抄録
近年ニュース等でFinTech という言葉がしばしば聞かれるようになった。これは、AI などの新しい情報技
術によって、新しい価値やサービスを創出する取り組みのことを指し、資産管理・家計管理、送金・決済、投資、保険などで活用されている。これらの新技術に基づくサービスは非常に利便性の高いものであるが、一方でそれらに対して不安を感じる市民も少なくない。本稿では、人間のリスク認知や信頼感構築に関する心理学的なトピックをとりあげ、経済技術の受容という観点よりの検討を行った。新技術の受容において基盤となるものの一つがリスク認知に関する問題である。一般市民のリスク認知の要因は、個人側の要因、環境側の要因、リスク対象側の要因に分類することができるが、特にリスク対象側の要因における2因子モデル(Slovic,1986)を中心に取り上げて、市民のリスク認知の問題について述べた。さらに、新技術に対する一般市民の信頼感という観点から、技術主体・管理主体への信頼感が科学技術や政策の受容において重要であることをとりあげ、信頼感を得るために必要な要素について述べた。これらの問題を踏まえ、経済技術をより一般的なものとして普及させるための課題についての議論を行った。