2004 年 108 巻 6 号 p. F86-F89
2003年2月、宇宙背景放射観測衛星WMAPの1年目のデータがリリースされた。1992年のCOBEによる温度ゆらぎの発見以降、宇宙背景放射に対する注目はますます高くなり、様々な地上実験が続々行われて来た。今回のWMAPでは、COBEより30倍も解像度が高い全天マップが得られ、温度ゆらぎの非等方性に関する解析から、過去から現在に至る宇宙の進化の様子が浮かび上がって来た。本稿では、宇宙背景放射に関するこれまでの経緯を踏まえ、WMAPの主要な成果と宇宙論に与えたインパクトについて概説する。