室内環境
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最新号
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表紙
原著論文
  • 藤永 遥花, 森田 洋
    2026 年29 巻2 号 p. 71-83
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,分岐型脂肪酸塩に着目し,2-ブチルオクタン酸カリウム(isoC12K)のMalassezia furfurに対する抗真菌効果および殺真菌効果を検討した。薬剤感受性試験の結果,isoC12Kは0.156 wt/v%の低濃度で最小発育阻止濃度(MIC)および最小殺真菌濃度(MFC)を示し,高い抗・殺真菌活性を有することが明らかとなった。さらに,FDA–PI二重蛍光染色法により,isoC12KがM. furfurの細胞膜機能を障害し,殺真菌的に作用する可能性が示唆された。また,isoC12Kを市販シャンプー製品と併用した試験では,単独使用では抗真菌効果を示さなかった製品においても,isoC12Kの添加で抗真菌効果が付与されることが明らかとなった。加えて,isoC12Kを洗浄成分として配合したモデルシャンプーを作製し,洗浄力および毛髪への影響を評価した結果,従来の界面活性剤であるSodium dodecyl sulfateを用いたシャンプーと同等の洗浄能力を示す一方で,毛髪表面および内部タンパク質へのダメージは低い傾向が認められた。以上の結果から,isoC12KはM. furfurに対して高い殺真菌活性を有するとともに,洗浄成分としての機能性と毛髪への低ダメージ性を兼ね備えた成分であることが示唆された。
  • 道志 智
    2026 年29 巻2 号 p. 85-96
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,吸着等温線と物質収支に基づいた新しい消臭・脱臭性能評価方法を提案する。従来の方法は初期濃度の減少率などを用いて評価していたため,空間体積や消臭剤の量を変えたときの性能予測が困難であった。提案手法は,気相中のニオイ物質の減少量と消臭剤への吸着量が等しいという物質収支と消臭剤固有の吸着等温線から平衡濃度および平衡吸着量を算出し,消臭・脱臭性能を評価する。この方法の特長は以下のとおりである。

    1. 初期濃度変化時の消臭可否の予測:特定の濃度で人がニオイを感じないレベルまで消臭できるかを予測できる

    2. 必要量の算出:嗅覚閾値濃度にするために必要な消臭剤の量を予測できる

    3. スケールアップ予測:バッグを用いた小スケールでの試験から実空間での性能を予測できる

    アンモニアと活性炭フィルターを用いた検証実験では,アンモニアの吸着がFreundlichの吸着等温式に従うことを確認した。また,本実験においては,サンプリングバッグへのアンモニアの吸着およびサンプリングバッグからのアンモニアの透過は無視できることがわかった。つまり,減少した気相中のアンモニアはすべて活性炭フィルターに吸着しているとみなすことができた。これら吸着等温線と物質収支との関係から,空間体積を変化させた条件下でも,嗅覚閾値濃度に達するために必要な試料量を正確に予測できることが実証された。この手法により,様々な条件下での消臭性能の事前予測が可能となる。
  • 中原 祐輔, 小笠原 岳, 植竹 勝治, 折原 健太郎
    2026 年29 巻2 号 p. 97-104
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    分娩豚舎における妊娠末期から授乳期の母豚の暑熱ストレスを畜舎環境面から改善するため,暑熱ストレスが発生する温度域について,生理反応を目的変数,温度指標を説明変数としたセグメント回帰分析により検索した。生理反応には直腸温度,皮膚温度および呼吸数,温度指標には気温,温湿度指数(THI)および湿球黒球温度(WBGT)を用いた。セグメント回帰分析により得られた分割点は,直腸温度では気温29.1℃,THI 79.6,WBGT 25.4℃,皮膚温度では気温17.1℃,THI 61.4,WBGT 12.4℃,呼吸数では気温22.3℃,THI 70.9,WBGT 22.1℃であった。このうち,呼吸数の分割点を暑熱ストレス注意域,直腸温度の分割点を暑熱ストレス危険域とみなした場合,分娩豚舎における母豚の暑熱ストレスの注意域は気温22.3℃以上,THI 70.9以上,WBGT 22.1℃以上,危険域は気温29.1℃以上,THI 79.6以上,WBGT 25.4℃以上と推定された。また,分娩豚舎の環境を改善するための暑熱ストレス評価指標としては,気温,相対湿度および放射熱の影響を考慮できるWBGTが有効であると考えられた。
  • 栗原 碧都, 髙橋 俊樹
    2026 年29 巻2 号 p. 105-117
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,冷房用エアコン(AC)と空気清浄機(AP)を同時に運転した際の室内環境特性および花粉・アレルゲン除去性能への影響を,独自に開発した数値流体解析ツール「CLiP」を用いて検討した。解析対象は約6畳の居室空間とし,ACとAPの相対距離が異なる6通りの配置条件について非定常CFD解析を実施した。

    解析の結果,空調機器間の設置距離が室内の循環効率および温度分布の均一性に影響を及ぼすことが明らかとなった。ACとAPを遠方に配置した分散配置では,床上付近で0.67~0.69 m⁄sの高い流速が維持されたのに対し,両機器が近接する配置では吹出気流の直接的な干渉により流速が約12 %低下した。特に,AC直下にAPを設置した配置では,吹出気流同士の正面衝突によって床上流速が約0.35 m⁄s(分散配置比で47~49 %減)まで減少し,室内上部の撹拌停滞と冷却効率の低下を招くことが定量的に示された。

    粒子除去においては,対象とした花粉粒子の見かけ密度が小さい(140 kg⁄m3)ため,重力沈降の影響は限定的であり,気流による搬送効果が支配的であることが判明した。その結果,解析中の床面や壁面への沈着率は約8~10 %と低く抑えられ,大半の粒子が気流に追従して輸送された。花粉の捕集率は,APを分散配置した配置で最大(約64 %)となり,気流干渉が最も強い配置でも約56 %の捕集率が維持された。アレルゲン微粒子についても同様に約64~67 %の高い捕集率が得られ,両粒子ともに気流干渉による極端な性能低下は見られなかった。

    以上の結果から,冷房時の快適性と空気清浄をより高いレベルで両立するには,機器間の気流干渉を最小化し,室内全体の循環を促進する配置設計を行うことが推奨される。

短報
  • 大嶋 直浩, 内山 奈穂子, 酒井 信夫
    2026 年29 巻2 号 p. 119-126
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「室内空気中化学物質の測定マニュアル(統合版)」は,室内空気中化学物質の濃度を室内空気濃度指針値と比較して評価するための標準的な測定手法を定めたものである。測定マニュアルにおいて室内空気の試料採取方法の一つとして規定されている「平常実態把握法」は,実際の生活環境における化学物質の存在量把握を目的に策定され,日常生活を営みながら室内空気を24時間採取することが求められている。しかしながら,室内空気中の化学物質濃度を実態に即して正確に評価するためには,時間帯により濃度が変動する放散特性を化学物質ごとに把握した上で,それに応じた採取時間の妥当性を検証する必要がある。本研究は,室内空気中化学物質の放散特性の違いを踏まえ,平常実態把握法に規定される24時間採取の妥当性を,標準試験法(24時間採取)と分割採取法(4時間×6回)の並行同時採取による実測データに基づいて,3軒の一般居住住宅で検証した。その結果,TVOCおよび個別VOCにおいて両手法の量的整合性は一致した。化学物質の放散特性は定常型,瞬時型及び混合型に大別され,定常型VOCに関しては4時間採取においても代表値として一定の評価は可能と考えられた。他方,瞬時型および混合型VOCでは,TVOCと同様に日内変動が大きく,24時間採取により時間変動が平均化された。以上より,多様な放散特性を有するVOCの室内空気中濃度を単回採取で包括的に評価できる手法として,標準試験法に基づく24時間採取は妥当であることが確認された。
総説
  • 松村 年郎, 青柳 玲児, 下中 洋一
    2026 年29 巻2 号 p. 127-147
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル 認証あり
    癌による死亡を低減するため癌の早期診断が叫ばれている。1980年代後半からの微量成分分析の進展により,健常者と癌患者間の呼気中の揮発性有機化合物(Volatile organic compounds, VOCs)の成分量が異なることが判明し,呼気による癌の早期診断の期待が高まっている。本稿では,癌及び呼気中VOCsの癌バイオマーカーの発生機構,呼気VOCs測定法,及び評価事例について整理した。呼気VOCsは主にガスクロマトグラフ質量分析法により測定されるが,近年はソフトイオン化等の原理を利用した測定も増えている。測定された個々のVOCsは様々な統計的手法により評価されバイオマーカーとして特定される。各種の癌に共通のバイオマーカーとして脂肪族・芳香族炭化水素及びアルデヒドが特定され,その他のVOCsも特定されている。最近はセンサアレイや電子鼻システムを活用した研究も進められ,物質を特定せず複数のセンサの応答パターンについて健常者との違いを解析して癌の有無を識別し,有用な成果が得られ一部は実用化されている。これらの研究の更なる進展により,呼気分析が従来の診断に代わる癌の早期診断法として確立されることが期待されている。
解説
  • 吉永 淳, 小栗 朋子
    2026 年29 巻2 号 p. 149-154
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル 認証あり
    小児の健康リスクの評価・管理の目安となるハウスダスト中微量元素類の濃度を推定する試みを行った。12種の微量元素(V, Cr, Mn, Ni, 無機As, Se, Sr, Mo, Ag, Cd, Sb, Ba)それぞれについて,耐容一日摂取量から,文献値をもとに推定した食物および飲料水と土壌それぞれからの上限摂取量(95パーセンタイル値あるいは最大値)を差し引いた値を,US EPAのデフォルト上限ダスト摂食量(100 mg/日)で除した濃度を「許容上限濃度」として求めた。 無機As, Se, Mo, Cdは食物および飲料水からの摂取量の上限値が既に耐容一日摂取量を超過していたために「許容上限濃度」を求めることができなかった。算出可能だった「許容上限濃度」は,V (9.4×102 µg/g 以下単位同じ), Cr (4.5×103), Mn (1.9×102), Ni (1.6×103), Sr (6.8×104), Ag (9.0×102), Sb (50), Ba (3.1×104) であった。これらと日本家屋のハウスダスト中実測濃度の95パーセンタイル値と比較すると,Mnのみが「許容上限濃度」を超過し,またSbとNiの95パーセンタイル値が「許容上限濃度」の1/10を超えていたために,これらの微量元素のハウスダスト中濃度に注意を払う対象であることが示唆された。
  • 村田 真一郎
    2026 年29 巻2 号 p. 155-161
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/01
    ジャーナル 認証あり
    トレーサーガス法は,一般住宅などの建築空間における換気回数測定法として確立されてきたが,その汎用性の高さから,近年では建築物に限らず,衣類,靴,家庭用冷蔵庫などの比較的小規模な空間へも応用されている。従来,これら小規模空間の換気回数は主として製品性能評価の指標として利用されてきた。しかしながら,小規模空間は臭気物質や揮発性化合物の発生・滞留・放散の場ともなり得ることから,換気回数はそれらの挙動を理解する上で重要な環境指標となる可能性がある。本稿では,トレーサーガス法を用いて小規模空間の換気回数を測定した既往研究を整理・解説するとともに,小規模空間の換気特性を把握する意義および室内環境分野への応用可能性について考察する。
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