埼玉県立自然の博物館研究報告
Online ISSN : 2433-8508
Print ISSN : 1881-8528
原著論文
埼玉県におけるミズスマシ(コウチュウ目,ミズスマシ科)の衰退要因と山梨県における分布状況
岩田 泰幸冨樫 和孝岩田 朋文
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2020 年 14 巻 p. 17-24

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抄録

ミズスマシGyrinus japonicusは,環境省版レッドデータブック2014では絶滅危惧II類に,埼玉県レッドデータブック動物編2018(第4版)では絶滅危惧IA類に,2018山梨県レッドデータブックでは準絶滅危惧にそれぞれ選定されており,近年急激に減少している.本種について,埼玉県と山梨県の低山帯から山地帯で調査を行った.今回の調査により,ミズスマシの生息環境は以下の特徴を有することが明らかになった:1)河川の滞留域に形成されたD型およびR型の淵を主な生息地とすること,2)淵は主に周囲を樹林に囲まれた場所にあること,3)淵の水面は枝や水草でほとんど覆われないこと,4)水質は透明度が高く,貧栄養であること,5)同所では流水域に生息する種(例えば,オナガミズスマシOrectochilus regimbarti,モンキマメゲンゴロウPlatambus pictipennis,マルガムシHydrocassis lacustris,シマアメンボMetrocoris histrio),あるいは林に囲まれたような日当たりのよくない水域に生息する種(例えば,コセアカアメンボGerris gracilicornis,ヤスマツアメンボG. insularis,オオアメンボAquarius elongatus)がみられること.また,埼玉県のミズスマシの地域個体群は,2000~2010年頃には低山帯にある前述の特徴をもつ河川の淵などに孤立していたことが示唆された.これらの個体群は水量の減少といった河川環境の変化により絶滅したと考えられる.

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