皮膚の科学
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症例
Pachydermodactyly の 1 例
西村 和敏中嶋 千紗大塚 篤司
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2024 年 23 巻 3 号 p. 211-216

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抄録

42歳,男性。学童期より両手背の近位指節間(以下 PIP)関節部に無症候性腫脹を自覚していたが,生活に支障がなく様子をみていた。当科初診の数年前より朝にこわばりを感じるようになった。 初診時,両手の第Ⅱ∼第Ⅳ指 PIP 関節部の側面皮膚に腫脹,鱗屑を認めたが,疼痛や関節可動域の制限は見られなかった。レントゲン検査では,軟部組織の腫脹を呈していたが,骨病変は認めなかった。血液検査所見では抗核抗体,リウマトイド因子,その他各種自己抗体は陰性であった。腫脹部皮膚からの病理組織では表皮肥厚,過角化を認めた。以上より pachydermodactyly と診断した。 Pachydermodactyly は皮膚生検や MRI は診断に必須ではなく,臨床診断が可能であるとされている。なお,過去の報告例では機械的刺激との関連性が指摘されているが,自験例においては発症時に特異な習癖は認めなかった。また,朝のこわばりの訴えを認めないことが特徴とされているが,問診では朝のこわばりを確認した。本症例のように炎症性関節疾患との鑑別に難渋する場合もある。 Pachydermodactyly は良性疾患であり,広く認知されることで,不必要な検査や治療を避けることが期待される。 (皮膚の科学,23 : 211-216, 2024)

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© 2024 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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