小児耳鼻咽喉科
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第18回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
Symposium 1『今から始めるこどもから大人への移行支援』
  • 松永 達雄
    原稿種別: Symposium 1『今から始めるこどもから大人への移行支援』
    2024 年 45 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    移行期医療支援は,小児から大人への移行期の医療を円滑に継続するための支援である.その基本は,患者の自律(自立)支援と医療体制整備である.医療の発展により慢性疾患を持ちながら成人する小児が増えてきたことなどから,本支援の必要性が高まってきた.耳鼻咽喉科では,成人後も小児期と同じ施設で診療を継続することが多いが,それでも保護・代諾的な医療から自律性を尊重した医療への移行を支援する必要がある.移行期医療支援の内容は,患者への説明,外来の予約,本人の状況の把握,支援計画の検討,心理および発達評価,移行の進捗チェック,社会制度利用の諸手続の案内,薬剤管理の説明,移行先施設の調整などがある.支援が難しい例としては,知的発達の遅れを伴う場合,複数の異なる医療上の問題を持つ場合などがある.成人後の良質な診療を長期継続するために,本邦の耳鼻咽喉科診療における移行期医療支援の普及が望まれる.

  • 岩松 浩子
    原稿種別: Symposium 1『今から始めるこどもから大人への移行支援』
    2024 年 45 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    小児慢性特定疾病をはじめ,多くの慢性疾患を抱えた子ども達が治療の進歩により成人期をむかえることができるようになってきた.このような状況の中で必要とされる成人移行支援は単なる転科ではなく,成人科への円滑な橋渡しや,慢性疾患を抱えた子どもと家族の自律(自分で決める)・自立(自分で行なう)支援を行ない自己管理能力をつけることであり,社会福祉制度の支援も含み,その子と家族の将来のために最善をつくすことと考える.しかし実際は移行支援がスムーズに行く例と困難な例がある.スムーズに行く例は成人科でも診療している糖尿病や甲状腺疾患,てんかん等であり,最も困難な例が医療的ケア児,重症心身障害児である.成人移行支援は,子どもの疾患の診断が確定した時から始まることを意識し,成長・発達段階に応じて継続的に患者と保護者に支援を行ない,特に移行が困難な例では院内外の多職種が連携して支援を行なうことが重要である.

  • 菅谷 明子
    原稿種別: Symposium 1『今から始めるこどもから大人への移行支援』
    2024 年 45 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    令和2–4年度に実施された厚生労働省『難聴児の支援に関する調査研究』(PwCコンサルティング合同会社)では,就学以降の難聴児のフォローアップは地域の学校やろう学校によるところが大きく,医療機関からの十分な支援が行き届いていない現状が明らかとなった.また,同期間のAMED研究『聴覚障害者の社会参加を促進するための手法に関する研究』(研究代表者:九州大学 中川尚志先生)で「聴覚障害者の就労支援・就労継続支援」の研究を実施しており,聴覚障害者は就職しても離職や転職を繰り返すことが多く,就労年齢に達してからのみではなく,就労前段階でのスキル獲得のための支援が重要と考えられた.

    本稿では,こうした先行研究の内容を紹介するとともに,就学期にある難聴児における地域での多職種連携での療育の取り組みや,現在実施している就労・就労継続についてのAMED研究など,我々の取り組みについても解説する.

  • 村松 恵
    原稿種別: Symposium 1『今から始めるこどもから大人への移行支援』
    2024 年 45 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    小児慢性疾患患者は毎年10万人前後と推測されている.成人の慢性疾患患者と比較して著しく少ないうえに,16疾患788疾病にわたる希少疾患をもつ集団と言える(小児慢性特定疾病情報センター.小児慢性特定疾病児童等データベース:https://www.shouman.jp/disease/search/disease_list.2024/03/01参照).医療の進歩により,希少な慢性疾患患者の平均寿命は著しく延長したものの,成人移行の医療ニーズも多様化し,複雑高度化していると言える.日本小児科学会はトランジションに関する提言を2014年に公表して,その後も引き続いて最適なトランジションの具体化に努めている(小児科学会.小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言:https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=144.2024/03/01参照).医療的ケア児は,疾患や重症度,地域の特性によって成人後の医療体制が大きく異なるため,将来の治療や予後,患者自身の希望などを考慮した多角的な支援の検討が重要である.本稿では,移行支援の重要性,移行支援における医療従事者の役割,乳幼児期から成人期までの具体的な支援内容,子どもアドボカシーとセルフアドボカシーについて述べる.

Symposium 5『軽中等度難聴の困ったに応える』
  • 平島 ユイ子
    原稿種別: Symposium 5『軽中等度難聴の困ったに応える』
    2024 年 45 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    軽中等度難聴児は日常会話での困難さは少ないが,知らない言葉や知識が不足している会話内容ではコミュニケーションブレイクダウンを起こしやすい.聴取が困難で会話内容を理解できないときに,会話を修復するためのスキルである訂正方略が活用できると聴取できなかった情報を補うことができ,会話が継続しやすくなる.コミュニケーションの状態を評価するために知らない内容を意図的に入れた分りにくい会話を軽中等度難聴児に実施したところ同年齢聴児に比べブレイクダウンが多く,訂正方略の活用が少なかった.また,中等度難聴児を対象に訂正方略指導を実施したところ訂正方略が活用できるようになり,ブレイクダウンは減少した.訂正方略の活用は,自分に聞こえた言葉や分からなかった内容を相手に伝えるものであるため,自分の聞こえの状態や困難さを相手に知らせることになり,セルフアドボカシーとも関係すると考えられた.

Panel Discussion 1: OSA Beyond A&T
  • 中村 知夫
    原稿種別: Panel Discussion 1: OSA Beyond A&T
    2024 年 45 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    国立成育医療研究センターで,2014年から2023年でOSA(Obstructive Sleep Apnea)に対しCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)を導入した20症例で,年齢,体重,原疾患,患者背景,外科的介入,継続性,関わった専門診療科を検討した.12例が10歳未満,6例が体重10 kg未満であった.15例が上気道疾患以外に,多くが遺伝性疾患を有していた.病態は,扁桃・アデノイド肥大以外のOSA,扁桃・アデノイド肥大以外のOSA+中枢性無呼吸,呼吸器疾患で,7例が耳鼻咽喉科手術を受け,14例はCPAPを継続でき,3例のみCPAPを離脱できた.初診は,総合診療部に続き,新生児科,耳鼻咽喉科が多く,管理には多くの専門診療科(中央値9)が関与していた.小児高度医療施設では,多職種連携による全身的治療が必要であり,小児科医の果たすべき役割は大きい.

原著
  • 大原 卓哉, 山下 拓
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    反復性中耳炎は,通常の急性中耳炎とは異なり抗菌薬内服のみでのコントロールが困難な疾患である.抗菌薬反復投与,鼓膜チューブ留置術が選択されることが多いが,原因菌の薬剤耐性化や鼓膜穿孔残存などの合併症が問題となる.十全大補湯の治療効果を検討することを目的に2012年1月から2022年12月の期間に十全大補湯の投与をうけた反復性中耳炎小児患者14例を対象に検討を行った.十全大補湯投与前の急性中耳炎罹患頻度は平均1.31回/月であり,投与開始後1~4週では平均0.33回,5~8週では平均0.17回,9~12週では平均0.08回,12週間では平均0.58回であった.全例において12週間投与により急性中耳炎罹患頻度は減少し,治療前平均1.31/月と比べ,十全大補湯12週投与中は0.19回/月(p=0.002)と有意に減少した.反復性中耳炎に対して十全大補湯を併用することで侵襲的な治療である鼓膜チューブ留置術を回避できる可能性がある.

  • 北野 雅子, 大原 奈里, 臼井 智子, 竹内 万彦
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    小児の一側性難聴は,旧来は健診などで初めて難聴の指摘を受けるケースも多かったが,新生児聴覚スクリーニング(NHS)により早期診断が可能となり,またNHSは難聴が先天性かどうかの診断にも寄与する.

    当科における一側性難聴児41例を対象とし,初診の時期・理由,難聴の程度・原因,NHSとの関係について検討した.3/4は生後3ヵ月以内で初診し,そのほとんどの理由がNHSであった.NHSは全体の83%が受検していた.

    難聴原因の73%は内耳,中耳,外耳の先天性形態異常で,全体の85%は先天性難聴であった.この差12%はNHSによって先天性難聴と診断ができたと考えられた.先天性形態異常の中でも蝸牛神経管狭窄が最多であった.また一側性重度難聴は過半数を超えており,これらの原因検索には先天性サイトメガロウイルス感染症(CCMVI)の確認と内耳の先天性形態異常の精査が有用と考えられた.

  • 田中 康広, 栃木 康佑, 穐吉 亮平, 冨山 克俊, 深美 悟, 春名 眞一
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    中耳真珠腫進展度分類は真珠腫に対する術式選択や術後成績との関連付けを目指して作成された分類であるが,小児後天性真珠腫に関する報告はほとんどない.そこで今回,手術加療を施行した小児後天性真珠腫症例21例21耳に対して中耳真珠腫進展分類2015改定案に基づいた進展度と術後成績について検討を行った.

    基本分類における進展度と再発および聴力改善成績との間には有意な相関は認めなかった.一方,副分類では乳突部の蜂巣発育程度(MC分類)において再発を認めた症例はいずれもMC2以上の含気を認めない症例であり,発育程度が良好な症例で再発率が有意に高い結果であった.またアブミ骨病変の程度(S分類)が高度な症例で聴力判定成功率が低下する傾向が認められた.

    中耳真珠腫進展度分類は基本分類だけでなく副分類の併用によってより臨床に即した分類となり,小児後天性真珠腫においても術後成績の評価に有用と考えられた.

症例報告
  • 山上 夏矢子, 馬場 信太郎, 吉冨 愛
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 45 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/28
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    異所性歯牙は多数の報告例はあるが,新生児での報告はない.

    軟口蓋に発生した異所性歯牙を生後1ヶ月で摘出したことにより,鼻呼吸・経口摂取開始が可能となった症例を経験したので報告する.

    出生後すぐにいびき,気道狭窄などの呼吸障害をきたし,喉頭内視鏡所見では軟口蓋に腫瘤性病変を認め発見された.治療は無症状の場合には経過観察でよいとされているが,症例は新生児であり,呼吸障害,哺乳障害があり早期に切除の必要があった.全身麻酔下で腫瘤摘出術を施行した.症状は速やかに改善し,術後は再発を認めずに経過している.新生児期発症の気道狭窄の原因として異所性歯牙の報告はなく,術前に診断は容易ではなかった.耳鼻咽喉科医は咽頭腫瘍の鑑別疾患として異所性歯牙を認識し,適切な治療介入を行うことが求められると考えられた.

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