2001 年 103 巻 1 号 p. A130-A135
異方カイラル凝縮体(disoriented chiral condensate)の一種の動的発現形態として、量子メソン場の集団運動としてカイラル凝縮体がアイソスピン空間で回転している状況を考え、その集団回転の減衰のメカニズム、減衰時間、放出パイオン数を、O(4)線形シグマ模型を用いて考察する。陽にカイラル対称性を破る項は量子メソン場に対し周期的なソース項としての役割を果たし、その結果、線形応答の理論を援用することで、アイソスピン集団回転は衝突無しの散逸によりそのエネルギーを失っていくことが示される。このとき失われていくエネルギーはパイオン励起に費やされ、アイソスピン回転のエネルギー密度が、ε_0≈(160MeV)^4であるとき、減衰時間としてτ≈40fm/cが得られる。