抄録
小児 IgA 腎症における扁桃摘出術(+ステロイドパルス療法)の有効性は成人と同様に高いと考えられるが,残念ながらあまり浸透していない。その一つの理由として,扁桃と IgA 腎症の関係を証明する基礎的な背景が十分に理解されていないことが挙げられる。我々の研究結果から,IgA 腎症の扁桃では常在菌の菌体や DNA に対する過剰免疫応答が存在し,その結果,IFN–γ や BAFF(B cell activating factor)を介した扁桃 B 細胞による IgA の過剰産生とケモカイン・ケモカインレセプターを介した TCR Vβ6, CXCR3 陽性扁桃 T 細胞の腎へのホーミングが病因に関与している可能性が示唆された。これらの知見がさらに発展し,その全貌が明らかになることで,新たな治療法の開発,他科医師へのより説得力のある啓蒙の一助に繋がれば幸いである。