室内環境
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原著論文
  • ―実稼働薪ストーブの排気ガスが近隣住宅に及ぼす影響―
    宮嶋 陽司, 軸屋 一郎, 畑 光彦
    2025 年28 巻3 号 p. 209-224
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本では薪ストーブを住宅地に合法的に設置できる。薪ストーブが周囲の住宅やその周辺の大気質に与える影響を定量化するためには現実の生活環境における高時間分解能・高空間分解能な空気質の測定データが必要である。本研究では,複数個の低コストかつ小型な環境センサを用いて,住宅地における屋内外の空気質を1分の時間分解能で測定した。調査対象の住宅には24時間換気システムが設置されており外気吸気口は合法的に設置された隣家の薪ストーブの煙突から約10 m離れた場所にある。粒子状物質 (PM2.5),総揮発性有機化合物 (TVOC),CO2が65日間にわたって測定され記録された。すると2種類のPM2.5ピークが観測された。数日間にわたるブロードなPM2.5ピークと数分間程度の期間のPM2.5スパイクである。屋内外で時間分解能1分にて測定されたPM2.5スパイクの最高値はそれぞれ185 g/m3と650 g/m3であった。これらの値は瞬間値であり,世界保健機関 (WHO) が推奨する目標年間平均値10 g/m3と単純比較することはできないものの,この目標値よりも一桁以上高い値である。今回の測定では測定系を高時間・高空間分解能とすることにより,これまで日本で行われた同様の調査では見過ごされてきた,PM2.5の急上昇を特定することができた。
  • 岡崎 貴世, 後藤 菜摘, 金崎 沙椰, 田中 裕子
    2025 年28 巻3 号 p. 225-233
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,多数の人に共用される鍵盤楽器,特にピアノ鍵盤における微生物汚染の実態を明らかにし,その衛生的な使用方法を提言することを目的とした。大学の音楽施設内に設置された共用ピアノの鍵盤を対象に,ATP拭き取り検査と細菌検査を実施し,汚染状況を評価した。ATP拭き取り検査では,鍵盤の両端(低音部および高音部)で高いATP値が検出される一方,主要な演奏領域である中音域は比較的低い値を示した。しかし,夏季に実施した6台のピアノの中音域調査では,全体的に高いATP値が確認され,汚染度が高いことがわかった。細菌検査の結果,すべての鍵盤から多数の一般生菌が検出され,その多くはヒトの手指由来と考えられるブドウ球菌属であった。さらに,2台のピアノ鍵盤から黄色ブドウ球菌が検出され,健康影響のリスクが示唆された。除菌効果を検証した結果,不織布による乾拭きでも菌数は約10分の1に減少し,市販の鍵盤用クリーナーは,除菌剤配合の有無に関わらずいずれも菌数を2桁減少させる高い除菌効果を示した。以上の結果から,共用ピアノ鍵盤は潜在的な微生物伝播のリスクを有することが示された。したがって,鍵盤素材に適したクリーナーを用いた使用後の清掃励行,手指衛生の徹底,そして使用者への継続的な注意喚起と衛生意識向上が,共用楽器の衛生的利用と感染リスク低減のために重要であることが示唆された。
  • 吉田 愛美, 高野 隆好, 坂口 義弘, 金田 祥宜, 山田 哲義, 井浦 嘉和, 松岡 俊介, 阪口 雅弘
    2025 年28 巻3 号 p. 235-242
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    次亜塩素酸は強力な酸化作用を持つため,殺菌やウイルスの不活化など,様々な用途で使われている。また,次亜塩素酸は揮発すると,酸化作用を保持したまま空気中に存在できる。本研究では,気体状の次亜塩素酸がスギ花粉やそのアレルゲン(Cry j 1)を不活化する効果と,そのメカニズムを調べた。まず,Cry j 1を気体状次亜塩素酸に曝露し,ドットブロット法とサンドイッチELISAを用いてCry j 1の活性の変化を調べた。さらに,SDS-PAGEおよびLC-MS/MSを使って,Cry j 1のアミノ酸配列に生じた変化を解析した。その結果,次亜塩素酸に曝露されたCry j 1は不活化され,その原因はCry j 1のペプチド結合が不規則に分断されたためであることが分かった。また,スギ花粉を気体状次亜塩素酸に曝露したところ,花粉の機能が不活化され,アレルゲンの放出が抑制されることも明らかになった。
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