抄録
本研究は,自然素材と工業化建材を用いた実験住宅を建設し,ホルムアルデヒド吸着による室内濃度低減効果および施工段階別の化学物質濃度測定による原因特定の可能性を検討した。自然素材を特徴とする内装建材と工業化された建材を持つ実験住宅を建設し,ホルムアルデヒド濃度(DNPH-HPLC法)とVOC濃度(固相吸着-GC-MS分析)を施工段階別および1年間経過後までの期間に渡って測定した。
その結果,ホルムアルデヒドは,断熱材内部から気密層に生じた隙間を通り室内への流入が見られた。これから気密層の外側に位置している材料からの汚染物質放散量を確認することが必要であり,従来考慮してこなかった外壁裏面等に用いられる材料に関しても放散量を確認する必要がある。またTVOC濃度は,壁施工後および床板施工後に濃度が上昇し,その後,比較的長期間高い濃度が維持された。工法の乾式化が進む中,現場で使用する塗料・接着剤といった蒸散支配型建材に加え,自然素材系建材である左官材に混入されている化学物質への配慮が重要である。また,空気汚染源の特定には施工段階別の空気質測定(特に塗料や接着剤を用いる湿式工事を行った後の測定)を行い,その結果を用いて養生期間を設定することが望ましいことが分かった。