問題解決型の知識生産が普及しない理由の一つは,成果を評価する基準が,ディシプリンの内的論理で展開する従来の知識生産と異なることである.短期で終了する問題解決型のプロジェクトでは,問題解決に最善であっても,ディシプリンで評価されにくい知識生産を行うことは,研究者のキャリア形成の上で不利になる.また問題解決の評価基準は,学術的な評価基準より多元的であり,研究者にとっての評価リスクを生む.問題解決型の知識生産を促進するためには,研究者にとっての評価リスクとキャリア形成リスクを低減させる必要がある.そのためには,問題解決型の知識生産が評価される仕組みと,関連したテーマで問題解決のプロジェクトを継続させて,研究者のキャリア・パスを作る必要がある.