2012 年 15 巻 2 号 p. 135-145
たばこ煙および臭気除去を目的として開発された空気清浄装置(開発装置)を備えた喫煙ブースを模擬オフィス内に設置し,開発装置によるたばこ煙処理空気を模擬オフィスに排出した際の,オフィス空間の空気質に及ぼす影響を評価した。評価は,喫煙ブース内で開発装置を稼働させ8本のたばこを連続的に同時燃焼し,オフィス空間の複数点においてたばこ煙成分濃度を測定した。その結果,各測定点におけるたばこ煙成分濃度は,たばこ燃焼前に比べて大きな変化は見られず,開発装置を備えた喫煙ブースの十分な分煙効果が認められた。ただし,開発装置で除去できない一酸化炭素(CO)は,たばこ煙発生に伴い開発装置吹出口の濃度が上昇したが,オフィス空間ではオフィス換気設備の稼働により速やかに低減した。次にオフィス換気の排気口をオフィス後部に設置した場合と開発装置吹出口の直上に設置した場合の2パターンで換気を行い,オフィス空間の評価物質濃度分布を調査したところ,両者で大きな差異は認められなかった。したがって,オフィス空間の気積に対し十分な換気量があれば,オフィス空間内の評価物質濃度は,室内濃度指針値等の基準値以下まで低減し,濃度分布も生じないことが示された。また,この結果と数値流体動力学(CFD)による解析結果とはよく一致したことから,開発装置を備えた喫煙ブースの導入前に非喫煙空間に及ぼす影響を推定することが可能であると考えられた。