【背景】新型コロナウイルス感染症のパンデミック(以下コロナ禍)によって患者の受療行動は変化したと考えられ、内視鏡検査への影響も避けられないが、検査数や内容についての報告はこれまでほぼ皆無である。【目的】コロナ禍における小腸内視鏡診療の現状を明らかにする。【方法】当院にて2018年度から2021年度までに行われた小腸内視鏡検査(バルーン内視鏡検査およびカプセル内視鏡検査)をデータベースから抽出し、各検査の症例数、検査目的(クローン病評価目的、小腸出血、ポリープ精査加療、Peutz-Jeghers症候群精査加療、小腸腫瘍精査、挿入困難大腸精査、その他)を性別・年齢とともに年度ごとに調査した。2018、2019年度を「コロナ禍前」、2020、2021年度を「コロナ禍」としてそれぞれの内容の実数と変化について解析した。【結果】バルーン内視鏡検査はコロナ禍前196件、コロナ禍168件と減少していた。バルーン内視鏡検査の検査目的の内訳を見ると、コロナ禍前vsコロナ禍でクローン病の比率は97件(49.5%)vs 109件(64.9%)と増加(p=0.003)していた。小腸出血は20件(10.2%)vs 22件(13.1%)で変化なく(p=0.39)、ポリープ精査加療も17件(8.7%)vs 12件(7.1%)と変化なかった(p=0.59)。Peutz-Jeghers症候群精査加療も8件(4.1%)vs 10件(6.0%)(p=0.412)と変化なかった。挿入困難大腸精査は13件(6.6%)vs 7件(4.2%)(p=0.30)で変化なかった。それに対し、小腸腫瘍精査は27件(13.8%)vs 8件(4.8%)と大幅に減少(p=0.004)していた。一方、カプセル内視鏡検査(パテンシー・カプセル含む)はコロナ禍前223件、コロナ禍246件と微増していた。【結論】コロナ禍においてもクローン病評価目的の小腸内視鏡は従来通り行われ特にカプセル内視鏡はコロナ禍の影響を受けていなかった。一方、小腸腫瘍精査が大きく減少し、健診や精査目的の受診を控えたことなどが背景にあると考えられた。