抄録
大阪近郊において,69軒の一般家庭のハウスダストを2011~2015年に採取し,含まれる殺虫剤6種類を分析し,これまでの調査と比較検討した。電気掃除機で収集したハウスダストは,アセトンによる超音波抽出後,有機リン剤のクロルピリホス,ダイアジノン,フェニトロチオンはFPD-GCで,有機塩素剤のS-421とパラジクロロベンゼン,ピレスロイド剤のペルメトリンはシリカゲルカラムで精製後,ECD-GCで分析した。クロルピリホスの検出頻度は24/60で,最高値(0.48 μg/g)と平均値(0.026 μg/g)からは,1995年(平均値0.72 μg/g)と2001年(平均値1.22 μg/g)の調査より濃度が1桁~2桁減少していることがわかった。2003年以前にシロアリ防除処理を行った家屋においてクロルピリホス汚染が高頻度にみられた。ダイアジノンは69例全てから検出されなかった。フェニトロチオン濃度の平均値は減少したが,検出頻度(41/69)はこれまでの調査と同じであった。ペルメトリンの検出頻度(31/36)は高く,最高値(13 μg/g),平均値(1.7 μg/g),中央値(0.36 μg/g)とも分析した薬剤の中では最も高濃度であった。S-421の検出頻度(63/69)は高いが,平均値は0.057 μg/gと1995年(平均値2.06 μg/g),2001年(平均値0.54 μg/g)調査より減少した。パラジクロロベンゼンの検出頻度(31/38)は高く,これまでの我々の調査にない高値(9.6 μg/g,7.0 μg/g)が検出された。