皮膚の科学
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Dr.村田の Clinico-pathological notes
  • 村田 洋三
    2025 年24 巻2 号 p. 109-145
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    (背景)現在,“Pemphigus” は日本語で「天疱瘡」と呼ぶことに慣れ親しんでいるが,この用語の来歴は知られていない。 (目的と方法)この命名の過程を解明するために,中国・日本の古書を検討した。主に医学関係の211冊において,「天疱瘡」や「天泡瘡」あるいは類似の病名の記載の有無,そして,記述内容をチェックした。 (結果)○1 「天疱瘡」の初出は,1347年の『丹溪心法』であり,皮膚糜爛をきたす疾患を示している。こうした意味での「天疱瘡」記載は,その後も清朝中国まで続いている。○2 しかし,その中で “Syphilis” が中国に伝搬し,1513年の『嶺南衛生方』には「楊梅瘡」,「木棉疔」が初出し,同時に「天疱瘡」も並記された。以後,「天疱瘡」は “Syphilis” を意味する用語としても用いられることになる。○3 その後 “Syphilis” に対しては「黴毒」が用いられる様になり,「楊梅瘡」は用いられなくなる。それにつれて「天疱瘡」は “Syphilis” を指すことがなくなった。○4 丁度その頃に,緒方洪庵がドイツの内科書をオランダ語版から重訳したが,この時 “Pemphigus” を「天泡瘡」と翻訳した。それ以前には,“Pemphigus” という病名が日本にも中国にも伝わることはなかった。○5 以上から,“Pemphigus” の翻訳語として「天疱瘡」を用いたのは,緒方洪庵が最初であると言える。(皮膚の科学,24 : 109-145, 2025)

研究
  • 羽田野 詩乃, 大嶋 雄一郎, 渡邉 大輔
    2025 年24 巻2 号 p. 146-151
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    難治性帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia ; PHN)に対するミロガバリンの臨床的有用性および安全性を検証した。研究対象は PHN を認める32∼95歳の24名である。ミロガバリン内服2週後から平均痛み Visual Analogue Scale(VAS)および平均 Dermatology Life Quality Index(DLQI)の有意な低下を認め,12週後まで維持することができた。治療満足度は,内服前は過半数が満足を得ていなかったが,最終診察時には約9割が満足を得ることができた。投与量は 30 mg/日まで増量することなく 15∼20 mg/日と比較的少量でも治療効果が得られた。ミロガバリンは難治性 PHN に対して治療選択肢の一つになり得ることが示唆された。研究対象の約63%が70歳以上と高齢者であったが,24例中22例(91.7%)で治療を継続することができた。ミロガバリンの認容性は比較的高く,副作用のために既存薬の増量が困難で難治性の PHN 患者にも投与しやすいと考える。(皮膚の科学,24 : 146-151, 2025)

症例
  • 山科 茉由, 北嶋 友紀, 四十万谷 貴子, 寺井 沙也加, 中丸 聖, 槇村 馨, 清原 隆宏
    2025 年24 巻2 号 p. 152-156
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    49歳,女性。不明熱と関節痛により血管内リンパ腫を疑われ,ランダム皮膚生検を目的に当科紹介となった。初診時,上腹部に持続性,手拳大で不整形の暗赤色局面および丘疹を認めた。病理組織学的に,角層内や表皮上層に個別性あるいは集簇性の角化細胞壊死がみられ,真皮浅層に血管周囲性の好中球およびリンパ球浸潤を伴っており,成人 Still 病の非特異的な持続性皮疹に合致する所見と考えた。抗核抗体陰性,好中球優位の白血球増加,フェリチン高値で,成人 Still 病の確定診断に至った。肝機能障害を伴い,治療に苦慮した。角層内あるいは表皮上層の個別性あるいは集簇性の個細胞壊死と真皮の好中球浸潤は,成人 Still 病の非特異疹における特徴的な病理所見であり,皮膚科医として認識すべきである。(皮膚の科学,24 : 152-156, 2025)

  • 宇田 絵美, 大迫 彩乃, 角田 佳純, 猿喰 浩子
    2025 年24 巻2 号 p. 157-161
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    56歳,男性。体幹四肢の紅斑,水疱を主訴に当科を紹介されて受診した。皮膚生検を施行し,表皮基底部に線状にIgA 沈着を認め,線状 IgA 水疱性皮膚症と診断し,ジアフェニルスルホンの内服を開始した。ジアフェニルスルホンの内服開始後も新生水疱の出現がみられ,プレドニゾロン内服を追加するため当科へ入院した。入院中,悪性腫瘍の検索目的に胸腹部 CT,上下部内視鏡検査を施行したところ,直腸の血管透過性の消失を認めたが潰瘍性大腸炎の典型的な所見とはいい難く確定診断には至らなかった。プレドニゾロン内服治療を導入し皮疹は一旦軽快したが,プレドニゾロンを減量中に血便の増悪,皮疹の悪化を認めた。再度下部内視鏡検査を施行したところ,潰瘍性大腸炎と診断された。潰瘍性大腸炎の治療を開始した後,皮疹も消退傾向を認めた。線状 IgA 水疱性皮膚症は潰瘍性大腸炎との関連が指摘されているが,潰瘍性大腸炎が先行して発症することが多い。本症例は線状 IgA 水疱性皮膚症が先行しており,理由として内視鏡検査施行前にプレドニゾロンが開始されていたため,症状がマスクされたことで確定診断に至らなかったと考えた。(皮膚の科学,24 : 157-161, 2025)

  • 川端 公貴, 西山 幸佑, 国本 佳代, 山本 有紀, 村田 晋一, 吉田 朗彦, 神人 正寿
    2025 年24 巻2 号 p. 162-167
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は19歳,女性。初診7年前に出現した左後頭部の小指頭大の皮下結節が徐々に大きくなったために当院に紹介となった。当科初診時,左後頭部に 3×3×3 cm 大の表面が常色で一部暗赤色の可動性の乏しい皮下腫瘤を呈した。病理組織学的には真皮から皮下にかけて多結節性に類上皮細胞・紡錘形細胞の増殖,リンパ濾胞を伴うリンパ球浸潤,赤血球を含む多数の空隙,そして結節周囲の線維性増殖を特徴とした。免疫組織化学染色では CD99,CD68,EMA および desmin が陽性であったが,CD34 は陰性であった。fluorescence in situ hybridization 法にて EWSR1-CREB1 遺伝子再構成を認め angiomatoid fibrous histiocytoma と診断した。Angiomatoid fibrous histiocytoma は稀な皮膚腫瘍であり,以前は aneurysmal fibrous histiocytoma と関連した病態と考えられていたが現在前者は中間群として区別されるようになった。本腫瘍の確定診断における遺伝学的検査の有用性を示唆する症例であると考えられた。(皮膚の科学,24 : 162-167, 2025)

  • 岡本 千明, 小林 里佳, 藤本 友紀, 伊藤 眞未, 寺井 沙也加, 槇村 馨, 鈴木 健司, 清原 隆宏
    2025 年24 巻2 号 p. 168-174
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    61歳男性。12年前から左第1趾に黒色斑を自覚していた。徐々に増大し,中央部に結節を認めるようになった。ダーモスコピーにて皮丘優位パターンがみられ,生検により肢端黒色腫と診断した。患趾温存のうえ全摘出し,後日植皮術を施行した。Stage IIB(pT4aN0M0)と判断し,術後補助療法としてペムブロリズマブ1回 200 mg,3週間間隔で投与を開始した。2クール目投与後に両下腿に痒みを自覚し,その後も継続していた。6クール目投与時には体幹四肢に不整形の紫紅色丘疹が多発し,下腿や足部では融合して,局面を呈していた。ダーモスコピーでは粗大な分枝状白色線条構造がみられた。皮膚生検では表皮は不規則に肥厚し,表皮突起は鋸歯状に延長していた。顆粒層は肥厚し,シバット小体が散在し,基底層の液状変性がみられた。真皮浅層に帯状の稠密な炎症細胞浸潤を認めた。扁平苔癬と診断し,副腎皮質ステロイド剤内服にて治癒した。結果として,ペムブロリズマブによる18クールの術後補助療法は完遂できた。自験例では被疑薬であるアムロジピンを中止することなく皮疹が改善したことから,ペムブロリズマブそのものによる薬疹と考えた。ペムブロリズマブによる扁平苔癬の出現の意義は明らかではないが,適切な irAE マネジメントにより原疾患の治療を継続させることの重要性が認識された。(皮膚の科学,24 : 168-174, 2025)

  • 木村 恭子, 大郷 真理子, 谷川 絢乃, 新川 衣里子, 錦織 千佳子, 久保 亮治, 福本 毅
    2025 年24 巻2 号 p. 175-181
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    44歳,女性。約10年前に卵巣腫瘍を腹腔鏡下に摘出されている。初診の約11ヶ月前に臍部の茶褐色の丘疹に気づき,前医で生検が行われ瘢痕と診断された。しかしその後に,生検創の周辺部に,月経前に増大し月経期間に腫脹と疼痛を伴う結節が出現し拡大してきたため,当科に紹介された。当科初診時は,臍部に約 11×10×4 mm の球状に隆起する,暗赤色∼黒色の広基性の結節を認めた。腹部 MRI では,臍部に 21 mm 大の境界明瞭な結節を認め,T1 画像で低信号,内部に点状の高信号を,T2 脂肪抑制画像で不均一な高信号を認めた。全身麻酔下に全摘術を施行し,腫瘍は筋鞘や腹膜などとの癒着は認めなかった。病理組織学的に真皮から皮下組織にかけて膠原線維が増生し,その中に大小様々な管腔構造を多数認めた。管腔壁は子宮内膜腺様の断頭分泌を伴った円柱上皮から構成され,管腔内には淡紅色の無構造物質を認めた。管腔周囲には内膜間質の増殖を認め,細胞異型は認めなかった。ER,PgR が管腔構造に陽性,CD10 が内膜間質に陽性を示した。以上より臍部子宮内膜症と診断した。臍部子宮内膜症は比較的稀であり,多くは月経周期に一致した疼痛などの症状を認めるが,無症状の場合もある。また中には稀に悪性化する例も報告されており,早期発見による速やかな治療が重要である。(皮膚の科学,24 : 175-181, 2025)

  • 永田 卓也, 山田 昌弘, 力武 里菜, 古田 未征, 藤本 徳毅
    2025 年24 巻2 号 p. 182-186
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    45歳,女性。約20年前から右前腕に弾性硬の皮下結節が出現し,次第に増大したため近医を受診,精査加療目的で紹介となった。初診時,表面平滑で茶褐色の径 15×10 mm の下床と可動性良好な皮下結節を認めた。部分生検を行い,外毛根鞘性嚢腫を疑ったが全体像の把握が困難であったため,局所麻酔下に全摘出し,病理組織学的に増殖性外毛根鞘性腫瘍(proliferating trichilemmal tumor : PTT)と診断した。PTT は主に女性の頭部に生じる稀な皮膚腫瘍の一つであり,上肢に生じた PTT の報告例は非常に稀であった。PTT の多くは良性の経過をたどるとされているが,再発や悪性化の可能性もあり,前癌病変として扱われるべきという指摘も多い。PTT の発症や悪性化の機序は解明されておらず,定められたガイドラインも確立されていないため,病態解明には今後も多くの症例の集積が必要である。(皮膚の科学,24 : 182-186, 2025)

  • 力武 里菜, 永田 卓也, 古田 未征
    2025 年24 巻2 号 p. 187-191
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    当院で約10年間に経験したマムシ咬傷26例の臨床症状などに関して検討した。抗毒素血清を投与した症例は8例,投与しなかった症例は18例であった。マムシ咬傷では,症状が重症であるほど CK 値の増加速度が速くなると考えられているが,自験例で早期に抗毒素血清を投与した症例では著明な CK 値の上昇はみられず,抗毒素血清投与により毒素の拡散を抑えられることが示唆された。また,抗毒素血清を投与しなかった症例の一部で複視等の眼症状が出現し,CK 値の著明な上昇がみられたが,集中治療を要する臓器障害が生じた症例はなかった。しかし,入院後に腫脹が悪化した症例が多く,アレルギーの症状出現に注意しつつ,早期の抗毒素血清の投与を積極的に検討してもよかったと考える。マムシ咬傷の治療法については多くの議論が交わされているが,いまだに確立された方法が定まっていない。初診時の臨床所見や検査データのみで重症度を予測することはしばしば困難であるが,自験例において,受傷から1時間程度グレードⅠのままであれば重症化しない傾向があり,重症度予測の指標の一つになり得ると考えた。一般的にグレードⅢ以上で抗毒素血清の投与が推奨されているが,アナフィラキシー等の副作用が懸念されており,抗毒素血清投与を行うべきかどうかは各症例の経過を慎重に観察しながら総合的に判断する必要があると考える。(皮膚の科学,24 : 187-191, 2025)

  • 澤田 栞, 夏秋 優, 村田 光麻, 金澤 伸雄
    2025 年24 巻2 号 p. 192-197
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    症例はミツバチ刺症歴のある74歳の女性。庭で竹箒を触った際に,ハチに手指を刺されたが,疼痛は約30分で治まり,全身状態に問題はなかった。刺された翌日に当科を受診した際には手指に淡い紅斑を認めた。持参したハチはタイワンタケクマバチ雌と同定した。竹箒には本種が営巣していた穴を認めた。初診時の血液検査ではミツバチ特異的 IgE はクラス0だったが,その1ヶ月後にはクラス2に上昇していたことから,今回の刺症でミツバチ特異的 IgE の産生が刺激されたと思われた。タイワンタケクマバチは枯れた竹の中に営巣する外来種のハチであるが,近年国内での分布が拡大中で,東海・近畿地方を中心に関東から中国地方まで広く分布し,市街地でも見られる。本種に刺されるとアナフィラキシーを生じる可能性もあるので,竹製品を扱う際には本種に注意を要する。(皮膚の科学,24 : 192-197, 2025)

  • 浅田 春季, 加藤 威, 塚本 雄大, 前田 泰広, 中西 健史, 藤本 徳毅
    2025 年24 巻2 号 p. 198-203
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    56歳,男性。初診の10年程前に左前腕の皮下結節に気づいた。左前腕橈側遠位に 10 mm 大のわずかに隆起した著明な圧痛を伴う皮下結節を認めた。外科的に腫瘍を摘出し,術直後より圧痛は消失した。病理組織学的に類円形の核と好酸性の細胞質を有するグロムス細胞が密に増殖しており,グロムス腫瘍と診断した。単発性グロムス腫瘍の発生部位に関しては,爪下に生じることが多く,その他の部位に生じることはまれであり,過去の報告例の検討から,上肢40%,下肢26%,躯幹20%の順に多い。自験例は病理組織学的に,グロムス細胞の増殖が主体の glomus tumor proper と拡張した血管の増殖したglomangioma の2種類の組織から成り立っており,混合型に分類される比較的まれな症例であった。爪下以外のグロムス腫瘍は頻度がまれであるため,しばしば臨床的に見過ごされており,時に誤診される可能性がある。グロムス腫瘍の補助診断としては MRI 検査が有用であり,手指以外でも皮下軟部組織に疼痛を認めた場合は,積極的に画像検査を行うことが重要である。(皮膚の科学,24 : 198-203, 2025)

  • 金 晴惠, 植村 彩記, 浦上 貴弘, 岡本 千明, 小林 里佳, 津田 真里, 四十万谷 貴子, 寺井 沙也加, 槇村 馨, 鈴木 健司, ...
    2025 年24 巻2 号 p. 204-210
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/03
    ジャーナル 認証あり

    63歳,女性。当科初診の約9ヶ月前から左耳前部に弾性硬の皮下腫瘤を自覚し,徐々に増大してきた。MRI で左耳下腺浅葉付近に腫瘤性病変を認め,部分生検を施行したが確定診断に至らず,全摘出術を施行した。術中所見では,耳下腺浅葉内に被膜を伴う腫瘤性病変を認めた。病理組織像では,腫瘍細胞が管状構造および二層性の腺腔構造を形成し,一部に篩状構造,神経周囲浸潤を認めた。免疫組織化学染色では腺腔側細胞に EMA,C-kit 陽性,腺腔外側細胞に α-SMA,calponin 陽性で,Ki-67 index 20%以上であった。MYB 遺伝子再構成を確認した。以上より,唾液腺原発腺様嚢胞癌と診断した。腺様嚢胞癌は比較的稀な悪性腫瘍であり,皮膚原発性は比較的予後良好であるが,唾液腺原発性は一般的に予後不良である。唾液腺原発腺様嚢胞癌においては,長期間の経過観察が望ましい。(皮膚の科学,24 : 204-210, 2025)

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