自1975年 (昭和50年) 至1980年 (昭和55年) までに来院し, 貼付試験により原因植物を確認できた85例の植物接触皮膚炎の年度別頻度を原因植物別に比較検討すると共に, 貼付試験成績より主要な原因植物の抗原成分について論じた. 1) 年度別頻度, 原因植物-1975-1977年まではいちよう
Ginkgo biloba L. のぎんなん果肉 Ginkgo fruit pulp, うるし
Rhus verniciflua Stoks またははぜのき
Rhus succedanea L. による接触皮膚炎が, 第1位, 2位を占めた. 1975年には稀れな原因植物としていちじく
Ficus carica, よもぎ
Artemisia Princeps Princeps Pampan, キダチアロイ
Aloearborscens var.
natalensis, ほうれん草
Spinacia oleracea L. をあげることができる. 1977年にはかくれみの
Gilibertia trifida Makino による接触皮膚炎が出現し, 1978年には第1位を占めた. 1979年にはマンゴー Mangifera indica L. 果実の果肉またはにんにく
Allium sativum f.
Pekinense による接触皮膚炎が出現し, 1980年には突然桜草オブコニカ
Primula obconica による接触皮膚炎が第1位を占めるようになった. 稀有な原因植物としてつはぶき
Farfugium japonicum ketam があげられる. 6年間の植物接触皮膚炎を総計すると第1位ぎんなん果肉32例, 第2位うるし17例, 第3位はぜのき, 桜草オブコニカ各7例, 第4位マンゴー, 第5位にんにく4例である. 2) 原因植物の抗原成分-貼付試験より植物接触皮膚炎の多くはアレルギー性のものである. イ) ぎんなん果肉, ギンゴール酸 ginkgolic acid, ギンゴール ginkgol, ヒドロギンゴール hydmginkgol, ピロボール bilobol が抗原となるが, 未知の抗原の存在も否定できない. ロ) うるし, はぜのき4つの catechol 誘導体 hydrourushiol=3-n-pentadcylcatechol (PDC), monoene, diene, triene よりなるウルシオール urushiol が抗原であるが, urushiol中の hydrourushiol が主抗原の可能性は高いが, 断定はできない. ハ) かくれみの, マンゴー, かくれみの葉, 側枝およびマンゴー果実の外皮, 柄に urushoil dimer 類似物質の含有を認めるが, マンゴー果肉中には認めることができない. 果肉中の抗原については今後の研究によって解決されなければならない. ニ)
Primula obconica の抗原は primin であるが, それ以外の
Primula malacoides と共通する抗原の存在を考慮する必要があるだろう.
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