乳児の呼吸障害の要因の一つに頸部腫瘤による気道の圧排があるが,呼吸障害を生じた 0 歳11カ月男児で左副咽頭間隙に神経線維腫を認めた症例を経験した。初めにいびきが出現,その 1 カ月後に発熱,吸気性喘鳴が出現し,口腔内所見では左前口蓋弓の腫脹,画像診断では左副咽頭間隙の充実性腫瘤を認めた。生検の後,口腔内より腫瘤を全摘出した。病理組織診断の結果は神経線維腫であった。乳児例であるため,神経線維腫症 1 型の鑑別診断が必要で精査を施行したが,診断基準に該当するものはなく,孤立性神経線維腫の診断であった。今後,新たな病変が出現し,神経線維腫症 1 型の診断基準に該当するようになる場合もあり,慎重な経過観察が必要と思われた。