2025 年 24 巻 2 号 p. 168-174
61歳男性。12年前から左第1趾に黒色斑を自覚していた。徐々に増大し,中央部に結節を認めるようになった。ダーモスコピーにて皮丘優位パターンがみられ,生検により肢端黒色腫と診断した。患趾温存のうえ全摘出し,後日植皮術を施行した。Stage IIB(pT4aN0M0)と判断し,術後補助療法としてペムブロリズマブ1回 200 mg,3週間間隔で投与を開始した。2クール目投与後に両下腿に痒みを自覚し,その後も継続していた。6クール目投与時には体幹四肢に不整形の紫紅色丘疹が多発し,下腿や足部では融合して,局面を呈していた。ダーモスコピーでは粗大な分枝状白色線条構造がみられた。皮膚生検では表皮は不規則に肥厚し,表皮突起は鋸歯状に延長していた。顆粒層は肥厚し,シバット小体が散在し,基底層の液状変性がみられた。真皮浅層に帯状の稠密な炎症細胞浸潤を認めた。扁平苔癬と診断し,副腎皮質ステロイド剤内服にて治癒した。結果として,ペムブロリズマブによる18クールの術後補助療法は完遂できた。自験例では被疑薬であるアムロジピンを中止することなく皮疹が改善したことから,ペムブロリズマブそのものによる薬疹と考えた。ペムブロリズマブによる扁平苔癬の出現の意義は明らかではないが,適切な irAE マネジメントにより原疾患の治療を継続させることの重要性が認識された。(皮膚の科学,24 : 168-174, 2025)