抄録
障害のある人が、研修と称して政治や経済、文化の違いがある外国へ行くことで何かを学び得ることは可能なのだろうか。本稿では、障害の差異や共通性のもと何が起こり、人は何を得て何を与えることができるのかという問いをたて、ひとりの研修経験者を取り上げた。その結果、研修前から自立生活運動への関りはないまま研修地へ赴いたが、具体的な制度や仕組みを学び自らの将来像を見出し肯定的な影響を受けたことが分かった。したがって、障害という紐帯は制度などのもたらす差よりも強いとも思われた。しかしながら、研修前後の自立生活運動の関りの有無によって何かが異なるのか、研修先で得られたものは、日本の運動・政策にどのように影響したのか、また、肯定的なものだけなのか。海外という場所や人との出会いによって得るものがあるのであれば、複数の人に調査をおこない確かめるという課題も明らかとなった。