室内環境
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総説
脳の性分化におよぼす発達期トルエン曝露の影響と作用機序
塚原 伸治中島 大介藤巻 秀和
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2010 年 13 巻 1 号 p. 1-8

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抄録
近年,胎児や小児に対する環境リスクの増大が懸念され,環境中の化学物質に対する子供の健康影響について関心が払われている。発達途上にある胎児や小児の脳は性的に分化する。発達期の精巣から分泌されたテストステロンの働きは脳の性分化にとって重要である。成人男性や成熟雄ラットの血中テストステロン濃度はトルエン曝露により低下する。我々は,発達期のラットの血中テストステロン濃度がトルエン曝露によって低下することを明らかにした。また,テストステロンレベルの低下は,精巣のテストステロン産生に関与する酵素である3β-HSDの発現量の減少が一原因であることを示した。性分化した脳には,構造の性差がみとめられる部位(性的二型核)が存在する。ラットの性的二型核の一つであるSDN-POAの体積とニューロン数は雄において雌よりも優位である。最近の我々の研究から,発達期にトルエンを曝露した成熟雄ラットのSDN-POAの体積が正常雄ラットよりも縮小していることが示唆された。本稿では,我々の研究知見をふまえて,脳の性分化におよぼす発達期トルエン曝露の影響とその作用機序について論じる。
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© 2010 一般社団法人 室内環境学会
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