56歳,女性。約10年前から臍部周囲に紅斑があったが,放置していた。左中足骨骨折の際に受診した整形外科にて臍部腫瘤を指摘され,当科紹介受診となった。初診時臍部周囲に 12×14.5cmの紅斑を認め,臍部に 2.4×3.2cm大の紅色腫瘤を認めた。外陰部,腋窩,肛門周囲に視診上明らかな異常所見は認めなかった。臍部周囲の紅斑と腫瘤から皮膚生検を施行し,臍部に単発した乳房外Paget 病と診断した。CT にてリンパ節転移や臓器転移は認めず,全身麻酔下で腫瘍切除術を施行した。現在,術後 2 年が経過しているが,局所再発や転移は認めていない。臍部に発生した乳房外Paget 病の報告は少なく,本邦では過去に12例報告されているが,このうち臍部に単発した症例は 4 例である。 (皮膚の科学,19 : 1-6, 2020)