抄録
29歳男性。1995年9月に手指の浮腫を主訴に三重大学皮膚科を受診した。職業上でエポキシ樹脂, シリカを使用していた。前腕から手指, 顔面の浮腫性硬化, 指尖潰瘍をみとめsystemic sclerosisと診断した。1年後急に頭痛, 高血圧が出現し入院した。高血圧, 腎機能悪化, 血漿レニン活性の上昇と心嚢水貯留を認め, scleroderma renal crisis (SRC) と診断した。腎生検では虚血性変化のみで小動脈のフィブリノイド壊死は認められず, SRCの早期の段階と考えられた。アンギオテンシン変換酵素阻害薬, プロスタグランディンE1の併用を行い奏功を得た。