総合危機管理
Online ISSN : 2432-8731
食品産地偽装問題の危機管理に関する実証研究
伊永 隆史
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2017 年 1 巻 p. 3-12

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抄録
2006 年以降わが国で顕在化した食品の産地偽装問題に対して科学的検証が不十分であったため、食品産地偽装の危機管理において国民や消費者の信頼感が一部損なわれた。著者らは先端的高機能を持つ同位体比質量分析装置をコメ試料の軽元素(炭素、窒素、酸素、水素、硫黄)の安定同位体比微小変化の精密分析に適用し、生育環境(産地)のトレーサビリティ応用研究の基礎的分野において画期的成果を上げ、農林水産省の補助を得て研究推進した。その結果、農産物・食品等の産地鑑定が可能なことを見いだし2008 年公表した。日本でも国民生活上重要な食の安全性や産地表示の信頼性を追究するために、農産物の生育履歴や産地情報のトレーサビリティ研究によって食品危機管理を可能にする、食品産地の鑑定研究の新展開が脚光を浴びる根拠を実証した。本研究を通じ、農林水産・畜産業をはじめ医療・健康、工業、環境分野などへも安定同位体比研究の発展可能性が展望された。
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© 2017 総合危機管理学会
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