皮膚
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地黄を主成分とする漢方製剤-四物湯-の乾燥性皮膚疾患に対する皮膚保湿能への影響
高田 任康永井 寛大熊 一朝竹村 司
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キーワード: 四物湯, 乾燥性皮膚疾患
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1987 年 29 巻 4 号 p. 774-782

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抄録

(1) 乾燥性皮膚疾患に対して四物湯 (しもつとう) を服用せしめ, その時の水負荷試験を角層水分量測定装置を用いて経時的に測定した。
(2) 肩及び前腕の有効例では水分保持能が有意に上昇していた。
(3) 測定結果と臨床所見の経時的変化はおおむね一致し, ステロイド外用剤の使用量をへらすことができた。
乾燥性皮膚疾患では表皮が乾燥, 落屑し掻痒を伴う。これを掻破することにより湿疹化を起こし, 苔癬化病巣へと進行して湿疹化が更に進行する悪循環が認められる。このような状態の皮膚の表皮角層の保湿能は正常のそれと比較すると劣っていると想像される。この乾燥状態を改善する薬剤は今まで外用剤に頼っており, 内服剤での改善はほとんど知られていない。
我々の経験では四物湯を乾燥性皮膚疾患に使用すると乾燥した皮膚に潤いが生じ, 掻痒が減少し, ある程度湿疹化が抑制される場合が少なからずある。
今回, 我々が田上らが開発した表皮角層水分量測定装置を用いて四物湯服用前後の水負荷試験を正常人及び乾燥性皮膚疾患患者等に施行した。その結果, 臨床所見の改善された症例では四物湯服用後の吸水能及び水分保持能の改善が得られ, 臨床効果と皮膚の水負荷試験の成績とが極めて対応していた。

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© 日本皮膚科学会大阪地方会
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