抄録
筋固有反射系の基本的問題,すなわち,筋紡腱を介する反射ループ,および腱器官を介する反射ループの相互関係について,もっとも基礎的な制御理論的検討を行なったところ,腱器官を介する反射系は筋紡錘を介する筋長制御ループの安定性を向上させるのに役立っているという重要な結論を得た.またいわゆる第2種の筋紡錘受容器の機能的意義,およびいわゆるγ運動神経の役目についても基本的検討を行なった.前者は筋長制御系の安定性の改善に,また後者は筋長制御入力として有効に働いていることを示した.基礎的な自動制御理論の生体システムへの適用により,生理学者らの伝統的な考え方では及ばない,いくつかの結果がえられたことは,自動制御理論と生理学,生物学との結びつきがいかに有用であるかを示唆するものである.