遡航
Online ISSN : 2758-1993
戦後から 1970 年代までの病床数から検討する国公立病床の担う役割の変容
権藤 眞由美
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2022 年 2022 巻 1 号 p. 24-47

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抄録
本稿の目的は、戦後から高度経済成長が終焉を迎える1970年代までを対象として、国公立病院が持つ病床数の推移から、国公立病床が担ってきた役割の変遷を明らかにすることである。そのために、『医制八十年史』(厚生省医務局)や『医療施設調査』(厚生省)を用いて、病床数などのデータ収集を行なった。また、政府発言や各種文献などから、国が国公立病床にどのような役割を期待したのか、また実際にその期待が病床数の増減として現れ、国公立病床がどのような役割を担ったと考えられるのか示す。  本稿で分かったことは、次の通りである。終戦直後の1940年代は国公立病床は主要な医療の担い手であり、日本人の死因1位であった結核の病床を担う役割であった。しかし、GHQおよび日本政府の方針により、私立病床を整備する方向性が示されるだけでなく、疾病構造の変化により結核患者が減少することで、結核病床だけでなく、他疾病の病床も担う役割が求められるようになった。その時期に、重症心身障害児などの病床が親の会から求められるだけでなく、社会的にも関心が高まったことを受けて、重症心身障害児などを含めた、長期療養が必要となる特殊疾病患者の病床も担う役割へ変化した。
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© 2022 本論文著者
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