抄録
74歳の男性。10年ほど前より左乳輪に一致して茶褐色斑が出現し徐々に拡大してきたと訴えがあった。ボーエン病などを疑い皮膚生検を行ったが診断がつかず,茶褐色斑の辺縁より5mm離して切除した。切除標本では表皮内に明るい細胞質を持つ異型細胞が胞巣状に浸潤していた。また表皮内にはメラニン顆粒の集積増が散在してみられた。胞巣状の腫瘍細胞はCK-7とCEAが強陽性,S-100蛋白HMB-45は陰性でパジェット病と診断した。切除断端は陰性で周囲10cmのMapping biopsyでも陰性であったため,前回の手術創から3cm離して大胸筋膜上で拡大切除し,術後放射線治療を行った。茶褐色斑病変部の周囲には白斑も認められ興味深かった。