本研究は,政策形成プロセスの初期段階において公衆に開かれた課題発見を実現する支援システムの開発を,沿岸域の利用や環境保全をテーマに実施した.沿岸域の政策形成の現場では,不特定多数の一般市民によるアジェンダセッティングが不足していると考えられる.そこで,都市計画で用いられている「まちあるき」手法をベースに,情報収集ツールとして携帯電話を活用したICTシステムを統合した「うみあるき」手法を検討した.実証実験の結果,参加者の集団行動を前提としたワークショップ形式の市民参加ではICTシステム導入の効果は限られたものであるが,広域の沿岸域を対象に不特定多数の一般市民の問題意識を拾いだす上で,ICTシステムが効果を発揮する可能性が把握された.