抄録
この論文では近年、実践事例が蓄積されつつある農福連携について、障害者の農業分野での就労・雇
用の文脈でどのように位置づけられるのか、どのような革新を提供しうるのか、文献資料を基に明らか
にした。その結果、障害者雇用促進法と障害者総合支援法により障害者の就労支援が行われているもの
の、様々な理由により、一般雇用への転換の困難さや低い工賃などの課題を有しており、多様な支援が
模索されている現状が明らかとなった。そしてこれらの課題を解決に結びつける手がかりとして新たな
職域の拡大があげられた。業務を分解し、障害の特性に合わせた作業を担当することで多様な業務への
対応も可能となり、さらに高付加価値で労働集約的な果実栽培などとの連携が、課題解決の糸口になり
得ることが明らかになった。全面的な支援を擁する福祉的就労から、農業分野において障害者が雇用さ
れるように変化することで(狭義の農福連携)、支援を必要とする一般的就労、つまり福祉的就労から脱
却し保護雇用の段階に就労のレベルを底上げすることが可能となる潜在力を秘めていると指摘した。今
後、障害特性に合わせた個別対応が一般化すると考えられ、作業の細分化による業務の遂行が、工程の
細分化が行える農作業と適合しやすく、農福連携が福祉的就労に変化を与える可能性があるといえるだ
ろう。