抄録
症例は46歳, 男性. 16歳時に遺伝性若年性近位性脊髄性筋萎縮症 (Kugelberg-Welander病) を発症し, 入院時は四肢挙上不能の状態であった. 2003年2月に夜間に咳嗽が出現. 当院における胸部X線写真にて右気胸と診断され入院となった. 保存的治療を試みるも治癒せず, 3月に全身麻酔下に胸腔鏡補助下小開胸併用にて肺部分切除を施行した. 筋弛緩には臭化ベクロニウムを用いたが, 術直後の回復は軽度遅延した. また術後3日目には喀痰排出障害が出現したため気管支鏡下吸痰を行った. その後の経過は順調で術後15日目に退院した. Kugelberg-Welander病は脊髄性の筋萎縮をきたすが, 本症例では肋間筋の術中生検により筋原性萎縮の混在を認めた. Kugelberg-Welander病を合併した呼吸器外科手術では, 筋弛緩剤の減量, 手術時の呼吸筋温存, 及び術後呼吸管理に十分に注意すべきと考えられる.