車室内空気には,内装材,持ち込み物,燃焼ガスなどに起因する多様な化学物質が含まれており,健康影響が懸念されている。従来のターゲット分析では評価対象が限定され,包括的なリスク評価には限界があった。本研究では,加熱脱離ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)とポストカラム反応-水素炎イオン化検出(PR-FID)を組み合わせた定量的ノンターゲット分析(qNTA)に,
in silico毒性予測を統合したリスクスクリーニング手法を検討した。本手法は,MSによる定性情報とFIDによるメタン当量濃度を統合することで,標準試薬なしで定性・定量を同時に実施でき,未知物質の評価にも対応可能である。本手法を用いることで,トラックの車室内空気から約130種類の化学物質を定性・定量でき,Hexane(トラックA: 550* μg m
−3, トラックB: 710 μg m
−3)(*は参考値を示す),Ethyl acetate(トラック A: 560* μg m
−3, トラック B: 44 μg m
−3)などが高濃度であった。さらに,
in silico毒性予測により求めた毒性ポテンシャル(NOEL
p)と,濃度データから求めた推定ヒト曝露量からリスクポテンシャル(MOE
p)を算出したところ,Hexane(MOE
p = トラック A: 490, トラック B: 370)やButylcyclohexane(MOE
p = トラック A: 2,700, トラック B: 1,900)などが比較的リスクが懸念される物質として抽出された。
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