皮膚の科学
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症例
当院で経験したマムシ咬傷26例の検討
力武 里菜永田 卓也古田 未征
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キーワード: 抗毒素血清, マムシ咬傷, CK
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2025 年 24 巻 2 号 p. 187-191

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抄録

当院で約10年間に経験したマムシ咬傷26例の臨床症状などに関して検討した。抗毒素血清を投与した症例は8例,投与しなかった症例は18例であった。マムシ咬傷では,症状が重症であるほど CK 値の増加速度が速くなると考えられているが,自験例で早期に抗毒素血清を投与した症例では著明な CK 値の上昇はみられず,抗毒素血清投与により毒素の拡散を抑えられることが示唆された。また,抗毒素血清を投与しなかった症例の一部で複視等の眼症状が出現し,CK 値の著明な上昇がみられたが,集中治療を要する臓器障害が生じた症例はなかった。しかし,入院後に腫脹が悪化した症例が多く,アレルギーの症状出現に注意しつつ,早期の抗毒素血清の投与を積極的に検討してもよかったと考える。マムシ咬傷の治療法については多くの議論が交わされているが,いまだに確立された方法が定まっていない。初診時の臨床所見や検査データのみで重症度を予測することはしばしば困難であるが,自験例において,受傷から1時間程度グレードⅠのままであれば重症化しない傾向があり,重症度予測の指標の一つになり得ると考えた。一般的にグレードⅢ以上で抗毒素血清の投与が推奨されているが,アナフィラキシー等の副作用が懸念されており,抗毒素血清投与を行うべきかどうかは各症例の経過を慎重に観察しながら総合的に判断する必要があると考える。(皮膚の科学,24 : 187-191, 2025)

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© 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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