皮膚の科学
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症例
真皮に Langerhans 細胞のび慢性浸潤がみられた 1 例 : 皮膚型 Langerhans 細胞組織球症の初期病変か
堀口 裕治福本 隆也鬼頭 昭彦
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2020 年 19 巻 3 号 p. 169-173

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抄録

症例 :79歳,男性。数ヶ月前から躯幹,四肢中枢に瘙痒のある皮膚炎が生じ,近医で外用ステロイド剤による加療を受けていたが改善しない。初診時には背部と骨盤周囲部,下腹部に軽い色素沈着とごくわずかに盛り上がり軽い浸潤を触れる直径 3 センチメートルまでの長円型の新旧の紅斑が多発していた。腫瘍性の病変は認められなかった。生検標本では真皮上層に組織球様細胞をふくむ単核球のび慢性浸潤が見られた。巣状の細胞浸潤は見られなかった。免疫組織化学的染色では浸潤細胞の多くは CD1a 陽性細胞であり,真皮上層から中層にび慢性に分布し,CD3 陽性細胞はそのやや下に多く分布していた。CD20 陽性細胞と CD68 陽性細胞はごくわずかしか見られなかった。全身検索を行ったところ,画像検査的にリンパ節腫脹や他臓器の病変は認められず,血液検査でも所見はなかった。 T 細胞受容体の単クローン性の再構成も確認できなかった。ナローバンド UVB 照射療法を始めたところ, 3 ヶ月で皮疹は消退した。初診後 2 年が経過するが再燃の兆はない。Langerhans 細胞が幼小児の多臓器において腫瘍性に増殖する狭義の Langerhans 細胞組織球症ばかりでなく,新生児や小児の皮膚に限局して一過性に増殖する症例や,成人の皮膚にび慢性に浸潤,増殖する症例のあることが知られており,皮膚型 Langerhans 細胞組織球症と呼ばれる。本例はその初期病変と考えられた。 (皮膚の科学,19 : 169-173, 2020)

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© 2020 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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