素粒子論研究
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有限密度におけるSU(2)格子QCDの研究(熱場の量子論とその応用,研究会報告)
室谷 心中村 純野中 千穂
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2001 年 103 巻 1 号 p. A67-A72

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抄録

ウィルソンフェルミオンを用いて有限密度のSU(2)格子QCDの構造を調べるプロジェクトについて報告する.我々は特に,メトロポリス法のなかのリンク変数(ゲージ場)を更新する部分で,フェルミオンの行列式の比を厳密に求めるアルゴリズムを採用し,有限な化学ポテンシャルでのバリオン数密度やポリヤコフ線,そして擬スカラー及びベクターメソンの質量を4^4と4^3×8の格子上で求めた.最終結果ではないが,擬スカラーメソンは化学ポテンシャルμが格子間隔単位で0.4程度になると有限な質量を持つという結果が得られた.これはカイラル対称性が回復していることを強く示唆する.また我々のシミュレーションでは,相転移点に近付くと数値的に不安定になり,計算が途中で止まってしまうことが多かった.そこで我々は,この数値計算上の不安定性を調べるために,フェルミオンの行列式の振る舞いと行列式の固有値の分布の解析を行った.その結果,相転移付近ではフェルミオンの固有値の分布に「Shell-and-Bean」構造が見られることが判った.

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© 2001 著者
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