抄録
症例は 5 歳 2 か月の男児。5 歳 1 か月頃から,誘因なく右頬部の圧痛と腫脹が出現した。近医での MRI 検査で右頬骨体部を破壊し右上顎洞および右眼窩内に浸潤する腫瘤性病変を認め,当院に紹介となった。Ga シンチでは同部位に異常集積を認めたが,他部位に異常集積は認めなかった。生検組織所見により CD1a, S–100蛋白陽性細胞の増殖を認め,ランゲルハンス細胞組織球症(LCH),Single-system, Single-site と診断した。腫瘤は眼窩内に進展していることから全身化学療法を行った。開始 1 週目で右頬部の圧痛・熱感・腫脹は消失し,治療終了後12か月後の現在も再燃なく寛解を維持している。LCH の限局性病変の治療については自然軽快する例も多く,一定のコンセンサスが得られていない。本例では,眼窩内に進展しているため,中枢神経浸潤や後遺症が残る可能性を懸念し化学療法を選択した。LCH は頭頸部に症状が出るものが多く,小児耳鼻咽喉科疾患として注意を要する。