皮膚
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Aromatic Retinoid による各種皮膚疾患への臨床効果
第一報先天性ならびに炎症性角化異常症と2-3の皮膚腫瘍に対する有効性の検討
松中 成浩石井 崇子島影 達也吉田 春美天野 雅弘岡崎 直樹桐 都志夫和田 真理
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1982 年 24 巻 2 号 p. 185-195

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抄録

我々は皮膚疾患の対症療法剤としてコルチコステロイドが導入されて以来の薬剤として期待されているammatic retinoidを有効とされている諸疾患計20例に投与し本薬剤の有効性の臨床的特長につき検討した. 視診上並びに組織学的に主訴とする角化性病変部が健常人の皮膚表面様となり, 少量内服による維持療法 (25mg/2-4日毎) 中の症例は非水疱型先天性魚鱗様紅皮症, Papillon-Lefèvre症候群, Darier氏病であり, 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症では四肢関節部や掌蹠の高度に猪皮様角化部で軽度に剥脱するのみで平滑な皮膚面とならなかった. これらの部位はDarier氏病の本剤によってもみられる難治部と同様, 表面が比較的乾燥し, 粗槌で角層の固着した局面状部である. 高度の尋常性魚鱗癬例も軽快せず, 集籏性座瘡にも無効であった. 先天性掌蹠角化症では急速に病巣の菲薄, 化が生じたが高度の口渇のため内服を中止した. 従来の治療に抗した汎発性乾癬例ではいずれも皮疹は急速に著明に扁平化し平滑となるが. 軽度に紅斑が持続するため他治療との併用が必要となった. しかし最近増加しつつある本症の治療に有力な薬剤になりうると思われる. 上皮性腫瘍については槌縮期にあるケラトアカントーマにその促進を, 口唇部原発の有棘細胞癌に2mg/kg/日の投与で顕著に褪縮をみた. しかし本剤で維持療法中であった非水疱型魚鱗癬様紅皮症患者では難治性潰瘍よりの有棘細胞癌の発症, 進展を防止しえなかった. ボーエン氏病様変化を伴う疵贅状表皮発育異常症では癜風様皮疹の軽度消褪を示したが中止により再燃し, 現在更に投与し経過を観察中である. 本剤による著効例では間歇少量投与による維持療法で臨床症状の改善維持が可能となっており, 3年に亘る長期例にも臨床検査成績に異常を来たしていない.

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© 日本皮膚科学会大阪地方会
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