2024 年 45 巻 1 号 p. 38-44
中耳真珠腫進展度分類は真珠腫に対する術式選択や術後成績との関連付けを目指して作成された分類であるが,小児後天性真珠腫に関する報告はほとんどない.そこで今回,手術加療を施行した小児後天性真珠腫症例21例21耳に対して中耳真珠腫進展分類2015改定案に基づいた進展度と術後成績について検討を行った.
基本分類における進展度と再発および聴力改善成績との間には有意な相関は認めなかった.一方,副分類では乳突部の蜂巣発育程度(MC分類)において再発を認めた症例はいずれもMC2以上の含気を認めない症例であり,発育程度が良好な症例で再発率が有意に高い結果であった.またアブミ骨病変の程度(S分類)が高度な症例で聴力判定成功率が低下する傾向が認められた.
中耳真珠腫進展度分類は基本分類だけでなく副分類の併用によってより臨床に即した分類となり,小児後天性真珠腫においても術後成績の評価に有用と考えられた.
The Japan Otological Society (JOS) staging system for middle ear cholesteatoma is a classification system that was created to select surgical methods for cholesteatoma and for correlating with postoperative outcomes. However, reports on pediatric acquired cholesteatoma are scarce. Therefore, we investigated the relationship between the degree of progression and postoperative outcomes based on the 2015 JOS staging system for middle ear cholesteatoma in 21 ears from 21 cases of pediatric acquired cholesteatoma that underwent surgical treatment at our hospital.
In the basic classification, no significant correlation was observed between the degree of progression and recurrence rate or postoperative hearing results. On the other hand, all cases in which recurrence was observed in the MC classification, which is one of the subclassifications, were cases of MC2 or higher without mastoid cell pneumatization. The recurrence rate was significantly higher in cases with a high degree of mastoid cell development. In addition, in the S classification, postoperative hearing results were significantly worse in cases with severe damages to stapes. The JOS staging system for middle ear cholesteatoma could better reflect clinical conditions by using not only basic classifications but also subclassifications. It was also considered useful for evaluating postoperative outcomes in pediatric acquired cholesteatoma.
中耳真珠腫進展度分類は2008年に弛緩部型真珠腫に対する分類として提案され1),2010年には緊張部型真珠腫へと拡大し2),後天性真珠腫の大部分をカバーする進展度分類として提唱された.その後,先天性真珠腫も病態分類の一つとして中耳真珠腫進展度分類に追加され,進展度が進むほど術後成績が悪化することが報告されている3–5).
小児が大半を占める先天性真珠腫に対し,後天性真珠腫では成人例が多く,中耳真珠腫進展度分類を用いた進展度と術後成績に関する報告は成人を主体とした報告がほとんどである.また小児では先天性真珠腫の割合が多く後天性真珠腫の症例が少ないため小児に限定した後天性真珠腫に対して進展度分類を用いて評価した報告は会議録が散見されるのみであり,論文化されたものは渉猟し得る限り一つしかない現状にある6).そこで今回,小児後天性真珠腫における中耳真珠腫進展度分類に基づいた進展度と術後成績について検討したためここに報告する.
2011年9月から2022年8月までに獨協医科大学埼玉医療センター耳鼻咽喉・頭頸部外科にて後天性真珠腫に対して単一術者が手術を施行した15歳以下の症例21例21耳を対象とした.症例の内訳は男性10例,女性11例であり,初回手術時の年齢分布は5歳から15歳(平均10.4歳),平均観察期間7年8ヶ月であった.
これらの症例に対して真珠腫の病態分類,進展度および施行された術式について集計を行った.真珠腫の病態分類は弛緩部型および緊張部型,複合型・分類不能型の三つに分類した.二次性真珠腫は病態が異なるため今回の検討からは除外した.進展度に関しては日本耳科学会が提唱する中耳真珠腫進展度分類2015改定案に基づき7),進展度(基本分類)および進展範囲であるPTAM区分,副分類である乳突部の蜂巣発育程度(MC分類),アブミ骨病変の程度(S分類)を用いて分類を行った.
また,これらの要因と術後成績である再発および聴力改善成績との関連について検討を行った.再発の評価は外来診察時の鼓膜所見,中耳CTおよびMRI所見,再手術時の術中所見を総合して判断した.計画的段階手術における再発は計画的再手術後の再発と定義し,初回手術(段階手術)から計画的再手術までの期間における再形成や遺残は再発には含めなかった.
術後の聴力改善成績に関する判定は日本耳科学会用語委員会の提唱する伝音再建後の術後聴力成績判定基準(2010)に基づき8),術後1年以降に施行した最終の純音聴力検査の結果で評価した.
施行術式に関しては小児であるため可能な限り外耳道後壁を保存する外耳道後壁保存型鼓室形成術を第一選択としたが,乳突腔天蓋が極めて低く乳突蜂巣の末梢深部まで進展している症例で計画的再手術を施行しても再発の可能性が高い症例では外耳道後壁削除・乳突開放型鼓室形成術を選択した.乳突腔天蓋が低い症例でも乳突蜂巣の深部まで真珠腫が進展せず,真珠腫上皮が遺残なく摘出できた症例では外耳道後壁再建を行い,外耳道後壁削除・乳突非開放型鼓室形成術を施行した.
患児の身体的な負担を考え,基本的には一期的手術を行う方針としているが,真珠腫上皮がアブミ骨と顔面神経の間に進展したり,乳突蜂巣の抹消にある小さい蜂巣に進展し遺残性再発を生じる可能性が高いと判断した場合は計画的再手術を施行した.
統計解析には解析ソフトとしてSPSS ver. 28.0.0.(IBM corporation, Chicago, IL, USA)を使用し,Peasonのχ2検定を手法としてp値が0.05未満の場合を統計学的有意差ありと判定した.
今回の検討に関しては倫理委員会での承認(獨協医科大学埼玉医療センター研究番号23093)を得ており,患者への十分な説明のうえ同意を得た.
病態分類別にみると弛緩部型が16例(76.2%),緊張部型が5例(23.8%)であり,弛緩部型が全体の約3/4を占めた.複合型・分類不能型は1例も見られなかった.
2.真珠腫の進展度基本分類ではStage IIIが1例(4.8%)であり,それ以外は全てStage IIであった(図1).Stage IIIの随伴病態はAO(鼓膜全面の癒着病変)であった.
P:protympanum(前鼓室),T:tympanic cavity(中・後鼓室),A:attic(上鼓室),M:mastoid(乳突洞・乳突蜂巣)
区分別による進展範囲はTAMが15例と最も多く,Stage IIで14例,Stage IIIで1例という結果であった.次いでTAが3例,PTAMが2例,AMが1例であった.緊張部型,弛緩部型ともTAMが最も多く,PTAMは弛緩部型のみであった.
乳突部の蜂巣発育程度はMC1が9例,MC2が9例,MC3が3例で,含気を認めたものはMC1の1例(MC1a),MC2の3例(MC2a)のみであり,いずれも弛緩部型であった(図2).MC0の症例は存在しなかった.
MC0:蜂巣構造がほとんど認められないもの
MC1:蜂巣構造が乳突洞周囲に限局しているもの
MC2:乳突蜂巣の発育が良好なもの
MC3:蜂巣発育が迷路周囲まで及んでいるもの
a:術前CTまたは術中所見で乳突洞や乳突蜂巣に含気を認める例
アブミ骨病変の程度はS0が3例,S1が12例,S2が6例であった(図3).S3は1例も見られなかった.S0は全て弛緩部型であり,緊張部型ではS1が1例,S2が4例とS2以上が8割を占めた.
S0:アブミ骨上部構造および周辺粘膜が正常
S1:アーチ構造は保存されているが,肉芽や真珠腫などの病巣を伴う
S2:アーチ構造は消失しているが,可動性のあるアブミ骨底を認める
S3:粘膜病変のために前庭窓窩が閉塞しアブミ骨底が剖出できない状態
術式は外耳道後壁保存型鼓室形成術が17例に対して施行されており,外耳道後壁削除・乳突開放型鼓室形成術は3例で施行された(図4).耳介軟骨を用いて外耳道後壁を再建した外耳道後壁削除・乳突非開放型鼓室形成術は1例のみ認められた.一期的手術は15例に施行され,計画的再手術は6例に施行された.計画的再手術はいずれも初回手術で外耳道後壁保存型鼓室形成術が施行された症例であった.
CWD:canal wall down tympanoplasty,CWU:canal wall up tympanoplasty,CR:canal wall reconstruction
本検討における再発症例は手術時年齢8歳が2例,10歳が1例の計3例であった.全体の再発率は14.3%であり,いずれも弛緩部型での再発であった(図5 a).緊張部型では再発を認めておらず再発率は0%であったが,弛緩部型では16例中3例において再発を認めており,再発率は18.8%という結果であった.再発様式は再形成性再発が2例であり,1例は遺残性再発であった.
a.病態別再発率 b.病態別聴力判定成功率
聴力改善成績は全体で90.5%の成功率であり,不成功例はいずれも緊張部型の症例であった(図5 b).緊張部型60%の成功率に対して弛緩部型では100%と有意に高い成功率が得られた.
5.真珠腫の進展度と術後成績基本分類ではStage IIの症例で再発を認めており,20例中3例(15%)で再発を認めた(図6 a).Stage IIIでは再発を認めなかったが,統計学的に有意差は認めなかった.区分別による進展範囲ではTAM 2例とPTAM 1例の計3例で再発を認めており,再発した症例はいずれも3区分以上であった.そこで区分数3以上と3未満で再発に違いがあるか検討したが,有意差は認めなかった(p=0.36).
a.進展度別再発率 b.進展度別聴力判定成功率
聴力改善成績はStage IIで90%,Stage IIIで100%の成功率であり,基本分類における進展度と聴力判定成功率には統計学的有意差を認めなかった(図6 b).
乳突部の蜂巣発育程度と再発率の関係をみるとMC2で9例中1例(11.1%),MC3で3例中2例(66.7%)に再発を認めており,再発を認めた症例はいずれもMC2以上の含気を認めないものであった.乳突部の発育程度が良好な症例で再発率が統計学的に有意に高いという結果であった(図7 a).
a.発育程度別再発率 b.発育程度別聴力判定成功率
乳突部の蜂巣発育程度と聴力改善成績の検討ではMC1とMC3で100%の聴力判定成功率を認めており,MC2のみ不成功例が存在し成功率は77.8%であった(図7 b).しかしながら,乳突部の蜂巣発育程度と聴力判定成功率の間には統計学的な有意差は認めなかった.
アブミ骨病変と再発率の関係ではS0で3例中1例(33.3%),S1で12例中2例(16.7%)に再発を認め,S2では1例も再発を認めなかった(図8 a).アブミ骨病変の軽度な症例で再発を認めたが,病変の程度と再発には有意な関係は認めなかった.
a.アブミ骨病変別再発率 b.アブミ骨病変別聴力判定成功率
一方,アブミ骨病変と術後聴力成績の検討ではアブミ骨病変の軽度なS0とS1は全て聴力判定成功率が100%であるのに対し,S2のみ不成功例が存在し成功率は66.7%という結果であった(図8 b).アブミ骨病変の高度な症例で聴力判定成功率が低下する傾向が認められたが,有意差は見られなかった.
6.施行術式と術後成績施行術式別に再発率をみると再発はいずれも外耳道後壁保存型鼓室形成術が施行された17例中3例に認められており,本術式における再発率は17.6%であった(図9 a).一期的手術が行われた症例で2例に再発を認め,計画的再手術では1例に再発を認めたが,統計学的に有意差は認めなかった(p=0.84).計画的再手術における再発は再形成性再発であった.
a.術式別再発率 b.術式別聴力判定成功率
施行術式と術後聴力成績においても聴力判定不成功例は外耳道後壁保存型鼓室形成術にのみ認められ,聴力判定成功率は88.2%という結果であった(図9 b).聴力改善成績に関しても一期的手術と計画的再手術の間で成功率に有意な差は認めなかった(p=0.48).
中耳真珠腫進展度分類は簡便でかつ真珠腫に対する鼓室形成術の術式選択や術後成績との関連付けができることを目指して作成された分類であり,2010年には緊張部型真珠腫にも拡大し,後天性真珠腫の大部分に対応できるようになった2).2010年の改訂に伴い,術式選択や術後経過に関わる因子として重要視されてきた乳突部の蜂巣発育やアブミ骨病変の程度についても副分類に追加され,中耳真珠腫の臨床研究により有用な分類へと進化している.さらに2015年の改訂では先天性真珠腫と二次性真珠腫が追加され,より多くの統一された病態分類と進展度分類を共有することが可能となった7).
先天性真珠腫に関しては,病態分類として先天性真珠腫が追加された中耳真珠腫進展分類2015改定案による進展度分類を用いて術後成績を統計学的に評価した論文は著者らの報告を含めた3編が認められる3–5).また,病態分類として先天性真珠腫が追加される前の論文のため進展度分類のうち副分類だけを使用したものが1編9),緊張部型真珠腫の分類で代用して評価したものが1編存在する10).先天性真珠腫に関しては中耳真珠腫進展度分類に追加されたのが比較的新しいものの症例数がある一定数は存在するため,報告が散見される.しかしながら,後天性真珠腫に関しては2010年に進展度分類が提唱されているものの小児に限定すると症例数が少ないためか,小児後天性真珠腫の術後成績に関して進展度分類を用いて評価したものは渉猟する限り1編しか報告がない6).
先天性真珠腫に関してはPotsic分類と中耳真珠腫進展度分類を用いて真珠腫の進展度と術後成績として再発と聴力改善成績に関して比較検討を行ったが,Potsic分類では進展度と再発および聴力改善成績ともに有意な相関を認めなかったものの,中耳真珠腫進展度分類では進展度と聴力改善成績には有意な相関を認めており,その有用性について以前報告した3).Miuraらの報告でも解剖学的進展度と外科的処置の選択からは中耳真珠腫進展度分類の方がPotsic分類よりも有用である点を指摘している.
このような点を踏まえ,小児後天性真珠腫でも中耳真珠腫進展度分類は術後成績を検討する上で有用であるか,その有用性について検証を行った.今回の我々の検討では基本分類としての真珠腫の進展度と術後成績である再発および聴力改善成績との間には有意な相関は認められなかった.その原因の一つとして基本分類における進展度の95%がStage IIであり,進展度の偏りが顕著であったことが考えられる.Stage Iの症例で耳漏が全く停止しない症例や耳漏を反復する症例,聴力低下が著明な症例など早期に手術適応となる症例が存在せず,また小児であるためより手術適応を慎重に検討したことなどが今回の結果に結びついたものと推察される.Stage I症例に関しては自覚症状を認めないことも多く,その場合手術を早期に行うか,自覚症状の出現もしくは病変の進展を確認してから手術を行うかは術者の考え方に影響されるため,同じような検証を行ったとしても施設間でばらつきが出ることが予想される.
宮原らは小児後天性真珠腫に対する段階的手術の第2回手術において真珠腫の遺残を28耳中13耳(46%)に認めており,真珠腫の進展範囲が3区分以上を占める症例で遺残を認める割合が有意に高かったと報告している6).今回の検討では基本分類の進展度と再発に関しては進展度が進むにつれて有意に再発が増加するという結果は得られなかったものの再発した症例はいずれも区分数が3以上であり,真珠腫がより多くの区分に進展した症例で再発しやすい傾向にある点では同様の結果であったと言える.
また,小児に限局した報告ではないが,主に成人を中心とした中耳真珠腫進展度分類と後天性真珠腫の術後成績に関しては後天性真珠腫ではstageが進むと再発や手術合併症が多くなるとする報告が多く11,12),また進展度が進むにつれ再形成性および遺残性再発ともに再発率が増加するとされている12,13).
再発に関しては基本分類では進展度と再発に有意な関係は認めなかったが,副分類である乳突部の蜂巣発育程度において再発を認めた症例はいずれもMC2以上の含気を認めない症例であり,発育程度が良好な症例で再発率が有意に高いことが明らかとなった.小児では乳突蜂巣の発育が良好な症例では深部の小さな蜂巣へ真珠腫が進展するケースもしばしば見られ,炎症によって母膜が肉芽や骨壁へ食い込むように進展し上皮の完全摘出に苦慮することも多い3,14).このような症例では段階的手術を行っても再発しやすく,他家の報告では段階的手術を選択した症例で全例が再発したとの報告もある15).また小児の真珠腫母膜は非常に薄く,ときに粘膜との区別がつきにくいため遺残を生じやすいことも知られている16).そのため乳突蜂巣の発育が良好であり,深部まで含気がなく軟部濃度陰影で充満している症例では再発のリスクが高くなる可能性があり,内視鏡を併用するなど真珠腫上皮の遺残がないよう術中の十分な観察が必要と考える.計画的再手術を行っても再発しやすいとの報告はあるものの,乳突蜂巣深部の小さな蜂巣へ真珠腫が進展するケースでは一期的手術は再発のリスクが高く,計画的再手術を選択すべきであり,その方針で我々は手術を行っている.
今回の検討では一期的手術と計画的再手術において再発率に有意差は認めなかったが,遺残性再発を防止するために計画的再手術を行ってもその後再形成性再発を来たす症例があり,術式選択の難しさを再認識させられた.
聴力改善成績に関しては弛緩部型真珠腫に比較して緊張部型真珠腫では術後の聴力改善成績が有意に悪い結果であり,緊張部型真珠腫の進展経路が影響したものと考えられる.実際にアブミ骨病変と術後聴力成績の検討ではS2のみ不成功例が存在し,アブミ骨病変の高度な症例で聴力判定成功率が有意差は認めないものの低下する傾向が認められた.この不成功例のS2症例はいずれも緊張部型であり,緊張部型は5例中4例がS2であったことを考えると緊張部型真珠腫ではアブミ骨上部構造が破壊されることが多く,必然的にIV型を選択しなくてはならないため聴力改善成績が弛緩部型よりも劣るものと推測される.
小児後天性真珠腫におけるアブミ骨病変の程度と術後聴力成績に関する過去の検討では弛緩部型および緊張部型ともに進展度が進行するにつれ聴力改善成績が低下する傾向にあることが報告されている6).とくにS2の症例では弛緩部型で5耳中3耳(60%),緊張部方では2耳中0耳(0%)が成功と判定されており,合計で7耳中3耳(42.9%)とアブミ骨上部構造が消失している症例では従来の報告どおり聴力改善は困難であることが示されている.
以上の結果をまとめると中耳真珠腫進展度分類は基本分類だけでなくMC分類やS分類などの副分類を併用することにより,より臨床に即した分類であることが今回の検討から明らかとなった.
小児の中耳真珠腫では後天性は先天性に比較して症例数が少ないため単一施設だけでの検討では症例数が十分とは言えず,今後は他機関共同研究などの大規模な研究機関による調査により中耳真珠腫進展度分類の有効性を検討し,術式選択に結び付けられるような臨床研究が必要と考える.
手術加療を施行した小児後天性真珠腫症例21例21耳に対して中耳真珠腫進展分類2015改定案に基づいた進展度と術後成績について検討を行った.真珠腫の病態分類では弛緩部型真珠腫に比較して緊張部型真珠腫では術後の聴力改善成績が有意に低下していた.
基本分類における進展度と再発および聴力改善成績との間には有意な相関は認めなかったものの副分類では乳突部の蜂巣発育程度(MC分類)において発育程度が高いほど再発率が有意に高く,アブミ骨病変の程度(S分類)が高度な症例で聴力判定成功率が低下する傾向が見られた.
中耳真珠腫進展度分類は基本分類だけでなく副分類を併用することにより,より臨床に即した分類として用いられ,術後成績の評価に有用と考えられた.
本論文の要旨は第18回日本小児耳鼻咽喉科学会学術講演会(2023年11月,別府市)において口演した.
利益相反に該当する事項:なし