日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
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Print ISSN : 2434-2912
第59回日本小腸学会学術集会
セッションID: JS2-3
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合同シンポジウム2 クローン病小腸病変のTreat to target (T2T)
無症候期クローン病の小腸病変に対するカプセル内視鏡と便中カルプロテクチンを用いたモニタリングの有用性
*村上 雄紀上野 伸展藤谷 幹浩
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抄録

【背景】カプセル内視鏡(CE)の登場で、クローン病(CD)における微小な小腸病変の存在が明らかになってきた。無症候期CDにおいて小腸微小病変への治療介入の意義については明らかになっていない。そこで本研究では、無症候期CDにおいてFC測定がCE所見の評価マーカーとなり得るか、その後の再燃予測のマーカーとして有用であるのか前向きに検討した。【方法】旭川医大病院通院中CD患者で、CDAI<150もしくは無症状ストマ造設症例を対象とした。同意取得後にFC測定とCEを施行、その後8週毎にFC測定、血液検査を実施。48週後に再度CEを施行した。観察期間中にCDAI>150もしくは何らかの治療介入が必要と判断された場合、再燃と判定。最大144週までの再燃の有無を検討している。CEはLewisスコア(LS)で評価し、FCとの相関性、その後のFC含めた各種バイオマーカーの変化と再燃の有無について評価した。【結果】現在までに20例登録、1例が除外となり19例が解析対象となった。FCとLSは弱い相関性を認め(R=0.36)、粘膜治癒をLS<135と定義した場合のROC解析によるカットオフ値は50mg/kgであった。累積寛解維持率は48週で89.2%、144週で64.8%であった。48週の観察期間中、非再燃群ではFCは低値で変動なく経過していた。144週までの再燃群では非再燃群に比較し、有意に免疫抑制剤使用割合が高く、FC、CRP、LSがそれぞれ高かった。ROC解析からLSが最も有用なバイオマーカーと考えられた(AUC=0.929、p=0.005)。【結語】無症候期CDにおいてFC測定によって小腸の粘膜治癒は評価可能である。FC、CRP、LSは再燃予測因子である可能性が示され、特にカプセル内視鏡所見は新たな治療ターゲットとなる可能性がある。今後症例を蓄積し更なる検討を進めたい。

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© 2021 本論文著者
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