皮膚の科学
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症例
巨大な腫瘤を形成したBowen癌の1例
大江 秀一為政 大幾河本 慶子大貫 雅子堀尾 修幾井 宣行堀尾 武
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2004 年 3 巻 6 号 p. 572-575

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抄録
症例は65歳,男性。初診の14年前より,右鼡径部に痒みを伴う鶏卵大の紅斑局面が出現し,約2年前より急速に増大してきた。初診時,右鼡径部から下腹部にかけて黒灰色調の痂皮を付着した15×14cm大の扁平隆起局面を認めた。また局面内には直径8cm大のドーム状紅色腫瘤を伴っていた。皮膚生検にてBowen癌およびエクリン汗器官癌が疑われたため,術前化学療法を施行した後,腫瘍切除術,遊離植皮術,右鼡径リンパ節郭清術を施行し,術後さらに化学療法を2クール行った。病理組織学的にはBowen癌であり,右鼡径リンパ節転移も認めた。以後,経過観察していたが,手術の約1年7ヵ月後より,右腰部,左胸部に紅褐色斑が出現し,さらにその後右腰部,背部にも直径2~5cmの褐色斑が出現した。局所麻酔下に切除したが,全ての皮疹が病理組織学的にBowen病であった。現在までのところ,内臓悪性腫瘍の合併は認めていない。本症例は巨大な腫瘤を呈し,その後もBowen病が多発するという,珍しい臨床経過をたどっている。
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© 2004 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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