2009 年 30 巻 1 号 p. 31-36
拡散テンソル法による tractography(以下,テンソル画像)は,MRI の画像データから大脳白質の神経繊維の走行を描出するソフトウェアにより作成される。我々は幼児や学童を対象にテンソル画像を作成した。症例は 1)片耳難聴の 5 歳児,2)発達性ゲルストマン症候群が疑われた10歳児,3)平仮名の読字習得が困難であった 3 例(9 歳,5 歳,5 歳)である。今回の検討ではいずれも神経心理学的な所見とテンソル画像が一致していた。脳活動をとらえる画像検査としては fMRI や PET があるが,幼児や学童を対象としたときに課題負荷もなく鎮静をかけても結果が変わらないテンソル画像には有利な点も多い。一方で,画像を作成するさいの設定を少し変えるだけでテンソル画像は大きく変化することは問題点として挙げなければならない。したがって,テンソル画像単独で難聴や言語発達障害の病態を説明することはできない。