皮膚の科学
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症例
  • 沼田 礼良 , 大塚 俊宏 , 森脇 真一
    2023 年 22 巻 4 号 p. 276-280
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    42歳,女性。半年前より左外陰部に腫瘤を自覚し,徐々に増大傾向となった。初診時,左外陰部に5cm大,下床との癒着のない,皮膚表面に軽度の発赤を伴う皮下腫瘤を認めた。MRI では T1 強調像で筋と等信号の領域を主体とし,内部に一部で高信号を呈し,脂肪抑制像で低信号となる部位が混在していた。病理組織学的には,成熟脂肪細胞,膠原線維,CD34 陽性の紡錘形細胞の増生を認め,紡錘形細胞脂肪腫(Spindle cell lipoma,以下 SCL)と診断した。SCL は中高年男性の項部,背部,肩に好発する脂肪腫の一亜型であるが,自験例のような女性の外陰部の発症例は本邦皮膚科領域においては報告がなく,大変希少であると考えられた。外陰部の皮下腫瘤を見た場合は本疾患も鑑別に挙げる必要がある。 (皮膚の科学,22 : 276-280, 2023)

  • 宇田 絵美 , 曽我 りか子 , 角田 佳純 , 猿喰 浩子 , 米井 辰一
    2023 年 22 巻 4 号 p. 281-285
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    50歳男性,糖尿病性腎症に対して生体腎移植後,免疫抑制薬内服管理中に COVID-19 を発症した。 重症化し人工呼吸器管理となったがその後症状改善し,紹介元に転院となった。転院時より右頬部発赤,腫脹,熱感がみられた。CT で右急性副鼻腔炎からの炎症波及による右頬部蜂窩織炎の診断で副鼻腔手術目的に当院耳鼻科へ紹介された。抗菌薬治療に不応であり当科紹介受診となった。また,副鼻腔術後に左片麻痺が出現した。発症不明の脳梗塞として加療されていたが,副鼻腔および皮膚生検組織よりムコールが検出され,脳梗塞とあわせて鼻脳型ムコール症と診断された。アムホテリシンB 投与にて炎症反応は低下したが,脳梗塞域は拡大し,発症約 1 ヶ月後に永眠された。免疫抑制状態のある患者においては本症を念頭におき,積極的に皮膚生検を行うべきである。 (皮膚の科学,22 : 281-285, 2023)

  • 北尾 陸将 , 小倉 香奈子 , 塩入 桃子 , 長尾 愛 , 望月 亮佐 , 田井 志正 , 長野 徹
    2023 年 22 巻 4 号 p. 286-291
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    80歳,男性。併存疾患に尿路上皮癌, 2 型糖尿病,慢性腎不全あり。全身性の瘙痒を伴う緊満性水疱を主訴に当院を受診した。病理学的組織検査,蛍光抗体法,抗 BP180 抗体陽性により水疱性類天疱瘡(BP)と確定診断した。皮疹の重症度分類が重症であったため,ステロイドパルス療法を施行後,プレドニゾロン(PSL60 mg/日の内服を開始した。また,担癌患者で免疫抑制薬使用が敬遠され,社会的背景からも PSL の早期減量が望ましく,血漿交換療法を施行した後,リツキシマブの投与を行った。その結果,抗 BP180 抗体価は低下し,皮疹も改善を認め,PSL を早期に減量し自宅退院が可能となった。BP は高齢者に好発し,ステロイド全身投与の副作用や,独居・認知症といった社会的問題に悩むケースは多い。リツキシマブは現在 BP には保険適用ではないものの,前述の社会的問題や薬剤制限がある症例や難治例には有効な可能性があり,今後も使用を検討すべきと考えた。 (皮膚の科学,22 : 286-291, 2023)

  • 宮脇 佳代 , 中嶋 千紗 , 臼居 駿也, 小澤 健太郎, 調 裕次 , 大塚 篤司
    2023 年 22 巻 4 号 p. 292-297
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    80歳,男性。X-3年,両下肢・足底に有痛性色素斑が出現し,X-2年に他院にて両下肢古典型Kaposi 肉腫と診断された。初診の 7 日前から前医にて右下肢蜂窩織炎に対し抗生剤内服で加療されていたが,症状の改善に乏しく X Y 月当院紹介となった。また両下肢古典型 Kaposi 肉腫についても当院での精査加療を患者が希望した。初診時,蜂窩織炎の所見に加えて両側下腿に一部浸潤を触れる灰褐色斑,足底に暗赤色斑を認めた。病理組織学的検査では,真皮内に好塩基性の腫瘍細胞が結節状に増殖し,周囲に脈管の増生を伴っていた。免疫組織学的に腫瘍細胞は HHV-8 陽性であった。 HIV 感染や免疫抑制剤の使用歴はなく古典型 Kaposi 肉腫と診断した。古典型 Kaposi 肉腫の治療方法に放射線治療やイミキモド外用,化学療法など様々なものが存在するが,明確なガイドライン等はない。古典型 Kaposi 肉腫は緩徐に進行する点や患者背景を考慮し治療方法を選択する必要がある。 (皮膚の科学,22 : 292-297, 2023)

  • 綾部 詩音 , 竹上 智也 , 中島 有香 , 奥野 愛香, 趙 玲愛 , 工藤 比等志 , 山下 浩司 , 飯島 健太
    2023 年 22 巻 4 号 p. 298-302
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    施設入所中の85歳男性。意識障害で救急搬送され,挿管管理目的に ICU に入室した。ICU 入室後の診察で右下肢の淡い紅斑と熱感を認め,血液培養でグラム陽性球菌が検出された。そのため右下肢蜂窩織炎からの菌血症と診断した。また,意識障害に関しては敗血症性脳症または敗血症に起因した急性症候性発作と診断した。抗菌薬治療を開始後,菌種が Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisSDSE)と同定された。抗菌薬,抗けいれん剤が投与され,右下肢蜂窩織炎とそれに伴う意識障害とも改善した。SDSE による感染症は高齢化とともに増加傾向であり基礎疾患のある患者では重症化に注意が必要である。意識障害をきたす病態の一つとして敗血症などの感染症が知られている。頻度は低いと思われるが蜂窩織炎でも意識障害を生じることがある。重症でない蜂窩織炎でも意識障害の原因となりうることを,皮膚科医として認識する必要があると考える。 (皮膚の科学,22: 298-302, 2023)

  • 尼木 麻実 , 夏秋 優 , 金澤 伸雄
    2023 年 22 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    症例は糖尿病がある65歳の男性。初診の約 2 ヶ月前より四肢に瘙痒を伴う丘疹が出現し,改善しないため当科を紹介された。患者が自宅の寝室で採取して持参した虫がトコジラミと同定されたため,トコジラミ刺症と診断した。トコジラミの駆除を指示し,ステロイド外用を開始したが皮疹は改善せず,手指の皮疹からヒゼンダニが検出されたため,疥癬の合併が判明した。疥癬はフェノトリン外用で改善したが,瘙痒性丘疹が残存したため皮膚生検を実施したところ,病理組織学的に痂皮を付着した潰瘍,真皮の炎症細胞浸潤を認め,一部に膠原線維の経表皮性排泄像が見られたことから,後天性反応性穿孔性膠原線維症(Acquired reactive perforating collagenosis,以下,ARPC)と診断した。 殺虫剤を用いたトコジラミの徹底した駆除とステロイド外用にエキシマライト照射を併用することで,皮疹は改善した。症状出現の契機となったトコジラミ刺症はわが国において増加傾向にあり,被害拡大が続いている。原因不明の虫刺症を診察した場合は,トコジラミ刺症の可能性も念頭に置く必要がある。一方,ARPC の病態は未だ不明な点も多く,併存症による変化も合わさり複雑な病態を形成していると考えられる。自験例のような激しい瘙痒を伴う虫刺症は ARPC の誘発要因となる可能性があり,皮疹に対する治療はもちろんのこと,虫刺症への対策,患者指導も含めて治療を行うことが望ましいと考えられる。 (皮膚の科学,22 : 303-308, 2023)

  • ―乾癬において生物学的製剤使用中に KL-6 上昇を認めた場合の鑑別について―
    久野 彩 , 木村 優香 , 中野 純実 , 調 裕次
    2023 年 22 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    64歳女性。汎発性膿疱性乾癬に対してセクキヌマブ投与中,KL-6 が上昇し間質性肺炎を発症した。 セクキヌマブによる薬剤性間質性肺炎が疑われ,投与中止にて間質性肺炎は改善するも,その後皮疹が再燃しグセルクマブ導入となった。現在皮疹は改善し,KL-6 上昇や間質性肺炎の再発は認めていない。乾癬患者において生物学的製剤使用中に KL-6 の上昇を認めた場合,『偽陽性』,『感染症による間質性肺炎』,『乾癬に伴う間質性肺炎』,『生物学的製剤による薬剤性間質性肺炎』の鑑別が必要となる。KL-6 偽陽性例では,間質性肺炎の所見がなくても微小な肺胞障害の可能性を念頭に,定期的なフォローが必要となる。乾癬に伴う間質性肺炎では,製剤の増量により皮疹のみでなく肺炎も軽快することがあり,薬剤性間質性肺炎との鑑別が重要である。生物学的製剤による薬剤性間質性肺炎の診断がついた場合,製剤の中止が必要となるが,必ずしも異なるクラスの製剤へのスイッチでの安全性は示されていない。ただし,KL-6 は間質性肺炎以外に肺腺癌,乳癌,膵臓癌などの腺癌や,肺扁平上皮癌でも上昇することが知られており,悪性腫瘍合併例では注意が必要である。SP-D の測定,画像検査,乾癬の病勢の評価などからこれらの病態を鑑別し,製剤の投与継続の可否についての検討が重要となる。 (皮膚の科学,22 : 309-314, 2023)

  • 力武 里菜 , 加藤 威 , 後藤 春菜 , 浅田 春季, 平野 慎悟 , 山田 昌弘 , 小林 佳道 , 塚本 雄大, 國府 拓 , 山本 ...
    2023 年 22 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    多血小板血漿(platelet rich plasma,以下 PRP)療法とは,遠心分離で濃縮した血小板に含まれる増殖因子やサイトカインにより,組織再生や創傷治癒を促進する治療法である。PRP 療法は以前より歯科口腔外科や整形外科領域での骨再生医療や美容医療,抗加齢医療に使用されていたが,2020 年に多血小板血漿処置が再生医療手技として国内で初めて保険収載されたことにより,難治性皮膚潰瘍に対する治療の選択肢が広がった。当院で経験した静脈うっ滞性皮膚炎,全身性強皮症,血管炎を背景とした 5 例の難治性皮膚潰瘍に対して PRP 療法を施行した結果を報告する。 5 例中 4 例については潰瘍径の縮小または上皮化に至った。難治性の皮膚潰瘍であり急速に上皮化に至ることはなかったが,一定以上の効果は得られた。残りの 1 例に関しては,潰瘍の壊死組織のコントロール不良により 1 クールのみで終了した。PRP 療法は遠心分離機や血小板成分を分離する工程が必要ではあるが,手技内容としては簡便であり患者の負担も採血のみと少ない。PRP 療法は,外用治療のみで改善が乏しい難治性皮膚潰瘍に対して有効な治療法であると考える。 (皮膚の科学,22 : 315-321, 2023)

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