素粒子論研究
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7 Lepton過程におけるParityの保存(IV)
関根 克彦
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1958 年 16 巻 5 号 p. 487-500

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抄録

今まで三回にわたって展開して来た理論のしめくくりをつける。(1)では、理論のエッセンスだけを、幾分axiomaticなやりかたで叙述してみた。従って、(1)に書いたことは、Pauli ringの非エルミト表示の問題をのぞけば、特に内容的に新しいことはない。しかし、以前の証明で不完全なところを補い、また全体として見とおしをよくしてある。(2)では、(III)において途中までしか論じなかったVA相互作用の場合について、もっとくわしく検討を行った。われわれの理論は、たとえばGT型の核の場合、C_T〜C_T'ならばC_A〜+C_A'という結果をみちびき、これはLee、Yangの二成分理論とは異った結論である。(3)では、われわれの理論のinterpretationについて論じた。われわれの理論は、一口で云えば、これをパリティ欠損の理論として特徴づけることができる。parity非保存は保存則の否定を意味するが、parity欠損は逆に保存則を前提し、その新しい意味づけと再確認を意味する。質量欠損とのanalogy、およびそのunalogyでは理解できない新しい"理論"について説明する。後者は、parityが本質的に量子力学的な量であることにもとづく。(4)では、具体的な計算をfollowすることにより、このparity欠損の現象形態として角分布のasymmetryやpolarizationがみちびかれる事情を明らかにする。最後に(5)において、この理論の"難点"にふれ、概念の困難(矛盾)の分析をとおして新しい研究の方向を示す。

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© 1958 著者
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