本研究は,美術教育における「遊び」概念について探究する継続研究のうちの一報である。本稿では,美術教育の「遊び」概念における相の一つである〈芸術の拡張〉について,次の2つの基軸,(1)〈芸術概念の拡張〉の視点を持つ美術教育研究・実践者たちの活動内容,(2)ESD,STEAM,教科横断的な学びなどの包括的な学習の中での拡がり,を中心に考察した。「芸術概念の拡がりがもたらす柔軟な思考への誘い」は,現代美術に関心を持つ教師,作品づくりを超えて芸術の意味を子供に体験させたい教師,プロジェクト型の活動や総合的な学びと一体化させて学ぶことに意味を見出す教師などによって支えられてきた。一定の成果があったと言えるが,「遊び」概念のもう一つの相である「主体的な活動を生み出す内発的な動機づけ」との融合が課題である。それは,ときには,遊離してしまう事例も見受けられるからである。