抄録
84歳女性。4年前に有棘細胞癌の切除後に左の鼠径部から右前頭部に移植された皮膚表面に褐色乳頭状隆起する結節が多発。病理組織学的に脂漏性角化症。植皮部の辺縁から生じた病変は急速に中央に向かって進展, 融合した。有棘細胞癌切除時の臨床, 病理組織像を検討したところ, 脂漏性角化症内より発生した有棘細胞癌であり, 切除された組織像と植皮部に再発したそれとは類似 (clonal type) していた。採皮部の左鼠径部にはその後脂漏性角化症の発生を認めず, 植皮上に多発する特異な臨床像は, 植皮側である右側頭部の局所要因によってもたらされたと考えた。