皮膚の科学
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症例
有茎性を呈し多様な病理組織所見を伴った trichofolliculoma の 1例
林 秀樹南 祥一郎木村 勇人
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2022 年 21 巻 3 号 p. 231-234

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抄録

49歳,男性。当院受診の 7 年前に右下眼瞼に 2mm大程度の正常皮膚色の丘疹に気が付いた。その後掻破を繰り返し,さらにサイズの増大を認めたため当院を受診した。初診時,右下眼瞼部に 25× 20 mm 大の表面に潰瘍を伴う易出血性の赤色,一部暗赤色の結節を認め,基部は有茎性であった。 病理組織学的所見は,表面は潰瘍化し,真皮内に索状の腫瘍塊とその中に多数の角質嚢腫を認めた。 表皮から連続する明らかな一次毛包はみられなかったが,大きめの角質嚢腫内には軟毛の断片が多数含まれており,二次毛包の放射状の増生もみられた。これらの病理所見より trichofolliculoma と診断したが,一次毛包と思われる嚢腫の近くに好中球を主体とした炎症細胞浸潤があり,間質には著明な血管の増生や拡張,赤血球の漏出など多様な所見を伴っていた。有茎性の本症の報告は非常に稀であるが,患者が腫瘍を頻繁に触っていたため基部が有茎性となり,さらに捻転したため静脈のうっ滞をおこし,細菌感染の併発により増大し,このような所見を呈したものと推察した。 (皮膚の科学,21 : 231-234, 2022)

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© 2022 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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