新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急性の呼吸器症状で発症することが多いが,様々な臓器に炎症をきたし腹痛や下痢などの消化器症状を呈することも知られている。今回我々は,COVID-19関連の難治性大量下痢をきたした2例を経験したので考察を加え報告する。
【症例】50歳,男性。COVID-19罹患前の身長177cm,体重114.5kg,BMI36.5,既往歴に特記事項なく内服歴もなかった。20XX年5月からCOVID-19にて加療を開始,人工呼吸器管理により呼吸状態は改善し,発症2ヶ月後に他院に転院となった。転院後大量水様性下痢をきたし,発症後3ヶ月後に当科に紹介転院となった。大腸内視鏡検査(CS)では回腸末端から全大腸にかけて広範な浅い地図状の潰瘍を認め,小腸カプセル内視鏡では小腸全域に粘膜浮腫と地図状の潰瘍を認めた。C7HRPが陽性であり転院第3病日よりガンシクロビル(GCV)の投与を開始したが下痢の改善はなかった。転院10病日よりステロイドパルスを開始したところ下痢は改善し,第49病日に紹介元へ転院とした。
【症例2】53歳,男性。COVID-19罹患前の身長180cm,体重100kg,BMI30.9,既往歴として高血圧,高尿酸血症があり内服加療中であった。20XX年4月にCOVID-19にて,人工呼吸管理を開始,呼吸状態は改善したもののCOVID-19罹患1ヶ月後より水様性下痢が出現した。罹患2ヶ月後頃より下痢量が6000-7000mlまで増加,CSでは大腸から回腸末端にかけて広範な地図状潰瘍が多発しており,C7HRPが陽性であったことからGCVによる加療を開始したが,その後も7000ml程度の下痢が持続し,精査加療目的に罹患3ヶ月後に当科に紹介転院となった。転院後施行したCSでは以前に見られた回腸末端の潰瘍は改善しているものの,全大腸にわたり粘膜は広範に脱落している状態であった。転院後ステロイドパルス療法,インフリキシマブ,トシリズマブの投与を行なったがいずれも効果がなく,COVID-19罹患後6ヶ月後に永眠された。