近年,粘膜免疫において上皮が,抗原提示経路としてより能動的な役割を果たしていることが明らかとなってきている。なかでも鼻咽腔関連リンパ組織(NALT ; nasal-associated lymphoid tissue)に代表される上気道の粘膜面は,さまざまな微生物やアレルゲンなどの抗原に常に晒されており,その上皮における粘膜免疫誘導および制御機構が,下気道や消化管粘膜と比較して特異な発達を遂げていることが指摘されているが,その詳細は未だ不明な点が多い。ここでは,口蓋扁桃,咽頭扁桃,舌根扁桃から主に形成されている NALT のうち小児期によく発達を示すことが知られている扁桃上皮について,M 細胞,樹状細胞と上皮バリアとの関係に焦点を当て,抗原提示経路としての役割について述べる。