2016 年 37 巻 3 号 p. 330-335
輪状後部静脈叢隆起は成長発達過程の乳幼児の輪状後部に認められ,啼泣時など輪状後部の静脈叢の怒張によって圧依存性に暗赤色の隆起を形成する。時に喉頭を圧排し狭窄させるため,乳幼児の哺乳障害や呼吸障害,喘鳴をきたす原因になることもある。無症状や,乳児血管腫と間違われる症例も少なくないため,頻度や病態も明らかではない。そこで我々は当科で輪状後部静脈叢隆起と診断した7例を検討した。症状は,低月齢であるほど圧迫による喉頭狭窄などを随伴し哺乳障害や呼吸障害が多く,月齢が上がると,ほとんど症状が認められなかった。鎮静下の検査では全く所見が得られず,頸部造影CT・MRIでは腫瘤の描出,造影効果は認められなかった。軟骨無形成症を合併した1例のみ,気管切開が必要となったが,7例中5例は腫瘤縮小を認め,成長と共に改善する例が多く認められたことから,治療方針の検討には留意するべきである。