC6、CD10の免疫染色を施行した。癌細胞の10%以上が染色された場合陽性と判定し、患者の臨床病理学的データと比較検討した。患者の年齢中央値は69歳(32-84歳)。平均観察期間は41ヶ月(3-90ヶ月)。原発の局在は十二指腸17例、空腸26例、回腸4例。分化型38例、低分化型5例、粘液癌4例。TNM国際分類で、stage l 13例、stage ll 14例、stage lll 7例、stage lV 13例。予後との相関はカプラン・マイヤー法を用いた。

    【結果】どの部位においても大腸癌パターンであるCK7(-)/CK20(+)が半数以上を占めたが、十二指腸、空腸ではそれ以外の組み合わせも認められたのに対し、回腸では全てCK7(-)/CK20(+)であった。ムチン系蛋白に関しては、MUC2は、粘液癌では75%に陽性であったが、粘液癌を除いた癌では、その欠失は予後不良と相関していた。CD10の欠失は深い深達度と相関していた。各陽性率は、十二指腸でMUC2は47%、MUC5ACは29%、MUC6は59%、CD10は59%であった。空腸ではMUC2は58%、MUC5ACは38%、MUC6は23%、CD10は12%であった。回腸ではMUC2は75%、MUC5AC、MUC6、CD10はいずれも0%であった。

    【結論】CK7/CK20の染色性、ムチン系蛋白の染色性より、十二指腸と空腸には大きな違いはなく、回腸はそれらとは異なる特徴を有することが示された。

  • 西本 崇良, 辰口 篤志, 星本 相理, 大森 順, 橋野 史彦, 秋元 直彦, 佐藤 航, 田中 周, 藤森 俊二, 岩切 勝彦
    セッションID: S2-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景】原発性小腸腺癌におけるE-カドヘリンとβ-カテニンの役割を明らかではない。

    【対象と方法】小腸腺癌47例から得られた組織検体を用いて、E-カドヘリンとβ-カテニンの免疫染色を施行した。E-カドヘリンの発現低下は癌細胞の50%以上が染色されない場合喪失と判定し、β-カテニンは、癌細胞の細胞質あるいは核に染色された場合発現異常と判定し、患者の臨床病理学的データと比較検討した。患者の年齢中央値は69歳(32-84歳)。平均観察期間は41ヶ月(3-90ヶ月)。原発の局在は十二指腸17例、空腸26例、回腸4例。分化型38例、低分化型5例、粘液癌4例。TNM国際分類で、stage l 13例、stage ll 14例、stage lll 7例、stage lV 13例。Stage IVの患者に対しては全例化学療法が施行されている。予後との相関はカプラン・マイヤー法とコックス回帰分析による多変量解析を用いた。

    【結果】E-カドヘリンの発現低下は59.6%に認められ、深達度、リンパ節転移、遠隔転移、腹膜播種、TNMステージと相関していた。β-カテニンの発現異常は、48.9%に認められ、遠隔転移、腹膜播種と相関していた。両者の発現異常を持つ患者の予後は、それ以外の患者と比べて有意に不良であることが単変量解析で示された。多変量解析においてもリンパ節転移やCEA上昇とは独立した予後規定因子であることが示された。

    【結論】E-カドヘリンの発現低下とβ-カテニンの発現異常は、原発性小腸腺癌の患者において予後不良のマーカーであることが示された。

シンポジウム3 小腸検査法の進歩:小腸内視鏡、カプセル内視鏡、SIBO、Leaky gut
  • 大宮 直木, 岡 志郎, 中村 正直, 中山 佳子, 岩間 達, 田中 信治, 田尻 久雄
    セッションID: S3-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景・目的】カプセル内視鏡は乳児・年少児や稀に成人でも内服困難で、また長時間食道内や胃内に停滞することもある。その際、上部消化管内視鏡下でネットやスネア、挿入補助器具のAdvanCE®(US Endoscopy社製、国内販売:富士フイルムメディカル)を用いて十二指腸に誘導する必要がある。AdvanCEは2013年に薬事承認されたが、現在保険未承認である。本邦小児例におけるAdvanCEの有用性については、すでにIwamaらが2013~2017年に18歳未満でAdvanCEによる挿入補助を行った154例を対象に、90%で十二指腸への誘導が可能であり、89%でカプセル内視鏡による全小腸観察が可能で重篤な有害事象の発生はなかったと報告している(Eur J Gastroenterol Hepatol 2019; 31:1502-1507)。ただ、これまで成人例でのカプセル内視鏡の内服困難例、食道・胃内での停滞例での挿入補助具の使用報告は少ない。そこで、本研究ではAdvanCEの手技料加算承認を目標とし、本邦小児・成人例におけるカプセル内視鏡挿入補助器具の使用実態について調査し、その有効性および安全性を遡及的に多施設共同で検討する(課題名:カプセル内視鏡内服不可能および内視鏡的挿入補助具に関する全国多施設共同調査、Multicenter survey of impossible swallowing of capsule endoscopy and use of capsule delivery system including AdvanCE system in Japan:AdvanCE-J study)。

    【方法】小腸・大腸カプセル内視鏡検査、パテンシーカプセルによる消化管通過性検査を行った症例を対象に以下の項目を調査する。今後倫理委員会承認後に藤田医科大学のREDCap®を用いたオンライン登録で入力を行う予定である。1.検査数(導入開始~直近)、2.そのうちカプセル内服不可または不可と予測された件数、3.内服不可(予測含む)および挿入補助具使用した各症例の内訳:性別、年齢、身長、体重、検査契機、病名、既往歴、カプセル内視鏡前のパテンシーカプセルによる消化管通過性検査の有無、カプセル嚥下可能・不可・不可(予測)、嚥下不可(予測含む)であった理由、対応(カプセル検査中止、使用機材種類)、補助具使用の理由、鎮静の有無、補助具挿入の施行場所、デリバリー時間、カプセル留置部位、有害事象、全小腸(大腸)観察の有無、カプセル内視鏡所見、各施設の補助具使用ルール。

  • 細江 直樹, 林由 紀恵, リンピアス神谷 研次, 牟田口 真, 高林 馨, 緒方 晴彦, 金井 隆典
    セッションID: S3-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】小腸カプセル内視鏡(small bowel capsule endoscopy: SBCE)では、深層学習を用いた異常所見検出機能が開発されつつある。小腸は血管性病変から腫瘍性病変まで多様な病変があり、多様な異常所見を高い感度で検出すると共に、偽陽性率を低減することが求められる。今回、検出対象をSBCEで確認される多彩かつ主要な異常所見に拡張した異常所見検出機能(深層学習を用いたプロトタイプ)をオリンパス(株)と共同で開発した。その経過につき報告する。

    【方法】有所見症例20例の画像データを深層学習させ、異常所見検出機能の構築を行った。学習データは、多種多様な異常所見に対応するために、SBCEで確認される主要な所見全般(出血、血管拡張、潰瘍、腫瘍性病変)がバランスよく含まれるようにした。さらに、偽陽性率を低減するために、異常所見画像から「治療介入が必要と判断される所見」(以降、検出対象所見)を抽出し学習させた。性能評価では、学習データと同様に、出血、血管拡張、潰瘍、腫瘍性病変を含む25症例169個の検出対象所見を用いて、感度と症例単位での検出枚数の算出を行った。

    【結果】本研究で開発した異常所見検出機能の性能は、感度98.4%、偽陽性率2.8%、症例単位の平均検出枚数9023枚となった。

    【結論】深層学習を用いた異常所見検出機能の開発を行い、良好な検出性能が得られた。

  • 前田 晃平, 鎌野 俊彰, 小山 恵司, 大森 崇史, 城代 康貴, 小村 成臣, 舩坂 好平, 長坂 光夫, 中川 義仁, 柴田 知行, ...
    セッションID: S3-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】カプセル内視鏡は1回の検査で数10万枚の画像が収集され、その読影時間は小腸、大腸共に長時間を要するため診断医や読影支援技師の負担は大きい。すでに欧米では人工知能によるカプセル内視鏡診断支援ソフトウェアTop100を搭載したPillCamTMReader v9.0が発売されている。Top100は小腸では出血性病変、大腸では出血性病変とポリープを検出し、100枚一覧表示することで、読影負担の軽減や病変見落としの防止が期待されている。今回2020年7月現在本邦では薬事未承認であるPillCamTMReader v9.0を個人輸入してTop100の有用性を検討した。

    【方法】2019年8月~2020年3月までにPillCamTMReader v9.0を用いてカプセル内視鏡を施行した58例(小腸カプセル46例、大腸カプセル12例)の小腸出血性病変、大腸ポリープに対するTop100と通常読影との読影時間の比較、所見の検出率を検討した。

    【結果】読影時間は小腸がTOP100:2.94分(0.57-16.6)、通常:16.17分(3.97-38.62)(P<0.001)、大腸がTOP100:3.28分(2.53-6.53)、通常:13.17分(7.17-22.85)(P<0.001)。小腸出血性病変はTOP100:43病変、通常:50病変(P=0.772)、総検出数:60病変。大腸ポリープはTOP100:30病変、通常:48病変(P=0.128)、総検出数:61病変。

    【考察】小腸、大腸共にTop100の読影時間が有意に短かった。特に小腸ではTOP100の出血性病変の検出率は通常読影と比べて遜色なく、緊急処置を要する症例における早期の読影という点で特に有用性が高い可能性が示唆された。

  • 杉山 雄哉, 上野 伸展, 齊藤 成亮, 上原 恭子, 小林 裕, 村上 雄紀, 佐々木 貴弘, 久野木 健仁, 高橋 慶太郎, 安藤 勝祥 ...
    セッションID: S3-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【背景・目的】カプセル内視鏡(CE)の登場で、クローン病(CD)患者における微小な小腸病変の存在が明らかになってきたが、その病的意義については不明である。便中カルプロテクチン(FC)は、潰瘍性大腸炎のモニタリングに簡便な検査として広く用いられているが、CDでの有用性については不明である。そこで本研究では、無症候CDにおいてFC測定がCE所見の予測マーカーとなり得るかを明らかにし、FCの定期的な測定が再燃予測のマーカーとして有用であるのかについて前向きに検討した。

    【方法】旭川医大通院中のCD症例で、CDAI<150の寛解期もしくは無症状ストマ造設例を対象とした。同意取得後FC測定とCEを施行、その後8週ごとにFCを測定、48週後に再度CEを施行した。CEはLewisスコア(LS)で評価、FCと各因子との相関性、その後のFC変化と再燃の有無について検討した。

    【結果】現在までに48週の追跡が終了した12例について解析した。登録時のCEのLSは平均295.9、FC平均値は262.9mg/kgであった。FCとLSは弱い相関性を認めた(R=0.32)。48週で再燃は1例も認めなかった。この間、治療強化例はなく、平均FCは233.8mg/kgと変化は無かった。

    【結語】無症候のCDでも小腸に軽度の粘膜障害を認めており、FCからCE所見を予測し得る可能性が示唆された。軽度の粘膜障害を認めても48週後の再燃は認められず治療介入の必要性は不明である。今後症例を蓄積し更なる検討を進めたい。

  • 馬場 重樹, 髙橋 憲一郎, 佐々木 雅也, 安藤 朗
    セッションID: S3-5
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】小腸内細菌異常増殖症(SIBO)の診断には消化管内腔液の定量培養検査や呼気検査が用いられるが、十分に普及していないのが現状である。今回、腹部膨満などの消化器症状を訴える患者を対象としたSIBO関連検査の結果を報告する。

    【方法】2018年12月よりSIBOが疑われた症例22例に対し腸液の定量培養検査とグルコース負荷による水素呼気試験にて定量解析を実施した。腸液は十二指腸及び空腸から採取した。グルコース負荷後90分以内に呼気中の水素濃度が20 ppm以上上昇すれば水素呼気試験陽性と判定した。

    【結果】水素呼気試験陽性例は22例中11名に認めた。陽性例は全例グルコース負荷20分後には20 ppm以上の上昇を認め、陽性例のベースラインと比較した上昇水素濃度(⊿値)は62~383 ppmであった。腸液培養検査による定量培養にて105個以上となった症例は十二指腸液で36.3%、空腸液で40%、103個以上となった症例は十二指腸液で72.7%、空腸液で65.0%であった。定量培養にて103個以上の菌数が検出された症例において最も占有率の高い菌種は十二指腸液、空腸ともにStreptococcusであった。水素呼気試験と培養法の結果の一致率をカッパ係数にて検討したが、105個をカットオフ値とした空腸液の培養結果が最もカッパ係数が高かったが0.40にとどまった。

    【結語】水素呼気試験では陽性例と陰性例が比較的明瞭に判別可能であった。しかしながら、水素呼気試験で陽性となった症例も培養法で陰性になる場合があり、菌量が多い部位からのサンプリングが行えていない可能性が示唆された。

  • 大久保 秀則, 中島 淳
    セッションID: S3-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】腹部膨満症状は日常臨床で頻繁に遭遇する症候の1つである。その中には過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)等の機能性消化管疾患、慢性偽性腸閉塞症(CIPO)等の難病や小腸内細菌異常増殖症(SIBO)など数多くの病態が包含される。しかしこのいずれにも属さない原因不明の小腸ガスを特徴とした腹部膨満症が存在し、診療に苦慮することがしばしば見受けられる。我々はこれらの症例に対してシネMRIを行い、腸管蠕動の観点から病態の特徴を後ろ向きに検討した。

    【方法】2011年4月から~2020年6月までに腹部膨満症状で当院受診した患者のうち、Rome基準によりIBSとFDが否定的、および厚労省診断基準でCIPOが否定的、さらに水素呼気試験でSIBOが否定的な原因不明の小腸ガスによる腹部膨満患者9名を対象とし、シネMRIの特徴を健常者およびCIPO患者と比較した。

    【結果】平均小腸径は24.7mmで、健常者11.1mmと比べ拡張傾向であったがCIPO患者43.4mmよりは明らかに拡張が軽度であった。一方収縮率は54.8%で、健常者73.0%に比べて低かったが、CIPO患者17.1%と比べて収縮は保たれていた。なお、健常者で見られるような完全収縮(腸管径=0mm)は見られず、どの症例も不完全な収縮ばかりであった。

    【考察】原因不明の小腸ガス貯留患者では、小腸収縮運動が不十分でありガス輸送能力が低いことが病態の1つと考えられた。ガスがどこから来るのかを解明することが今後の課題と考えられる。

シンポジウム4 小腸難治性疾患の診断と治療の新知見
  • 高嶋 祐介, 渡辺 憲治, 河合 幹夫, 横山 恵子, 賀来 宏司, 小島 健太郎, 佐藤 寿行, 上小鶴 孝二, 横山 陽子, 平山 大輔 ...
    セッションID: S4-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】MEFV遺伝子関連腸炎例の臨床背景、小腸病変を主体とした消化管病変を検討し、鑑別診断に寄与する。

    【方法】2020年7月までに札幌医科大学でMEFV遺伝子解析を行った当科28例のうち、遺伝子変異を認めた15例を対象として検討した。

    【結果】女性9例、発症時年齢40.4(19-71)歳、診断時年齢は49.1(30-76)歳で、確定診断まで9年要していた。症状等は、腹痛15例、下痢12例、血便10例、38℃以上周期的発熱10例、関節炎8例、頭痛6例、結節性紅斑3例、痔瘻2例、壊疽性膿皮症1例、皮膚限局性アミロイドーシス1例だった。初期診断は潰瘍性大腸炎疑い8例、分類不能腸炎4例、クローン病疑い3例で、変異はexon 2に9例、exon 3に4例、exon 1とexon 5に各1例認め、変異全体の72.7%がheterozygousだった。微小病変も含めると消化管病変は、食道4例、胃8例、十二指腸6例、空腸回腸10例、大腸11例と広範に分布しており、小腸を含む全消化管検索の必要性が示唆された。小腸病変は回腸主体の広範なびらんや潰瘍が多かったが、ノッチサインやmucosal break、縦走配列のびらん、らせん状病変、多発狭窄など多彩な所見を呈しており、典型例に合致しない所見や問診から本症が疑われていた。コルヒチン投与12例中11例が有効ないし寛解で、抗TNFα抗体製剤投与6例中5例で有効だったが、内視鏡的寛解に至っても関節炎等が残存する例があった。

    【結論】MEFV遺伝子関連腸炎の消化管病変は小腸を含み広範に分布し、全消化管検査の施行が望ましい。炎症性腸疾患に類似するが典型例と異なる内容があり、精緻な画像診断と問診で本症の診断に導ける可能性が高くなると思われたが、抗TNFα抗体製剤が有効で本症が想起できない可能性がある。治療目標は消化管病変の寛解のみならず、腸管外合併症を含めた全身病変の寛解に設定すべきと思われた。

  • 松浦 稔, 齋藤 大祐, 和田 晴香, 尾崎 良, 徳永 創太郎, 箕輪 慎太郎, 三井 達也, 櫻庭 彰人, 林田 真理, 三好 潤, 仲 ...
    セッションID: S4-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】近年、MEFV(Mediterranean fever)遺伝子変異を伴うIBD類似の大腸病変について相次いで報告されているが、小腸病変に関する報告は極めて少ない。今回我々は、当院で経験したMEFV遺伝子変異陽性例における小腸および大腸内視鏡所見について後方視的に検討した。

    【方法】対象は2016年4月から2020年6月までに当院通院中にMEFV遺伝子変異陽性と診断された13例(IBD-U10例、UC3例)。MEFV遺伝子の変異部位、大腸内視鏡ならびに小腸内視鏡(DBEあるいはCE)、臨床経過について検討した。

    【結果】MEFV遺伝子変異はExon2(E148Q)が最も多かった(9例/13例、69.2%)。13例中6例は右側大腸優位の活動性所見を認め、その内4例は管腔狭小を呈する著明な粘膜浮腫を認めた。また活動性所見は発赤・びらん、顆粒状粘膜、潰瘍などUC類似の内視鏡所見が多かった。CEおよびDBEにて全小腸を観察し得た3例中2例で地図状潰瘍、1例で狭窄を認め、いずれも著明な低アルブミン血症を伴っていた。MEFV遺伝子変異を有したUC症例はいずれも内科的治療に難渋した。

    【結語】MEFV遺伝子関連腸炎の大腸内視鏡所見の特徴として、粘膜浮腫を主体とした右側大腸優位のUC類似の炎症所見、また著明な低アルブミン血症を伴う場合には小腸病変の存在を念頭に置く必要があると考えられた。

  • 井上 健, 内藤 裕二, 森田 竜一, 杉野 敏志, 土肥 統, 吉田 直久, 山口 寛二, 鎌田 和浩, 全 完, 内山 和彦, 石川 剛 ...
    セッションID: S4-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】循環器疾患の併存例においては、過度のずり応力による後天性フォンウィルブランド症候群(AVWS)を生じることが明らかになった(Loscalzoら. N Engl J Med. 2012)。しかしその病態、特に小腸病変に関する報告は未だ不明な点が多い。本研究ではAVWSの症例を対象とし、小腸病変の所見を明らかにすることを目的とする。

    【方法】単施設にて前向き検討を行った。本学医学倫理審査委員会にて承認された(ERB-C-1549)。AVWSの症例として、2020年1月~20年5月の間に当院にて重症AS患者で貧血(Hb<11g/dl)を有する12症例を対象とした。小腸カプセル内視鏡を含む全消化管内視鏡検査を施行し、Hb値、消化管粘膜angioectasiaの頻度などを検討項目とした。

    【結果】対象は12例、男性/女性;3/9例、平均年齢86.5歳、Hb中央値(範囲)は9.8(7.2-10.7)g/dlであった。内服はLow-dose aspirin 67%(8/12)、Thienopyridine 33%(4/12)、DOAC 25%(3/12)であった。全例(12/12)でangioectasiaを認めた。内訳は上部17%(2/12)、大腸42%(5/12)、小腸83%(10/12)であった。

    【結論】貧血を有するAVWSにおいては、80%以上の症例で小腸粘膜にangioectasiaを認めた。

  • 渕野 真代, 三原 弘, 作村 美穂, 元尾 伊織, 南條 宗八, 安藤 孝将, 梶浦 新也, 藤浪 斗, 安田 一朗
    セッションID: S4-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】好酸球性胃腸炎症例における、病理組織学的所見と臨床的病態・治療反応性との関連性について検討した。

    【方法】2006年11月から2020年6月に富山大学附属病院で好酸球性胃腸炎と診断された患者33例を対象とし、臨床的・病理組織学的所見を後方視的に検討した。検討項目は患者背景(性別、年齢)、臨床症状(腹痛、嘔気、下痢、食欲不振、腹部不快感)、血液検査所見(好酸球数、CRP、IgE)、病理所見(好酸球浸潤部位・程度)及び、治療経過(治療内容、臨床的寛解の有無)であり、電子カルテから情報を抽出した。臨床的寛解の定義は症状消失とした。

    【結果】男性17例、女性16例、年齢中央値35歳(10-69歳)であり、治療内容は抗アレルギー薬28例、ステロイド15例、臨床的寛解に至った症例は25例(75.7%)、自然寛解は4例(12.1%)であった。各臨床症状と好酸球浸潤部位・程度には有意な相関はみられなかった。小腸・大腸に好酸球浸潤を認める場合は有意にCRPが高かった(P=0.032、0.019)。胃好酸球浸潤数20未満/HPF群は40以上/HPF群に比べ臨床的寛解率が高く(P=0.025)、また男性で臨床的寛解率が高かった(P=0.006)。

    【結論】今回の検討より男性・胃好酸球浸潤の程度は臨床的寛解予測因子になり得ること、CRP高値は小腸大腸病変を示唆する可能性があることが示唆された。

  • 竹中 健人, 大塚 和朗, 鈴木 康平, 日比谷 秀爾, 河本 亜美, 清水 寛路, 本林 麻衣子, 福田 将義, 藤井 俊光, 齊藤 詠子 ...
    セッションID: S4-5
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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     クローン病(CD)において小腸の評価は必須であり、当施設では2012年よりCDに対してシングルバルーン内視鏡(SBE)による病変評価を開始し、2020年3月まで1500例施行している。

     SBEは一人法で行われ、経口挿入は5%、経肛門挿入は95%であった。挿入距離の中央値は回盲弁より150cmであった。また78%は外来でSBEが行われた。潰瘍性病変は回腸末端では38%・遠位回腸では50%・空腸では8%にそれぞれ検出された。小腸の狭窄は48%に、内視鏡の通過しない高度狭窄は22%に、内瘻は7%に認めた。CD病変とCDAIとの相関係数は0.11であり、CRPとの相関係数は0.24であった。TNF製剤治療を受けた症例では、小腸病変は大腸病変に比し内視鏡治癒率が低く(36% vs 79%)、小腸粘膜治癒非達成はその後の再燃・入院・手術に対するリスクであった。MREが同時に行われた782症例を対象とすると、MREで狭窄が指摘された196例のうち、86%でSBEでも検出できた一方、14%では病変まで挿入できなかった。MREでは狭窄が指摘されなかった586例のうち、SBEでは37%で狭窄を、12%で高度狭窄を認めた。

     深部小腸にもCD病変は存在し、小腸病変はTNF製剤で治癒しにくいことがわかり、SBEにより深部小腸を評価することは重要であった。現在、日本小腸学会の支援によるクローン病小腸病変に対する生物学的製剤の効果に関する前向き多施設共同研究(SEBIO study)についても合わせて紹介する。

  • 高橋 憲一郎, 馬場 重樹, 吉田 晋也, 今井 隆行, 大野 将司, 辻川 知之, 安藤 朗
    セッションID: S4-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】クローン病(CD)に適応を持つ生物学的製剤は永らく抗TNF-α抗体製剤のみであったが、IL-12/23をターゲットとしたウステキヌマブが新たに適応承認された。ウステキヌマブによる内視鏡的な治療効果に関する報告は十分ではなく、特に小腸病変に対する検討は無い。今回、インフリキシマブ(IFX)、アダリムマブ(ADA)、ウステキヌマブ(UST)の3つの生物学的製剤による内視鏡的な有効性について検討した。

    【方法】2006年1月より当院でバルーン小腸内視鏡検査(BAE)を施行したクローン病患者のうち、新規に生物学的製剤を当院で導入され、BAEによる導入前後の評価が可能であった症例を対象とした。内視鏡による粘膜の評価にはRutgeerts scoreを観察全範囲に適応したmodified Rutgeerts score(MRS)を用い、MRSの低下を改善、MRS 0又は1を粘膜治癒(mucosal healing; MH)と定義した。

    【結果】対象となった症例は50例で、使用された生物学的製剤はIFX 11例、ADA 31例、UST 8例であった。各群の背景を比較するとUST群で投与前CRP値が低かった(p=0.0018)が、病型、年齢、性別、罹病期間、免疫調整剤の併用率、投与前Alb値、投与前のMRS値に有意な差は認めなかった。投与開始から18ヶ月までの短期成績を比較したところ、小腸粘膜の改善率はIFX 45.5%(5/11例)、ADA 74.2%(23/31例)、UST 62.5%(5/8例)であった。MH達成率はIFX 36.4%(4/11例)、ADA 41.9%(13/31例)、UST 37.5%(3/8例)であり、MH達成率における製剤間の有意な違いは認められなかった。

    【結論】限られた症例数ではあるが今回の検討ではIFXとADAとUSTの間に18ヶ月までの短期間のMH達成率に有意な差は認められなかった。さらなる症例の蓄積により適切な症例選択を明らかにする必要がある。

  • 梁井 俊一, 赤坂 理三郎, 鳥谷 洋右, 中村 昌太郎, 石田 和之, 菅井 有, 松本 主之
    セッションID: S4-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【目的】免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI)による治療に際しては、免疫関連有害事象(immune-related adverse event: irAE)に注意する必要がある。irAEとしての大腸病変(ICI関連大腸炎)の特徴に関する報告は散見されるが、小腸病変については不明な点が多い。そこで、ICI投与例における小腸障害の特徴を検討した。

    【方法】2015年12月から2020年5月までにICI(ニボルマブ、イピリムマブ、デュルバルマブ)の投与をうけた患者のうち、ICI大腸炎と診断した14例(男性9例、女性5例:平均年齢63.1歳)を対象とし、小腸病変の有無、臨床像、および画像所見を遡及的に検討した。

    【成績】基礎疾患の内訳は悪性黒色腫7例、腎細胞癌5例、非小細胞肺癌2例であった.14例中1例は潰瘍性大腸炎の治療中であった。PD-1ないしPD-L1単剤投与が6例(単剤群)、PD-1/CTLA-4の併用療法が6例(併用群)、スイッチ治療が2例(スイッチ群)で施行された。腹部CTで小腸壁肥厚が認められた症例は単剤群6例中1例、併用群ないしスイッチ群8例中5例であった。大腸内視鏡検査で終末回腸を観察できた症例は14例中11例で、そのうち6例で粘膜病変を認め、いずれも併用群ないしスイッチ群であった。終末回腸の内視鏡所見は、顆粒状粘膜2例、びらん2例、発赤1例、潰瘍1例と多彩であった。病理学的には6例中3例でアポトーシスが認められた。併用群の1例でカプセル小腸内視鏡が施行され、全小腸にびらんを認めた。

    【結論】PD-1/PD-L1単剤療法よりPD-1/CTLA-4の併用ないしスイッチ治療で小腸傷害が生じる可能性がある。

一般演題1
  • 大野 将司, 今井 隆行, 高橋 憲一郎, 稲富 理, 馬場 重樹, 安藤 朗
    セッションID: O1-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
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    【症例】60歳代男性

    【主訴】下痢、下肢脱力

    【家族歴】父が成人T細胞白血病(ATL)でにより死亡

    【現病歴】X年9月頃から慢性下痢、下肢脱力をきたし、同年11月に精査加療目的に入院となった。

    【臨床経過】血液検査で低K血症、低Alb血症を認めた。便検鏡検査で原虫が確認され、PCR法でイソスポーラ症と確定診断した。腹部造影CT検査では小腸全体に液貯留を認めた。上部消化管内視鏡検査で十二指腸粘膜の著明な萎縮を認め、生検で委縮した吸収上皮内に原虫を確認した。カプセル内視鏡検査では小腸全体に委縮し、びまん性に白色絨毛が目立つ特異な像を呈し、吸収障害が示唆された。スルファメトキサゾール、トリメトプリム(TMP-SMX)製剤の経口投与では軽快せず、TMP-SMXの経静脈的投与を行ったところ軽快した。

    【考察】イソスポーラ症はCystoisospora belliによる腸管感染症である。AIDSやATLなどの免疫不全者では慢性化することがあるが、本症例では免疫異常は認めなかった。父がATLで死亡しており、幼少期にキャリアーとなった可能性が考えられた。また、小腸白色絨毛は吸収障害を反映するため、本症例では吸収障害が存在し、それにより抗生剤の内服投与は無効であったと考えらた。イソスポーラ等の原虫の慢性感染例における小腸内視鏡像の報告はなく、今回のカプセル内視鏡所見は貴重であると考えられた。

    【結語】非免疫不全者に発症し、カプセル内視鏡で小腸吸収障害の存在が示唆された慢性イソスポーラ感染症の一例を経験した。

  • 三澤 昇, 高津 智弘, 吉原 努, 芦苅 圭一, 松浦 哲也, 大久保 秀則, 日暮 琢磨, 亘 育江, 桐野 洋平, 利野 靖, 中島 ...
    セッションID: O1-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】小腸穿孔はバルーン内視鏡の注意すべき偶発症としてあげられる。今回、非結核性抗酸菌症よる小腸炎の精査で経口ダブルバルーン内視鏡を施行し、十二指腸で穿孔した1例を経験したので報告する。

    【症例】28歳女性。7歳の時にSLE、シェーグレン症候群と診断、以後ステロイド等で長期間治療されていた。2017年10月頃より食欲不振を認めるようになり、2019年3月頃より腹痛も認めるようになり、入院。入院時のCTで上部小腸に炎症性変化を認めた。パテンシーカプセルで開通性なしと診断、バルーン内視鏡での精査の方針となった。経口ダブルバルーン内視鏡ではTreitz靱帯近傍に白色調の浮腫状粘膜を認め、生検、培養施行し終了とした。内視鏡抜去後の透視画像でfree airを疑う所見を認め、CT施行、後腹膜にairを認め、十二指腸での穿孔が疑われた。外科コンサルトのうえ、本人の症状軽微のため1日様子を見たが、翌日のCTでairの増加を認め、緊急手術となった。術中所見として、Treitz起始部から30cmにわたって、多数の白色結節を認め、同部位より生検培養施行した。穿孔部は下十二指腸角で認めた。小腸粘膜・白色結節からの抗酸菌培養陽性、またPCRでMycobacterimu genavenseを認め、小腸炎は非結核性抗酸菌症によるものと考えられた。術後経過は良好で、入院中よりAZM+AMK+LVFXが開始となった。

    【考察】バルーン内視鏡による十二指腸穿孔の報告は少ない。本症例は原病も含めてまれな症例と考えられ、文献的考察を加えて報告する。

  • 今給黎 宗, 阿部 光市, 松岡 弘樹, 向坂 秀人, 松岡 賢, 久能 宣昭, 石橋 英樹, 石田 祐介, 船越 禎広, 竹下 盛重, 平 ...
    セッションID: O1-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

     症例は70才代女性、主訴は難治性下痢。20XX-1年12月頃より1日6行の水様性下痢が出現した。20XX年4月に前医にて下部消化管内視鏡検査を行い、潰瘍性大腸炎が疑われ、メサラジンを開始されたが、その後も症状持続するため、5月に当科入院となった。当科で行った下部消化管内視鏡検査では、回腸末端に輪状潰瘍、地図状潰瘍、多発びらんおよび全大腸に多発びらんを伴う顆粒状粘膜を認め、回腸末端の潰瘍辺縁、正常と思われる介在粘膜および大腸からの生検にて、25個/HPF以上の好酸球浸潤を認めた。肉芽種や陰窩膿瘍などを認めなかった。小腸病変のさらなる検索のため、小腸カプセル内視鏡検査(SBCE)を行ったところ全小腸に多発びらんと回腸に輪状、帯状潰瘍を認めた。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸第2部に多発びらんを認めたが、食道・胃病変はなかった。腹部CTでは、直腸と上行結腸の浮腫性変化と少量の腹水を認めた。以上の所見より、小腸・大腸に主病変を有する好酸球性胃腸炎と診断した。プレドニゾロン30mg/日を開始したところ、症状は徐々に改善したため、漸減した。治療開始から約2ヵ月後のSBCEでは、回腸の一部に活動性潰瘍が残存していたが、治療前と比較して改善傾向であった。

     今回、潰瘍性病変を主体とした好酸球性胃腸炎の一例を経験し、小腸病変の経過をSBCEで観察し得たので、若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 松本 悠, 都築 義和, 芦谷 啓吾, 塩味 里恵, 大庫 秀樹, 草野 武, 山口 浩, 佐々木 惇, 朝倉 博孝, 中元 秀友, 今枝 ...
    セッションID: O1-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【症例】46歳男性

    【主訴】下腹痛、血尿

    【現病歴】X年6月に下腹部痛、血尿を自覚した。A病院受診し膀胱炎の診断で抗菌薬を投与された。その後も症状が改善せずB病院を受診し、腹部CTで小腸の浮腫状変化と膀胱内の気泡を指摘された。腸管膀胱瘻を疑われ当科に紹介され入院となった。

    【経過】身体所見上は下腹部の軽度圧痛のみであった。血液検査ではCRP・好中球優位の白血球上昇、尿検査で膿尿を認めた。入院同日の膀胱鏡では高後壁に浮腫性隆起病変を認め膀胱瘻を疑う所見であった。絶食補液、CTRXの投与を開始した。第2病日の大腸内視鏡ではS状結腸の狭窄が強く挿入困難であった。小腸造影で空腸狭窄、回腸の縦走潰瘍瘢痕を認めた。第7病日の腹部造影CTで膀胱内の気泡は消失していた。第8病日経口ダブルバルーン小腸内視鏡を施行し潰瘍および瘢痕による狭窄、造影で腸間膜付着側の縦走潰瘍を疑う所見を認めた。病理組織検査では肉芽種を認めなかったが、小腸Crohn病、小腸膀胱瘻と診断した。第9病日にIFXによる治療を開始した。第21病日に施行した膀胱鏡で瘻孔は改善していた。腹痛、血尿が改善し、経口摂取再開後も増悪せず第24病日退院となった。

    【考察】Crohn病では1.5~4%に腸管膀胱瘻を合併することが知られている。またその約90%が外科的手術を要することが報告されている。本症例は腸管安静及び抗菌薬のみで小腸膀胱瘻が改善した点で比較的稀な症例と考え文献的考察を含め報告する。

一般演題2
  • 石橋 朗, 加藤 真吾, 山鹿 渚, 可児 和仁, 岡 政志, 名越 澄子
    セッションID: O2-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

     34歳男性。201X年発症全大腸炎型潰瘍性大腸炎。抗TNFα・トファシチニブ・タクロリムス抵抗性のため、201X+1年に入院となった。入院後ウステキヌマブにて加療するも増悪し、入院後day10で緊急手術となった。術直後からCRP高値、頻回の嘔吐、多量の人工肛門からの排液、造影CTで全小腸粘膜の浮腫および多量の腸液貯留を認めた。原因不明のため当科へ再転科。CS施行したが、残存結腸は潰瘍と虚血性変化、人工肛門からの回腸は粘膜腫脹し全周性に粗造粘膜で膿汁分泌物多量であった。EGDも十二指腸球部から肛門側に多発潰瘍・自然出血を認めた。小腸の病理所見はUCに類似であった。NG、人工肛門の排液は8L/日以上に達し、UC術後の広範小腸病変と判断し、day23よりPSL40㎎開始するも効果なく、GCAP併用。day28よりPSL50㎎へ増量し症状改善傾向であったが、day33に十二指腸下行部の潰瘍からの動脈性出血あり血管塞栓術にて止血成功。day36でCRP改善傾向のためシクロスポリン持続注併用開始しPSL40㎎へ減量。day39のCTで両側肺動脈に肺塞栓を認めへパリン持続注開始。その後CRP値・腹部症状は悪化傾向でday44にPSL60㎎へ再増量し現在も加療継続中である。大腸全摘後に小腸出血、小腸全体のUC類似病変を呈した重症型潰瘍性大腸炎の一例を経験した。

  • 安達 香帆, 梁井 俊一, 菅井 恭平, 山田 峻, 森下 寿文, 鳥谷 洋右, 赤坂 理三郎, 春日井 聡, 中村 昌太郎, 上杉 憲幸, ...
    セッションID: O2-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【症例】57歳女性

    【主訴】黒色便、貧血

    【既往歴】C型肝硬変にて生体肝移植後、皮膚悪性リンパ腫

    【現病歴】2010年7月当院外科でC型肝硬変に対して生体肝移植が施行された。2020年2月近医循環器内科で心房細動に対してワルファリンが開始された。2020年5月、黒色便を主訴に前医を受診し、PT-INR>4の延長と高度貧血を認め、精査加療目的に当院に救急搬送された。

    【経過】入院時の造影CTで明らかな出血源の特定はできなかった。上下部消化管内視鏡検査を施行したところ、出血点は特定できなかったが終末回腸より口側に暗赤色便の付着を認め、小腸出血が疑われた。その後、再度貧血の進行を認め施行したCTで上部空腸にextravasationを認めたためIVRによるコイル塞栓術を施行した。止血処置後に施行したカプセル内視鏡検査、ダブルバルーン小腸内視鏡検査では上部空腸に全周性の潰瘍とその口側に小潰瘍を認めた。潰瘍辺縁からの生検で悪性所見を認めず、他に小腸潰瘍の原因となりうる疾患や薬剤を認めないことから、PTの過剰な延長に伴う小腸壁内血腫の形成とその脱落に伴う潰瘍形成と診断した。PTのコントロール後は再出血なく経過している。

    【考察】小腸壁内血腫は抗凝固薬を内服している患者において、PT-INRの上昇により形成される稀な疾患である。標準的な治療は確立されていないが、保存的加療で軽快することが多いとされている。今回我々は、ワルファリンが原因と考えられる小腸潰瘍を経験したため、若干の文献的考察を含めて報告する。

  • 森田 竜一, 井上 健, 内藤 裕二, 杉野 敏志, 廣瀬 亮平, 土肥 統, 吉田 直久, 山口 寛二, 鎌田 和浩, 全 完, 内山 和 ...
    セッションID: O2-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【症例1】81歳 女性 【主訴】貧血 【内服】クロピドグレル 75mg、ウルソデオキシコール酸 300mg、ラベプラゾールナトリウム 10mgなど 【既往歴】原発性胆汁性肝硬変、僧帽弁閉鎖不全症(軽症~中等症)、強皮症、シェーグレン症候群、脳梗塞 【現病歴】原発性胆汁性肝硬変にて通院中の201X年X月に、黒色便、貧血進行を認めた。上下部内視鏡では出血源を指摘できず、ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行した。上部空腸に多発するangioectasiaを認め内視鏡的止血術を施行した。

    【症例2】84歳 男性 【主訴】貧血 【内服】アピキサバン 5mg、プレドニゾロン 8mg、ファモチジン 10mgなど 【既往歴】僧帽弁閉鎖不全症(軽度)、糖尿病、前立腺がん、脂質異常症、脳梗塞 【現病歴】201X年X月に、黒色便、貧血進行を認めた。大腸内視鏡検査にて盲腸に長径25mmの毛細血管拡張症を認めた。小腸カプセル内視鏡では顕性出血は認めないものの、小腸内に1mmのangioectasiaを複数個所認めた。盲腸病変が出血源と考え、内視鏡的止血術を施行した。

    【考察】循環器疾患の併存例においては、生体内の過度のずり応力による後天性フォンウィルブランド症候群(AVWS)であることが明らかになった。僧帽弁閉鎖不全症に伴うAVWSにおける小腸粘膜血管異形成の2例を経験した。

  • 武富 啓展, 芥川 剛至, 島田 不律, 鶴岡 ななえ, 坂田 資尚, 下田 良, 日暮 一貴, 力武 美保子, 能城 浩和, 江﨑 幹宏
    セッションID: O2-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】IFPは消化管の粘膜下腫瘍の形態を呈する良性腫瘍で、胃に多く、小腸に発生することは比較的まれとされている。またその多くは腸重積にて緊急手術が施行され、切除標本の病理組織学的診断にて判明したものである。今回、体重減少を契機に発見されたIFPの1例を経験したので報告する。

    【症例】70歳代,男性。2か月で3kgの体重減少あり、前医で施行された造影CT検査にて遠位回腸に3cm大の腫瘤性病変を認め、精査加療目的に当院紹介となった。小腸造影では、回盲部より十数cm口側に3cm大の表面平滑でなだらかな立ち上がりの隆起性病変を認めた。下部消化管内視鏡では、同部に約3cm大の粘膜下腫瘍様隆起を認め、頂部に浅い潰瘍を伴い、潰瘍周囲の粘膜は発赤調であった。GISTなど粘膜下腫瘍の自壊が疑われたが、術前生検での診断は困難であった。腹腔鏡下小腸部分切除術を施行され、病理組織診断にて紡錘形細胞の増生と線維粘液性の間質、リンパ球、形質細胞、好酸球などの炎症細胞浸潤、小血管の増生を認め、IFPと診断した。

    【考察】IFPは亜有茎または有茎性の硬い粘膜下腫瘍の形態を呈し、頂部にびらんや潰瘍を伴いやすく、典型例では陰茎亀頭様として表現される。しかし、他の粘膜下腫瘍との鑑別は必ずしも容易ではなく、治療前の組織学的診断も困難なことが多いとされている。小腸の粘膜下腫瘍様病変では、本疾患も考慮すべきと思われた。

一般演題3
  • 荻原 直樹, 張 つぼみ, 三島 祐介, 新間 淑雅, 横田 将, 安斎 和也, 津田 真吾, 伊藤 裕幸, 永田 順子, 小島 清一郎, ...
    セッションID: O3-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【症例】57歳男性

    【既往歴】なし

    【現病歴】201X年11月に便潜血陽性を指摘され201X+1年1月に前医で下部消化管内視鏡検査を施行したところ回腸末端にIpポリープを認めた。同年2月に精査のため小腸内視鏡検査を施行し、回盲弁から70mmの部位に20mm大のIpポリープを認めた。生検はGroup1 hyperplastic changeの診断であり経過観察の方針となった。201X+2年3月、小腸内視鏡検査にてIpポリープは25mm大と増大傾向を認めたため同年5月当院へ紹介となった。

    【臨床経過】小腸造影検査を行ったところ回盲弁から72mm口側に43mmの長い茎を有するIpポリープを認め、頭部径は30mmで表面顆粒状を呈していた。小腸内視鏡検査にて生検を施行したが悪性所見は認めなかった。鑑別としては腺腫、過形成ポリープ、過誤腫性ポリープなどが疑われた。腫瘍は増大傾向にあり出血による貧血や重積に伴う消化管閉塞を生じる危険性を懸念して同年6月に腹腔鏡下小腸部分切除を施行した。小腸切除組織はPeutz-Jeghers type polypであった。口唇、口腔粘膜、皮膚の色素沈着や特記すべき家族歴はなく、小腸以外に過誤腫性ポリープは認めなかった。

    【考察】Peutz-Jeghers type polypは比較的稀な疾患であり若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 池上 幸治, 蔵原 晃一, 大城 由美, 末永 文彦, 井本 尚徳, 村田 征喜, 原 裕一, 清森 亮祐, 浦岡 尚平, 浦田 真吾
    セッションID: O3-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

     症例は60歳代の男性。201X年に横行結腸癌に対し腹腔鏡補助下横行結腸切除術+リンパ節郭清(D2)を施行後、化学療法後に撮影したCTで、術前に小腸間膜脂肪織炎と考えられていた病変が半年で増大していた。PET-CTにて同部と十二指腸にFDG集積を認めた。カプセル小腸内視鏡とバルーン小腸内視鏡で、十二指腸から空腸にかけて集簇しながら多発する白色顆粒状隆起を認め、生検にて中型異型リンパ球が濾胞構造を保ちながら増殖しており、CD20、bcl-2、CD10がいずれも陽性で濾胞性リンパ腫(Grade 1)、Lugano国際会議分類StageⅡ-1と診断した。国際予後因子は低リスクであったが、R-CHOP療法6コースにより完全寛解となり、以後経過観察していたところ、自覚症状は特になかったが、濾胞性リンパ腫治療から3年半後のCTで小腸間膜のリンパ節腫大を認め、正常範囲内で経過していた可溶性IL-2受容体も507U/mLと軽度上昇していた。カプセル小腸内視鏡で上部小腸に辺縁白色絨毛を伴う潰瘍性病変を認め、経口的バルーン小腸内視鏡では近傍の襞腫大となだらかな周堤様隆起を伴う軟らかい潰瘍性病変を呈していた。周囲に白色顆粒状隆起ははっきりしなかった。生検で大型異型リンパ球のびまん性増殖が認められ、CD20とbcl-2は陽性であったがCD10陰性で、DLBCLの診断となった。Lugano国際会議分類StageⅡ2でR-EPOCH療法を開始した。小腸濾胞性リンパ腫のhigh grade transformationは稀であり、小腸病変の形態変化を追えた貴重な症例と考え報告する。

  • 西田 晋也, 太田 和寛, 岩坪 太郎, 川口 真平, 小嶋 融一, 竹内 利寿, 芥川 寛, 樋口 和秀
    セッションID: O3-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

     症例は74歳男性。歯肉癌術後、肺腺癌術後で当院通院中。1週間前からの腹部膨満と黒色便があり、当科へ紹介となった。血液検査ではHb:9.5g/dLと軽度の貧血を認めた。腹部CTで上部空腸に限局的な壁肥厚と播種を疑う大網の濃度上昇、腹膜、腸間膜の軟部結節、さらには腹水を認めた。上部消化管内視鏡検査では特に異常所見は無く、出血源は何らかの小腸悪性腫瘍であると考えられた。この時点での小腸病変の鑑別として、小腸癌、GIST、悪性リンパ腫、他臓器癌の小腸転移などが挙げられた。経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行ったところ、上部空腸に不整な潰瘍を伴った3/4周性の隆起性病変が明らかになった。内視鏡下生検により大型リンパ球様異形細胞が検出された。また、同日施行した腹水細胞診においても多数のリンパ腫細胞が検出され、フローサイトメトリーにてCD3(-)、CD19(+)、CD20(+)であり、L-λ>>L-κκ/λ比:0.00)とクロナリティを認めたことよりB細胞性リンパ腫と考えられた。以上より、小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫と診断した。我々は腹水による腹部膨満が主訴となった小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫を経験した。種々の小腸腫瘍が鑑別に挙がったが、症状はいずれの腫瘍に対しても非典型的であり、最終的な診断は病理組織学的所見によるものであった。腹水が症状の主体となる小腸原発びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫の報告は少ない。当院は2012年以降9例の小腸びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫を経験しており、それらの経過と若干の文献的考察も加えて報告する。

一般演題4
  • 齊藤 里実, 大森 鉄平, 村杉 瞬, 高山 敬子, 佐川 孝臣, 山本 果奈, 徳重 克年
    セッションID: O4-1
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【諸言】1型神経鞘腫(NF1)は、カフェオレ班・神経線維腫の皮膚病編を特徴とする常染色体優性遺伝疾患で、中枢神経病変・骨病変・眼病変以外に消化管病変などを合併することがある。今回、我々はNF1の消化管病変として小腸GISTを合併した1例を経験したので報告する。

    【症例】39歳男性

    【既往歴】乳児期から四肢体幹に神経腫瘍様の隆起が複数あり、生検施行歴あるが有意所見なし。

    【家族歴】父:皮膚隆起性病変あるが、未精査。

    【現病歴】2019年5月に検診で、腹部超音波検査にて膀胱背側に径55mm大の腫瘤性病変を指摘され、小腸腫瘍が疑われ、入院となった。

    【経過】身体所見で四肢にカフェオレ班、背部・四肢にneurofibromaが散在しており、家族歴からNF1の臨床診断を満たした。腹部骨盤造影CTでは、骨盤内に頭側で小腸に接する63×41mmの血流豊富な腫瘤があり、皮下結節が多発していた。小腸造影及び経肛門バルーン小腸内視鏡検査では腫瘍は認識できず、到達部に点墨を行った。経肛門的EUSでは、膀胱に対して内部にややいびつな低エコー領域が散見される腫瘍を認めた。GIST疑いに対して、腹腔鏡下部分切除術を行った。点墨より肛門側の空腸に直径70mm大の管外発育形態をとる腫瘤と、口側に米粒大の小隆起が散在しており、うち1つを切除した。病理所見ではともにKIT陽性でGISTの確定診断に至った。

    【結語】NF1に合併した小腸GISTの1例を経験した。本症を疑った場合は、小腸病変のスクリーニング精査も行うことが望ましい。

  • 藤田 朋紀, 藤江 慎也, 荒谷 純, 小西 和哉, 中島 正人, 後藤 哲, 佃 曜子, 町田 卓郎, 宮下 憲暢, 岡本 宗則
    セッションID: O4-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

     症例は71歳 男性。2017年11月S状結腸癌SS、No、P0、M0、StageIIの診断で腹腔鏡下S状結腸切除術が行われていた。2019年には労作性狭心症の診断で冠動脈ステントを挿入後、バイアスピリン・クロピドグレルの内服が開始されていた。

     2019年7月に血便を主訴に当院受診。上部・下部内視鏡検査では出血源を同定できず、小腸出血を疑い精査加療目的に当院入院。

     入院当日に経口的ダブルバルーン内視鏡検査(以下DBE)を行なったが、出血源まで挿入できなかったため翌日カプセル内視鏡検査(以下CE)を行なった。CEでは出血を伴う潰瘍性病変を認め、同部位でCEが停滞している可能性が示唆された。

     経肛門的DBEでは、CE所見と同様に全周性の潰瘍性病変を認め、口側にCEが停滞していた。同潰瘍から生検の結果、病理組織学的にadenocarcinomaと診断され、S状結腸癌の回腸転移が疑われた。術前に再度経口DBEを行い、点墨とCE回収を行なった後に当院外科で腹腔鏡下小腸切除術を行なった。術後の病理組織学的所見では癌組織は粘膜下・筋層・漿膜下組織が主体であり、粘膜内病変はわずかであったことから転移性腺癌と考えられた。また、脾臓に認められた腫瘤も切除した結果、adenocarcinomaであったことからS状結腸癌・小腸転移・脾臓転移と考えられた。

     若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 芥川 剛至, 松永 壮人, 西岡 敦二郎, 武富 啓展, 島田 不律, 鶴岡 ななえ, 坂田 資尚, 下田 良, 青木 茂久, 能城 浩和, ...
    セッションID: O4-3
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/19
    会議録・要旨集 フリー

    【症例】40歳代女性。2週間ほど持続する腹部膨満、嘔気を主訴に前医を受診。腹部造影CTで十二指腸遠位側~上部回腸に位置する腫瘍性病変を指摘され、精査加療目的で当科紹介となった。ダブルバルーン内視鏡では、十二指腸遠位側に全周性の潰瘍性病変を認め、生検で印環細胞癌が検出された。十二指腸原発癌と診断し局所切除を予定したが、審査腹腔鏡で多発腹膜転移を認めたため、胃空腸バイパス術後に化学療法を開始した。FOLFOX療法を開始するも癌性腹膜炎の増悪に伴う腹水増加が見られたため、腹水制御を期待してラムシルマブ+アブラキサン併用療法に変更した。腹水コントロールは得られたものの、原発巣は増大傾向であった。二次療法開始後20日目に消化管穿孔による腹膜炎・敗血症ショックをきたし、同日死亡退院となった。

    【考察】十二指腸原発印環細胞癌は十二指腸癌の2-3.5%との報告もあるが、きわめて稀である。局所切除が可能であれば長期予後も望めるが、進行癌で発見されることが多く、予後は著しく不良である。十二指腸癌に対する化学療法は確立されておらず、胃癌または大腸癌に準じた薬剤選択が行われる。しかしながら、印環細胞癌や低分化型腺癌に対する化学療法実施例の報告は少なく、その治療効果は明らかとなっていない。また、本例のように若年発症し急速に進行する場合もあり、診断法や治療法の確立が望まれる。

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