日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第60回日本小腸学会学術集会
セッションID: S5-5
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主題セッション5 基礎研究から紐解く小腸疾患の病態生理
腸管炎症における上皮型ナトリウムチャネル活性化因子プロスタシン(PRSS8)の役割
*西田 淳史杉谷 義彦今井 隆行安藤 朗
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抄録

【目的】プロスタシン(PRSS8)は、GPIアンカー型トリプシン様セリンプロテアーゼで、上皮細胞のナトリウムチャネルを活性化することが知られている。今回我々は、腸管炎症におけるPRSS8の機能を解析した。

【方法】健常人とIBD患者の大腸粘膜でのPRSS8 mRNAの発現をreal-time PCR法で検討した。大腸粘膜におけるPRSS8の発現について免疫染色法を用いて検討した。PRSS8lox/loxマウスとVillin-Creマウスを交配し、腸管上皮特異的PRSS8欠損マウス(PRSS8ΔIEC)を作製し、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いて腸炎を誘導した。DSS腸炎の重症度を、体重変化、腸管長、組織学的所見で評価した。大腸粘膜でのtight junction蛋白発現および粘膜透過性を検討した。

【結果】大腸粘膜でのPRSS8 mRNA発現は、健常人と比較して活動期IBD患者で低下していた。大腸粘膜でのPRSS8発現は、健常人では腸管上皮細胞の頂端側で確認されたが、活動期IBD患者では低下していた。DSS腸炎の重症度は、control群と比較してPRSS8ΔIEC群で、体重減少率および組織学的スコアが有意に高かった。大腸上皮細胞でのToll-like receptor4(TLR4)の発現は、control群に比較してPRSS8ΔIEC群で増強した。大腸上皮細胞でのNF-κBの核内移行は、control群に比較しPRSS8ΔIEC群で増強した。PRSS8ΔIEC群に対するDSS腸炎の重症度は、抗菌薬投与で低下した。大腸上皮細胞のtight junction蛋白のmRNA発現および粘膜透過性は、腸炎誘発時のcontrol群およびPRSS8ΔIEC群で有意差はなかった。

【結論】PRSS8は、大腸上皮細胞でのTLR4の発現を調節し、腸管炎症を制御することが示唆された。

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© 2022 本論文著者
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