2014 年 53 巻 8 号 p. 752-757
ハードウェア・イン・ザ・ループ(HiL)シミュレーションは,コントロールユニットのシステムチェックに以前からよく使用されている手法である.同手法では通常,単純な物理モデルだけで,エンジン回転数やトルクなどの主要パラメータをリアルタイムで十分正確に計算することができる.しかし,排ガス排出量や燃料消費量などの正確な定量予測は,同モデルでは不可能である.このためHiLシステムは,今までコントロールユニットの適合には非常に制約のある形でしか使用されてこなかった.
しかし,新たなモデリング法を用いることにより,僅小数の測定データに基づき,複雑なシステムを非常に正確かつリアルタイム実行可能なモデルの構築ができる.そのため,たとえば燃焼エンジン特性をモデルにより非常に効果的に描出することが可能になった.
同モデルを用いることで,従来のモデルとHiLシステムで適合を行う際にあった制約は取り払われ,HiLシステムをコントロールユニットの特性値に対する排ガス排出量などの定量予測,つまりは法が定めるエミッション規制の検証に用いることが初めて可能となった.本記事ではモデリング手法について解説するとともに,ETAS製HiLシステムLABCAR,およびモデリングソリューションASCMOを用いて実際にHiLシステムを構築し,本手法の実用性について確認した事例を紹介する.